悪魔に魅せられし者


 ここは、祖国バビリムから遠く離れた地。主人公ギルガメスの前に、一本の巨大な塔が聳え立っていた。この塔こそが、神に代わりこの世界を支配せしめんとする悪魔ドルアーガの塔である。祖国の至宝ブルークリスタルロッドと主人公の恋人であるカイが、ドルアーガによってこの塔のどこかに閉じ込められている。祖国からこの塔までの道のりは長かった。だが、本当の冒険はこれから始まるのだ。ふと空を見上げると、塔は天高く雲を突き抜けていて、入口からでは塔の先端を見ることはできない。その姿は、まさしく旧約聖書に出て来るバベルの塔そのものであった。
 ついに、主人公は塔に入った。それは、これからの危険に満ちた長い冒険の第一歩であった…。

 『悪魔に魅せられし者』は、ドルアーガ三部作(ドルアーガシリーズ)の第1巻で、ドルアーガの塔の1階〜20階までの冒険となっています。
 1階ずつは「双方向型」となっていますが、全体的には一旦上がるともう下の階には戻れないという「一方通行型」の冒険です。この点から見ると、3巻中ではこの作品が最もファミコンの『ドルアーガの塔』に近いつくりになっています。
 この作品ではある程度の階まで進むと「セーブポイント」が設けられます。体力ポイントが0以下になってしまうとゲームオーバーですが、途中で死んだり囚われの身になったとしても、条件付きで復活できるという仕組みです。5階〜9階で囚われの身になると、牢獄である5階の白骨の騎士の部屋に投げ込まれます。アイテムは全て失いますが、攻撃力と防御力はそのままの状態で復活できます。また、10階〜19階で死亡または囚われの身になった場合は、10階の老騎士が磔にされていた拷問部屋から再スタートという形になります。しかし、これらの復活のためには条件やアイテムなどが必要で、その条件やアイテムを手に入れる機会は最初に訪れた1回だけとなっています。5階の捕虜たちと話が出来る機会も最初の1回だけですし、10階の老騎士と話をするチャンスもたったの1回です。最初で最後の機会をものにすることが重要です。
 ファミコン版では登場しなかった、個性あふれる魅力的なキャラクターも出てきます。この巻で重要なキャラクターと言えば、何と言っても5階の囚人部屋にいるクルスです。また、この巻には名前しか登場しませんが、魔道師メスロンも登場します。2巻以降も色々なキャラクターが登場します。
 そして、鈴木作品には必ずと言っていいほど出て来る「ミツユビオニトカゲ」。このトカゲは再生能力が強く、このトカゲを食べた後は一度だけ体力ポイントが0以下になっても復活できるという至宝です。但し、何匹食べても復活は1回しか出来ず、一旦復活した後は再度食べなくてはならないというのが難点ですが…。一家に一匹、ミツユビオニトカゲ(?)と言ったところでしょうか。
 また、経験値によって敵が出るか否かという構造が、何度でも敵を倒して攻撃力を無限に上げるという「ウラ技」を封じており、なかなか秀逸です。
 あと、要所要所で鈴木直人氏のユーモアが出ている記述があります。「ニプルヘイム」などという(恐らくニフルハイムの)パロディもそうですし、498番の、当時の巨人軍の選手名のパロディなどにもそれが出ています。
 最後の20階で一旦ドルアーガと出遭いますが、9番で「ここでは、ドルアーガの技量ポイント体力ポイントは記さない」と書いてあるあたり、「ドルアーガの強さは3巻まで明かさない」という意味が込められています。これもまた3巻まで読み進める必要性を醸し出しています。いきなり第1巻で最終ボスの実力が露見しては、3部作を読み進める面白みが半減してしまうのは間違いないでしょう。

 ところで、鈴木直人氏の作品は、必ず4番が死んだ(体力ポイントが0以下になった)ときに進む番号です。「4=シ=死」ということでしょうが、しかしこの図式も、第一作目である本書はまだそれほど定着はしていなかったようです。

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2006/09/28


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