ナイトメア キャッスル(プレイ日記)


【第20回】 不死身のザカーズ

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 ……… 10(+2)/10 (スカルロスの三叉槍を使う場合のみ)
 体力点 ……… 25/25
 運点 ………… 12/12
 意志力点 …… 11/12
 金貨(枚) …… 4
 食糧(食) …… 3
 所持品 ……… ザック、剣、トールダー男爵から寄贈された指輪スカルロスの三叉槍緑色の球体、ロースの護符
 備考 ………… スカルロスの三叉槍で人間以外の敵に与えるダメージは4点

〔279〜〕
 扉をくぐった途端、血と腐敗しかけた肉の異臭が私の鼻をうった。酸鼻を極める殺戮現場にむかつきを覚えずにはいられなかった。壁をそろそろと這いまわる発光性の軟体動物が持つ赤くぎらぎらした小突起が洞窟のような部屋を照らし出していた。恐らく、さっきスカルロスの名を騙っていたぶよぶよの同類なのだろう。ありとあらゆるところに死体や体の一部分が山と積まれていた。半ば手足を寸断された怪物が蠢いている。他の怪物たちはもはや原形を留めないというばかりではなく、およそこの世に存在することすら許されぬ忌まわしい代物だった。ザラダン・マーのマランハによって生まれた実験生物に負けず劣らずの存在ばかりだ。あまりの凄惨さに、私は立ちすくんだ。
 と、先程聞いた甲高い忍び笑いが私の耳を嬲(なぶ)った。この癇に障る声の正体を突き止めようと、辺りを見回す。
「よくぞここまで来た!」
 私は声の方を振り向いた。



