魔宮の勇者たち


 悪魔ドルアーガは、東洋の戦士クルスに魅了の術をかけることに成功した。今や、同じ術が主人公ギルガメスにも迫ってきている。あのクルスを悪の手先に変えた、恐るべき魅了の術が。しかし、咄嗟に主人公がこめかみに当てたアイテムのお蔭で、ドルアーガの魅了の術は失敗した…。
 辛くもドルアーガの魅了の術から逃れた主人公は、20階で初めてドルアーガと出遭ったその時のことを思い出していた。今度ドルアーガに出遭った時こそが奴の命日だ。主人公はそのようなことを考えていた。目指すは59階――この塔の最上階である。

 『魔宮の勇者たち』は、ドルアーガ三部作(ドルアーガシリーズ)の第2巻で、ドルアーガの塔の21階〜40階までの冒険となっています。
 『悪魔に魅せられし者』では、(14階までは)一旦上の階に上るともう下の階へは下りられない構造になっていました。しかし、この巻から上下の階は塔の外部にある白木のドアで自由に行き来することの出来る構造になっています。カギのかかった扉も少なくなっています。途中から「一方通行型」になりますが、第1巻の岩盤ではなく、モンスターの追跡行(下に下りることは自殺行為を意味する)や跳ね蓋といったものが登場します。
 第2巻から始める人は無論、第1巻の500番に到達した人は1番からスタートしますが、実はこの巻にはもう2つの開始パラグラフがあります。それが100番と200番です。20階で主人公がドルアーガから魅了の術をかけられたときに主人公がこめかみに当てられるアイテムは4種類ですが、そのとき使用したアイテムによっては100番もしくは200番からのスタートとなります。これらは、第1巻からプレイしている人への特権…ではありません!飽くまでも前巻からのつながり(即ちマルチエンディング)で分岐しているに過ぎず、第1巻の500番に到達した方が明らかに得するように出来ています。
 『魔宮の勇者たち』は、大きく分けて3部構成になっています。
 まず、第1部が21階〜28階です。28階の大扉までは、主人公は同じ場所を何度でも行き来出来ます。25階の船に乗って各地へ赴いたり、26階で霧の精に会ったり、思う存分一人での冒険を満喫できる仕組みになっています。この「双方向型」は、28階のトロールの群れと出くわす場面までです。28階にある鍵のかかった扉(251番)は主人公一人の力では開けることは出来ません。クルスがいれば力ずくで開けられるかもしれませんが、生憎いません。トロールの群れを撃退した後、盗賊王と自称するドワーフのタウルスに出会います。…そう、タウルスに開かずの扉を開けてもらうのです。
 第2部は、主人公とタウルスのコンビが出来た29階〜34階です。第2部以降は「一方通行型」が主となります。モンスター達と主人公達との追跡行が始まります。道中主人公とタウルスは、伝説の「クロムの長剣」の話を知ります。30階の酒場では第1巻で出会ったクルスとの再会も果たします。そして、31階のロックデーモンの間において、主人公はついに伝説の「クロムの長剣」を入手することに成功します。伝説の長剣を手に入れた主人公は、34階でついにあの魔道師メスロンと出会います。メスロンと出会う部屋の東の部屋で「メタセコイアの葉」を使用すると、タウルスは回復しますが主人公は回復しません。この「メタセコイアの葉」は、戦士の回復アイテムではなく盗賊や魔術師の回復アイテムです。これは3巻の共通事項となっています。第1巻の20階においてメタセコイアの葉が全く役に立たなかった理由もこれによるものです。
 第3部である34階からは、主人公、タウルス、メスロンの3人との冒険となります。3人いれば心強いものです。37階のドッペルゲンガー(ドイツ語)を倒した後、主人公達が敵になりすますという発想は『ティーンズパンタクル』にも出てきます。そして、ついに38階でこの巻のボス、双頭竜(ダブルヘッドリザード)のゴルルグと出くわします。警備隊長でもあるゴルルグは、第1巻『悪魔に魅せられし者』の468番(20階)にも出てきています。さて、3人の力に圧倒されたゴルルグは、一旦逃げ出します。ゴルルグを追いかけて40階についた3人は、一旦パーティー(仲間連れ)を解散します。再び一人になった主人公は意を決して40階の通路を歩き、今度こそ自分の手でゴルルグを討ち取るわけです…。
 第1巻と同じく、この作品にも「セーブポイント」が設けられます。21階〜31階で気を失った場合、24階の部屋に戻されます(タウルスが同行していた場合は、主人公とタウルスとは引き離され、タウルスはもとの28階の牢獄に連れ戻されます)。これまでのアイテムは全部持ち去られ、代わりに金貨300枚の価値がある銀のフォーク一本からのスタートとなります。実質上第2巻からのやり直しとなるわけです。また、この塔の建設者でもある、ドルアーガを復活させてしまった35階の墓守から「復活の呪文の書」を手に入れることが出来れば、メスロンと同行中(つまり2巻中)に限り一度だけ体力ポイントが0以下になっても復活が出来ます。前巻と同様、墓守から「復活の呪文の書」を入手するチャンスは最初の1回だけです。
 こうしてみると、第2巻の21階〜40階は、一人で迷宮を彷徨うというよりはむしろパーティーでの冒険に重点をおいた作品と言えるでしょう。
 この巻で残念な点は、前巻の「ミツユビオニトカゲ」の特権の引き継ぎが出来ていないことです。21階〜32階では、体力ポイントが0以下になると即座に4番へ飛ばされます。つまり、前巻の特権が全く考慮されていないということです。また、27階のハメルーン(夫)と26階の霧の精(妻)との物語が薄い点も残念です。せめて、20番(487番)を経てから再びハメルーンに会ったときのハメルーンの反応までは描写して欲しかったところでもあります。

 この作品から、4番がんだときに進む番号という図式が定着します。『魔宮の勇者たち』以降の鈴木作品の4番は、必ず「あなたは全ての体力ポイントを失って倒れた…」という意味の文章から始まります。グレイルクエストの死の番号が14番になっていることや、米ジャクソンの作品は「400番でHAPPY END」となっていないのが特徴であることと同様、この「4=死の番号」という構造こそが鈴木作品の大きな特徴と言えるでしょう。

 …さて、35階の墓場では、あのクルスが埋葬されていました。ということは彼は戦死したのでしょうか?そして、40階で壮絶な死を遂げた警備隊長ゴルルグはどうなったのでしょうか?――その答えは、後の鈴木作品とも関連深いものとなっているようです。

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2006/10/08


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