真夜中の盗賊(プレイ日記)


【第2回】 情報収集(後編)

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〔309〜〕

 “ネズミとイタチ亭”の中は油性ランプに照らされ、そのランプの煙と宿に泊まっている客達のパイプやタバコの煙で、空気は妙に重苦しかった。亭の主人、ハゲのモリィの姿がカウンターの向こう側に、まるで遠くの山を見ているかのようにぼーっと見え隠れしている。近くのテーブルでは、見るからに如何わしい感じの男達三人が、ピンフィンガーをしている。ピンフィンガーとは、テーブルに手を置いて指を広げてその指と指の間に順番にナイフを突き立てていきながらどんどんそのスピードを速くしていくという遊びで、某格闘系ギャグマンガでは垂鼇尖(すいごうせん)とも呼ばれるらしい。私は取り敢えずカウンターに座り、金貨1枚を払ってエールを1杯注文した。モリィと話す前に、ピンフィンガーをしている男達に近づいてみよう
「おう、お前さんもやってみるかね。ルールは簡単だ。1分間、ナイフをできるだけ速く動かして、指と指の間を突き立て続けるんだ。もし、指を刺さなければお前さんに金貨10枚をやろう。だが、もし指を刺しちまったら俺達がお前さんから金貨5枚をもらう。どうだ、やってみるか?」
 これも試験の一環と捉えるか……よし、やってやろうじゃないか。失敗したら“死”という場面は出てくる。私は彼らからナイフを受け取り、指の間にナイフを突き立て始めた。ここでDDを行い、技術点と比較する。DD6≦8で、成功しました。ナイフが私の指と指の間を踊っていたにも関わらず、私の指をかすりもしなかった。
「もういい、やめろ。俺達の負けだ。」
 集中し過ぎていて1分どころか3分も経過していた。私は黙って彼らにナイフを返した。
「ほら、約束の金貨10枚だ。受け取れ。」
 私のナイフ使いに恐怖を覚えたのか、彼らの声は震えていた。金貨10枚をテーブルの上に無造作に置き、私が回収している間、彼らは逃げるように“ネズミとイタチ亭”を去った。何か情報をと思ったが、彼らに逃げられてしまった今となっては、モリィに聞くしかないだろう。
「あのう、すみません。ブラスについて、何か知っていることはありませんか?」
 モリィはウィンクしながら答えた。
「ああ、勿論知っていますよ。で、お前さん、そのブラスにいくら支払いますかね?」
 レイワのジパングでは、インターネットというもので簡単に分かるだろう。しかし、ここは剣と魔法の世界のアランシアだ。インターネットなどというものはない。だから、情報が商品として出回るのだ。先程の臨時収入もあるし、ここは金貨4枚で手を打とう。ここでDDを行う。DDで、支払った金貨4枚以下の目が出ました。
「ブラスってのは、銅と錫で出来た黄色い合金で、真鍮や黄銅とも言うもんですよ。」
 モリィは声を高らかに言った。
「いえ、そうではなくて、……」
 私が商人のブラスだと説明しようとしたとき、ハゲのモリィという何とも間抜けな二つ名の酒場の主人の表情が俄かに変わり始めた。途端にこちらに身を乗り出し、小声で話し始める。
「勿論、お前さんの知りたいことは分かっていまさあ。その名のついた商人でしょ? 奴は大物の商人ですわ。ブラスのシンボルマークはコインで、奴の持物には全部その印が入ってやす。ショート通りとフィールズ通りの角に建っている家まで印入りと来たもんですから、どれだけコイン好きかは明らかでさあ。フィールド門のすぐそばに行ってみなされ。それと……」
 モリィはそこで一旦言葉を切る。そして、カウンターの上に指で何かのシンボルを描いた。傍から見ればただのいたずら書きでも、私の目利きの能力にかかれば、それが盗賊ギルドの秘密の印であることは明らかだ。私は、指で別の印を描いて見せた。モリィは布巾でこれら2つのシンボルを拭き消し、更にこちらに身を乗り出してきて、更にささやくような声で話し始めた。
「難しいですぜ、あそこは。金庫の鍵は今まで破られたことがない。鍵が2ついるらしいのですが、そのうち一つはブラス自身がいつも、寝るときすら肌身離さず持っているって話ですわ。儂の知っていることはこのくらいでさあ。では、これにて。」
 そう言って、ブラスはカウンターの奥に引っ込み、忙し気にジョッキを洗い始めた。ここいらが潮時か。私は“ネズミとイタチ亭”を後にした
 さて、“輪なわ”で出来ることは行った。そろそろ“輪なわ”を出ることにしよう。

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2025/09/19


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