モンスター誕生(プレイ日記)


【第26回】 ザラダン・マーとの対面

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 … 11/11
 体力点 … 17/19
 運点 …… 8/10
 メモ …… ザラダン・マーの門に着いたら93を引いた番号へ、エルフの粉を全身に浴びてしまった、青い茎のスカル藻はディードル川の南のカエル沼にしか生えない
 所持品 … 革切れペンダント、水晶の棍棒(333)、29番兵への手紙、銀の指輪(『ダラマスにつかみかかる』ときに50を加えた番号へ)、金貨2枚、ロープ、青い茎の草(49)、幸運の薬(運点原点まで回復する)、《真実の指輪(ダーガの話を聞いたら50を引いた番号へ)》

〔422〜〕
 鏡は金の枠にはまっており、精巧な細工が施されていた。しかし、何の変哲もない全身鏡にしか見えない。叩き割ってみることも考えたが、あまり大きな音を立てると乗組員達に見つかってしまうだろう。
 そのとき、おれの脳裡に何かが閃いた。この鏡、ただの鏡ではなさそうだ。そう言えば、地下迷宮でロックデーモンの幻影に出遭ったあの部屋にあった紙……。ザラダン・マーを探し求める者は、己の姿を見出すとか何とか書いてあったな。もしかすると、これがザラダンの世界に通じる門ではないだろうか。おれは、鏡をじっと見つめていた。鏡に映っているおれの姿ではなく、その奥を。この場面における管理人お薦めのBGMは、映画ブレードランナー(Blade Runner)のエンドタイトル(End Titles)、またはスプラッターハウスのミラーリック(ステージ4の鏡の間のBGM)らしい。
 しばらくすると、おれの不安は確信に変わった。おれの姿が揺らめいて消え、別の人影がゆっくりと形作られていく。ザラダン・マーが、己の聖域とした謎めいた地獄からやって来ようとしている! ぼんやりとした曇りが晴れると、鏡の中にどこかの書斎が映っていた。机に向かって座っているのはザラダン・マーその人だ。机の上には何冊もの書物、謎めいた工芸品や悪魔を象(かたど)った像が置かれている。このゲームブックのカバーイラストがその光景だ。ザラダンは目を閉じ、眠っているかのように身動き一つしない。おれの背筋に戦慄が走る。おれの心臓は早鐘を打ち、じっとこの妖術師を見つめざるを得なかった。ザラダンの全身から不思議な力、あるいは純粋な悍(おぞ)ましさが感じ取れたのだ。
 ザラダンが目をかっと見開いた! その燃えるように爛々と輝く瞳に見据えられ、おれの背中に戦慄が走った。これまで戦って道を開いてきたおれだが、ザラダンにだけは戦いを仕掛けたくないように思えた。
「ふむ!」
 ザラダンが重々しく口を開いた。鋭い犬歯が見える。声の恐ろしい響き。
「鮭が生まれた川を遡るように、我が創造物が見えない力に操られて故郷に戻ってきたのだな! おまえはよくやった」
 よくやった? おれにはわけが分からんぞ。
「おまえが、ここ、ガレーキープまでたどり着いたのは、決して偶然ではない。おまえは私のマランハの最高作品だ。我が実験は完璧な成功を収めた。おまえはただ強いだけではなく、それに見合うだけの知性をも兼ね備えておる。おまえは全ての試練を乗り越え、“煙”とともに私のもとに戻ってきたのだ」
 ザラダンは全てが予定通りであるかのような口調だった。その声は優しく、父親が息子に対するような情愛が籠っていた……って、こんな奴が父親なんて、おれは嫌だ。そんなおれにお構いなしに、ザラダンは話を続けた。
「その逞しい身体を与えられる前、おまえには慈悲など施されるべくもなかった。おまえのせいで私の部下が何十人も倒されてはな。だが、私は優しくも、ただ殺される代わりに、二つの選択を与えてやった。おまえは私の捕虜だった。私の部下として働くか、さもなくばマランハの実験材料になるかと尋ねると、おまえはマランハの実験材料になる方を選んだ。私はおまえに敬意を表して、全霊を傾けてマランハを行った」
 オエーーーッ。「自分は優しい」なんて言っている奴に碌な奴はいないぞ。ジパングの年号をまたいで幼女を四人も殺した元死刑囚みたいなことを言いやがって。こんな奴は信用できない。だが、おれはそれ以上にザラダンの言葉に呆然としていた。以前ザラダンに会ったことがあるだと? それに、なぜザラダンがおれに“敬意”を抱いたのだろうか? ザラダンは話し続けた。
「私は長期に渡ってマランハの実験を繰り返していた。最初は小さな動物でしかうまくいかなかった。野鼠をジブジブに、家鼠をグラニットに、といったものだ。高等生物での実験は、おまえとおまえの部下が最初の成功例だ。人間をおまえのように強いモンスターに変える実験は、それまでは悉く失敗していた。」
 人間? では、おれはもともと人間だったのだ! しかし、おれの部下とは何者だろう?
「実験を生き延びた者は、綿密に調べたうえでコーブンの地下の研究所に送り込んだ。能力と生命力を調べるためだ。おまえとおまえの乗組員の場合も同じことだった。」
 乗組員? 部下! もやもやと霧に閉ざされていた記憶が、ザラダンの言葉をきっかけとして急速に蘇ってきた。おれは部屋を見回した。机、ベッド、衣裳ダンス、そういったものに急に親しみが感じられた。ザラダンがにやりと笑った。
「その部屋を思い出したかな? 埃もかかっているし、少しばかり散らかっているが、全く手は加えていないぞ。」
 そう、確かにおれが去ったときのままだ!
「残念だが、おまえの部下達はおまえほど幸運ではなかったぞ。おまえは親友のリジーを憶えているか? 彼はオークになって、盲目の愚かなハニカスを守っていたはずだ。給仕長のバーゴンの味はどうだった? あの太った男はホビットにしてやった。魔術師や剣士と一緒にいたホビットだよ。おまえが即死させた奴だ。」
 記憶はほぼ完全に戻っていた。しかし、同時に私は困惑もしていた。この部屋は私の部屋なのだ!

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 … 11/11
 体力点 … 17/19
 運点 …… 8/10
 メモ …… ザラダン・マーの門に着いたら93を引いた番号へ、エルフの粉を全身に浴びてしまった、青い茎のスカル藻はディードル川の南のカエル沼にしか生えない
 所持品 … 革切れペンダント、水晶の棍棒(333)、29番兵への手紙、銀の指輪(『ダラマスにつかみかかる』ときに50を加えた番号へ)、金貨2枚、ロープ、青い茎の草(49)、幸運の薬(運点原点まで回復する)、《真実の指輪(ダーガの話を聞いたら50を引いた番号へ)》
 (Save Number:121→199)

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2022/11/26


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