モンスター誕生(プレイ日記)


【第15回】 ドリーの三姉妹の依頼

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 … 11/11
 体力点 … 18/19
 運点 …… 10/10
 メモ …… ザラダン・マーの門に着いたら93を引いた番号へ、エルフの粉を全身に浴びてしまった
 所持品 … 革切れペンダント、水晶の棍棒(333)、29番兵への手紙、銀の指輪(『ダラマスにつかみかかる』ときに50を加えた番号へ)、金貨2枚

〔442〜〕
 迷宮の外は夜になっていた。おれは思いっきり冷たい夜の空気を吸い込んだ。地下の黴臭いじめじめした空気とはまるで違った。ゆっくりと辺りを見回してみる。開けた空間は、おれにとって脅威だった。平らな土地の全体に、規則的に石が配置されている。石は横倒しになっているものもあれば、直立しているものもあった。左の方、平地の端に、とがった屋根の大きな建物がある。右手は森になっており、おれのいるところから一直線に道が通じている。頭上には巨大なボールが浮かんでいた。ボールは青白い光を発しているが、もうじき漂っている煙に隠されてしまうだろう。おれは、この新しい環境に圧倒されていた。その中で、並んでいる石と、建物と、森と、三つのものがおれの注意を惹いた。おれは、まず建物を調べることにした。
 並んでいる石の平地を左に進んで行く。最後の石を通り過ぎると、目の前に建物があった。おれはまだこの新しい環境に慣れていなかったので、ゆっくりと歩を進めた。建物の中から人の話し声が聞こえてくる。最初は空耳と思ったが、近づいていくうちにその内容までもはっきり聞き取れるようになった。
「いよいよ今夜じゃな、わしらロミーナ三姉妹にとってはな」
 嗄(しゃが)れ声で一人がしゃべると、もう一人が嬉しそうに答える。
「いひひ。いつ頃来るじゃろうな。」
 別の一人が叫び声をあげる。
「静かに! 近いぞ! 近いぞ! すぐそばにおる!」
 おれは静かに扉に近づき、一気に押し開けた。部屋の中から悲鳴が聞こえる。しかし、それは恐怖のものからではなく、興奮のあまりの悲鳴だった。
 そこにはぼろぼろの服を着た三人の老婆がいた。三人とも長い髪と無精ひげは真っ白で、皺だらけの手を揉み合わせていた。人間のようだが、それにしては小さすぎるような気もする。



「さあ、さあ、入っておいで。敵じゃあないよ。おまえさんが来るのを待っておったんじゃから。」
 こうしゃべった老婆は盲目だった。
「そう、そのとおりじゃ。」
 別の老婆が口をはさんだ。その口には歯が一本もなかった。
「わしらはドリーの三姉妹と呼ばれておる者じゃ。おまえさんの手助けをしてやろうと思うてな。」
 歯がない割にはきちんと発音するな。
 そして、三人目の老婆が一歩前に出て、まるで蛇のようにシューシューという声で話し始めた。
「スー、そうじゃ。わすらはおまえが何者で、なずここにおるかをすっておる。おまえはすらんじゃろうがな。おまえの道のりを手助けしゅるため、神がわすらをおつかわすになった。わすらの言葉は命令ではなく、助言じゃ。しゃいすーてきな決断はしゅべておまえが下しゃねばならない。」
 その言葉を聞いて、おれの心の中に何か響くものがあった。最終的な決断は全ておれが下さなくてはならないのか……。これまでのおれは、ただ自分の本能のままに生きてきただけだった。自分が何者なのか? どこから来たのか? なぜここにいるのか? 何をするべきなのか? どこへ行くのか? 生きる目的のなかったおれに何かを決めるだと? 何を決めるというのだ?
 おれの頭の中に色々な考えが飛び交う中、盲目の老婆は話を続けた。
「そうなのじゃ! おまえは、なぜ自分のようなモンスターに知恵が授けられたのか疑問に思いはせんかったか? 全ては天命なのじゃよ。」
 三人はひそひそぺちゃくちゃ話し始め、子供のようにくっくっ笑うので、誰が何を言っているのかさっぱり分からなくなった。
 やがて、話し合いが終わり、歯のない老婆がおれに話しかけてきた。
「じゃが、助言を与える前に、おまえに仕事をしてもらおう。スカル藻の根じゃよ。薬を作るのに必要でな。それを持ってくれば、おまえの運命に関わる話をしてやろう。期限は次の満月の夜じゃ。つい先日、442年ぶりの皆既月蝕と天王星蝕(惑星蝕)があったばかりじゃからのう。わしらも惑星蝕だけにわくわくしておるのじゃ。」
 何を言っているんだ、この婆さん?
「今夜はゆっくり眠って、明日元気になったらスカル藻を探すのじゃ。」
「スー。わすらのちすきをかりて、おまえがどう動くか、わすらはずっと見守っておるぞ。」
 蛇のような声の老婆がこう締めくくると、またも三人はぺちゃくちゃと話し合いを始めた。と、次の瞬間、三人の老婆はかき消すように消えてしまった! 先程までの話し声もぴたりとやみ、重苦しいほどの静寂が建物を包んでいた。
 おれは三人の言葉をじっくりと考えてみた。スカル藻とやらを探すべきだろうか? それとも、無視するべきだろうか? 確か、老婆達は、自分達の言葉は命令ではなく助言と言っていた。これまでのおれは“シゴト”というものをしたことがなかった。新しいことに挑戦するというのも悪くないな、と思う。よし、決めた! そのスカル藻とやらを探してみよう。だが、そのスカル藻というのはどこにあるんだ? そもそもスカル藻って何だ? そんなことを考えているうちに、おれはだんだん眠くなった。おれは建物の床に寝そべりながら、あれこれ思いを馳せた。 ――最終的な決断は全ておまえが下さねばならない―― この言葉に、おれ自身の中で何かが起こりつつあった。そう言えば、盲目のハニカスは今頃どうしているんだろう? ダラマスはもういないから、少しはましな暮らしになっているだろうが、果たして生きているのだろうか……
 ステンドグラスから射し込んでくる光が、おれを眠りから覚ました。これが朝というものか。地下迷宮にいたときは朝も何もなかった。太陽がこんなにも気持ちの良いものとは。近くのテーブルの上に、いつの間にか食事が用意されていた。あまりのいい匂いに、おれはたまらず一口食べてみる。うまい。おれは食事をガツガツと平らげ、満足した気持ちで朝の空気をいっぱいに吸い込んだ。体力点を、運点を加える。
 おれは建物を出た。とりあえずは歩き回ってみるか。地上には通路というものがないから、自由に行くことができる。東、西、南、北、どの道を行こうか? 太陽のあるにしよう。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 … 11/11
 体力点 … 19/19
 運点 …… 10/10
 メモ …… ザラダン・マーの門に着いたら93を引いた番号へ、エルフの粉を全身に浴びてしまった
 所持品 … 革切れペンダント、水晶の棍棒(333)、29番兵への手紙、銀の指輪(『ダラマスにつかみかかる』ときに50を加えた番号へ)、金貨2枚
 (Save Number:324→95)

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2022/11/10


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