フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第127回】ルーシ帝国との停戦

 あたし達はフョードルグラード城に入ることに成功した。城内を歩き回ってみると……。



 無理に都市っぽい言葉遣いをしなくてもいいと思うけれどね。あたしの出身地だってエルフの村里よ。
 しかし、こんな和やかな風景を見られたのはこの一帯だけだった。
 城の2階にて。



 お城の兵士達のあたし達に対する態度はお世辞にも歓迎しているようには思えなかった。でも、彼らはあたし達に無意味に襲いかからない分まだましだわ。



 この玉座に座っているのが、ルーシ皇帝第1皇子だった故ミハイル皇子の一人息子のアレクセイ皇子ね。それにしても、アレクと名前がかぶるわね。尤も、アレクの本名は長いから、あたしはアレクって呼んでいるんだけれど。
 アレクセイ皇子はあたし達の姿を見るなり血相を変えた。
「貴様らバイエルンが父上を殺したんだろうが! 配下の者達は、魔族のせいだと言っているが、嘘だ! 貴様がイグナート叔父上とレオニード叔父上を殺したのも聞いている。オレは騙されないぞ!」
 ちょっと待って、それは濡れ衣よ。確かにあたし達はイグナートとレオニードと戦ったわ。でも、それはあたし達から喧嘩を売ったのではなくて、向こうから襲いかかって来たからやむなく防戦したんじゃないの。これは正当防衛よ。それに、イグナートとレオニードを殺したのはあたし達じゃないわ。
「皇帝と父上と叔父上達の仇!」
 そう言うや否や、アレクセイは玉座から飛び上がり、アレクに飛びかかった。アレクはアレクセイの攻撃をいとも簡単に躱す。
「皇子、落ち着いてください。」
 しかし、アレクセイは聞く耳を持っていないようだった。
「貴様、使者の分際で皇族のオレに逆らうのか。」
 アレクはその言葉を聞いた瞬間、顔つきが厳しくなった。アレクセイの次の攻撃を躱し、今度は思い切り殴り飛ばした。アレクセイは2〜3メートルくらいは飛んだと思うわ。
 それを見ていた控えの兵士がアレクに歩み寄る。
「貴様、皇族のアレクセイ様になんてことを……グフッ!」
 アレクは無言の一撃で控えの兵士を黙らせた。
 アレクはアレクセイにつかつかと歩み寄る。そして、まだ王の間の床に倒れて呻いているアレクセイの髪をつかみ、引っ張り上げた。
「痛えよ、何をしやがる。皇族のオレにこんなことをしてただで済むと思うなよ。」
 アレクは鬼の形相でアレクセイを睨みつけた。
「思い上がんな、このクソガキ! 真実を知ろうともしない半端モンが偉そうに皇族なんて名乗ってんじゃねえ!!」
 そう言いながら、アレクセイの両頬を交互に殴り続けた。鼻血が出ようが、頬骨が折れようが、アレクはアレクセイを容赦なく殴り続けた。
「皇帝も、てめえの父上や叔父上達も、立派に殉職した。てめえの祖母上の受けた喪失感は計り知れないだろう。それに引きかえ、てめえは生まれが皇族というだけでいつも安全圏からしか攻撃しなかったんだろうが。そんな奴に皇族が務まるかよ!」
 世間知らずで苦労知らずの皇子の一言が引き金になって、これまでイグナートとレオニードを生け捕りにすることが叶わなかった苛立ちが一挙に出てしまったのでしょうね。以前、どこかどこかでもこんなことがあった気がするけれど、今回は以前の比じゃなかったわ。だって、これは完全な正当防衛ですもの。アレクセイから殴りかかってきたのだから、仕方がないわ。
「皇帝が我が国の公爵に『最近の小僧は挨拶がなっていない』と言っていたが、てめえこそ挨拶がなっていないだろうが。この祖父にしてこの孫ありだな、おい!」
 アレクの衝動的な怒りが収まったとき、アレクセイは完全に意識を失っていた。顔は倍以上に膨れ上がって、もはや原形を留めてはいなかった。でも、あたしはアレクがやり過ぎたとは思っていないわ。あたしのおじい様が死んだのは神に与したルーシ帝国にも責任があるからよ。あなたの痛みなんか、現場で戦っている人達に比べたら取るに足らないものだわ。
 あたしは気を失っているアレクセイに歩み寄り、癒しの歌スペシャルを顔にかけた。アレクセイの顔面の怪我は骨折や腫れも含め治った。アレクセイは意識を取り戻した。
 あたしは、まだ朦朧としているアレクセイに低めの声で脅しをかけた。
「アレクセイ皇子、あたしは今あなたに『葬送行進曲』の呪いをかけたわ。もし、ルーシ帝国がバイエルン王国に対し逆らったり裏切ったりするようなことがあれば、あたしのかけた『葬送行進曲』の呪いがあなたを蝕んで、確実に死に追いやるわ。逆らったかどうかを判断するのはあなたではなくあたしの呪いよ。あなたはあたし達に一生逆らえない。少しは他人の痛みというものを知りなさい。」
 勿論これはただの脅しよ。でも、このくらいしておかないと、またいつ無礼を働くか分かったものではないわ。表面上は皇族に対する態度を取ってあげるから安心なさい。今やルーシの後継者はアレクセイしかおらず、そのアレクセイがバイエルン王国に逆らえないように暗示したということは、ルーシ帝国は完全にバイエルン王国の掌中にあるということよ。このくらいのことはあってもいいでしょ?
「エル、ありがとう。……アレクセイ皇子、我ら使者の話を聞いてもらえますか?」
 アレクセイは、アレクを心底怯えているらしく、黙って首を縦に振った。
 この後のことは面倒だから省くわ。箇条書きでまとめるまでもないわよ。アルベルトは勿論あたし達の行動の一部始終を千里眼で見ていて、場合によってはルーシ帝国との共闘は決裂することも考えていたらしいわ。結論を言うと、ルーシ帝国はバイエルン王国と停戦することになったわよ。そして、どう見てもバイエルン王国に分があるので、賠償金をはじめ全てがバイエルン側が有利な講和条件もきっちり承諾させたわ。



 一応反省はしているみたいね。アレクセイ、あなたが直接このことに関わっていないのは分かっているけれど、皇位を継承するということはそういうことなのよ。
 もうこんな奴の顔など見たくはないから、あたし達は形式的な挨拶だけはしっかりしてフョードルグラード城を去ることにしたわ。



 はいはい、分かりました。あなたはあたし達にいきなり殴りかかって来ない分まだアレクセイよりはましだわ。ここはおとなしくただの使者として聞き流しましょう。
 さあ、一旦バイエルン王国に帰って、アルベルトに報告するわよ。



 あら、オデッサ城を素通りしているわ。



 そして、ブレスト城も素通り……。これじゃあ、まるでバイエルン王国が闊歩しているみたいね。



 さあ、バイエルン城に到着よ。
 今回は武器屋に入れなかったわ。お城へ直行しろってことね。



 待たない。
 でも、神と口調が違うわね。あなた、一体誰なの?



 突如、声の主は姿を現した。
 あなた、もしかして……。


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2022/09/11


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