「今でこそ惨めな蟻の巣の支配者ではあるが、やがてこのクール大陸を支配下におくことになる、不死身にして無敵のザカーズのもとにお前はたどり着いたのだ。わしのちょっとした作業場はお気に召したかな。さあ、遠慮せずにこっちへ来るがいい。お前はたいそう元気いっぱいの標本のようだから、いつでもわしの予備の手になってくれることだろう……」
 声は気違いじみた含み笑いとなって消えた。それはどうやら巨大な手足の塊のぴくぴく動いている一部分から聞こえてくるようだった。それにしても、何という大きさなのだろう。さっきの光り輝く戦士よりも更に頭2つ分くらいは大きい。私が6フィート、光り輝く戦士が8フィート、そしてこのザカーズが10フィートといったところか。そんなことを考えながら、私はそびえたつつぎはぎだらけの体に近づいた。
「わしは永劫に渡って眠り続けてきたが、何一つ忘れてはおらぬ。わしを閉じ込めおった者達の子孫は生かしてなどおくものか。奴らがひれ伏して命乞いをしようものならその場で即刻殺してやる。」
 その気持ちは分からないでもないぞ。積年の恨みとはそういうものだ。
「奴らはさぞかしわしの役に立ってくれるだろうて。何と言ってもわしの軍隊を造り出すための貴重な原料だからな。お前もわしの作品のいくつかを見ただろう。素晴らしい出来映えだと思わんかね。」
 ああ、塔の入口にいた“かたつむり”とか、スカルロスの名を騙っていたぶよぶよとかね。外見的にはお世辞にも素晴らしいとは言えないが、相手を怯ませるという点では及第点かも(敢えて上から目線の物言いをする)。
何度も実験を重ねることこそが成功への道さ!
 この男(?)、何という素晴らしいことを言うのだろう。私は「なるほど」という感動と共感を覚えずにはいられなかった。
「ああ、その通りだよ、ザカーズとやら。ジパングにも『失敗は成功のもと』とか『失敗は成功の母』という諺があるしね。」
 ザカーズは私の反応に喜びを隠し切れないでいた。
「そうか、賛同してくれるのか。それでこそわしも復活した甲斐があったというものだ。愛弟子セニャカーズの手で復活して以来、わし自身もこうして改良に改良を重ねてきたというわけだ。お前をわしの手足にするのはやめた。お前の祖国ジパングでは『ボスの片腕』とかいう表現があるそうじゃが、これはひどい言い回しじゃな。それじゃあ一生ボスの片腕程度の働きしかできんということじゃぞ。それに、そのボスが片腕を切り落としたらその片腕は死ぬってことだからのう。お前がわしの片腕を越える働きをすることは間違いない。お前には是非わしの相棒になってもらいたい!」
 私はザカーズの頭と思しき箇所を見つけ出した。声の発生源がそこからだったから頭と推測したわけだが、それとも、あれは頭ではないのだろうか……。ザカーズは私に向かって頷いていた。
「そう言えば、セニャカーズはどこにおるのじゃ? 現状ではセニャカーズの鏡を通らないとここへは来られないはずじゃが……」
 ザカーズの腹部にある“目”は、スカルロスの三叉槍に付着した深紅のローブの切れ端を見逃さなかった。
「それはセニャカーズの胸部……さては、貴様、セニャカーズを殺したな!」
 そんなことまで分かるのか。ザカーズ自身の“品種改良”は単なる口先だけではなかった。愛弟子を殺された師の目から涙がこぼれていた。
「貴様はわしの相棒にするつもりじゃった。だが、愛弟子セニャカーズを殺したとあらば致し方あるまい。残念じゃが貴様を殺さなくては、セニャカーズの墓前に顔向けはできぬ。セニャカーズの仇、思い知れええええぇぇぇ……!」
 そう言ってザカーズはあふれる涙もそのままに、何十本もの足を操りながら私に突進してきた。ザカーズは残虐非道であるとともに弟子思いでもあったのだ。その瞬間、ロースの護符がひとりでに光り、私に勇気を与えた。この場合のみにおいて意志力点+2のボーナスが得られる(管理人注:スカルロスの三叉槍による技術点のボーナスと同様、このボーナスも原意志力点を超えてもよいものとします)。さあ、ここで意志力だめしだ。ロースの護符の加護により、意志力点が一時的に13点になっているので自動的にと出ます(意志力点−1)。
 個人的には、ザカーズの容姿はあまり怖くはなかった。むしろ、蜘蛛の大群や布切れにいた“かたつむり”や苦い液体の正体の方が怖かった。本当に心が折れそうになったのだ。尤も、何度も不気味な敵を見ているうちに慣れてしまったというのもあるかもしれないが。
 さて、巨大な敵はそれだけ機敏さが損なわれやすいことも事実だ。ザカーズもその例外ではなく、今の私はザカーズよりも機敏に動くことができる。一方、今のザカーズには愛弟子の仇討ちのことしか頭にないらしく、戦いは不可避に思える。ここで天の声がした。――ロースの護符と緑色の球体を使いなさい――
 ロースの護符の強烈な光で緑色の球体を輝かせ、その放出する熱でザカーズに多大な打撃を与えられないものかと考えた。そのためには、ザカーズの巨体のどこかに緑色の球体を落とす必要がある。標的が大きいので大まかな狙いで大丈夫だ。まず、私は胸元からロースの護符を取り出し、突進してくるザカーズにザカーズに向けた。ザカーズは護符の光に一瞬怯んだが、すぐさま気を取り直して再びこちらに向かってきた。次に、ザックから緑色の球体を取り出し、球体をザカーズへ投げつける。空中を飛びながら早くも球体は護符の眩い光を吸い取り、正視することさえ難しくなってきた。ここでDDを行い、技術点と比較する(但し、今回は私の投擲能力を問われるのでスカルロスの三叉槍によるボーナスは適用されません)。DD11>10(!)で、ここへ来て失敗してしまった! 緑色の球体は強烈な熱を発しながらザカーズの体に当たったが、十字型に組み合わせられた腕と触手に妨げられて作業場の床に落ちた。ここで運だめしを行う。原運点まで回復しているので、自動的にと出ます(運点−1)。球体は床に当たったが、幸いにも割れなかった。それは依然としてぎらぎら輝きながら猛烈な熱を発し続け、反対側にいる私にすら伝わってくるほどだった。この球体を手に入れたときよりも更に輝きを増していた。私を追うザカーズもこの球体の威力は知っているらしく、慌てて後ろに飛びのこうとしたが、その巨体では如何せん動きが鈍重であることは疑いようもなく、爆発からは充分過ぎるほど近い距離にいた。それは私にも言えることで、私もこの球体の爆発から完全に逃れられる距離とは言い難かった。
 ドッカーン!!!
 球体は緑色の光を発しながら耳を劈(つんざ)かんばかりの轟音をあげて大爆発を起こし、爆風によって私の体はテーブルを越えて作業場の外まで飛ばされた。体力点3を失う。
 漸くのことでよろよろと立ち上がった私がザカーズの作業場まで戻ると、目の前には見るも悍ましいザカーズの生き長らえた姿があった。巨大な身体の半分を吹き飛ばされながらもなお魔術師は残った手足や触手を蠢かせていた。ちぎれた肉塊をぶら下げ、血や脳漿をぽたぽたと滴らせながら、これまたよろよろと近づいて来る。その姿はむしろ爆発前の姿よりも恐ろしく見えた(さっきではなく今の方が意志力だめしにふさわしい程だ)。ザカーズは私など比べ物にならない程のダメージを受けていた。
「き〜さ〜ま〜〜、セニャカーズの仇、思い知れ〜〜……」
 ザカーズの執念は見習うところがあるぞ。そんなことを考えながら、最終決戦に備えた。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 ……… 10(+2)/10 (スカルロスの三叉槍を使う場合のみ)
 体力点 ……… 22/25
 運点 ………… 11/12
 意志力点 …… 10/12
 金貨(枚) …… 4
 食糧(食) …… 3
 所持品 ……… ザック、剣、トールダー男爵から寄贈された指輪スカルロスの三叉槍緑色の球体、ロースの護符
 備考 ………… スカルロスの三叉槍で人間以外の敵に与えるダメージは4点
 (Save Number:83→167)

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2023/12/15


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