モンスター誕生(プレイ日記)


【第13回】 ダラマスとの対決

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 … 11/11
 体力点 … 19/19
 運点 …… 10/10
 メモ … ザラダン・マーの門に着いたら93を引いた番号へ、エルフの粉を全身に浴びてしまった
 所持品 … 革切れ、ペンダント、水晶の棍棒(333)、29番兵への手紙、銀の指輪(『ダラマスにつかみかかる』ときに50を加えた番号へ)、金貨2枚

〔369〜〕
 通路を歩いて行くと、正面に暗闇が見えてきた。緑色の光が辺りを照らしているにも関わらず、その闇の中は全く見ることができなかった。
 突然、左の方が明るくなった。小さな炎が何かを照らし出している。人間の顔だ。目を閉じた老人の顔はぴくりとも動かない。肌は萎(しな)びていて、生きているのか死んでいるのか分からない。また炎が灯った。別の老人の顔が浮かび上がる。更に、もう一つ。気がつくと、部屋の四隅に暗い明かりのもと、四つの顔が浮かび上がっていた。次の瞬間、四つの顔が同時に目を開き、同時に口を動かし始めた。
エホウネ、ケイデイノ、シブツ、オヲサコルツアソ。トナハテチ、サヨコルツアトオチソナメ、オオロヨジ、ユキケケホヅ、ケルソメネゾ。サオサ、エホウネ、エオグヅ、ヒソチネ、クミラン、イサトロルツ、サホチソ。エホウネ、サユビヲノ、ごよぞを・ほーコホン、エカムナ、トチソ。エホウノ、ケネデイキチヅ、ロササネ、ムアジリホホナ、ケイデイシリネゾ。ロソサノ、ぞよほし、エホウネ、サヤザヲゾ。メサ、ケテドン、ロオリトヨ、カヤイザヤイドヲナ、シシム。カヤイ、ズレ、ドヲゾ。
 ホジ、あうれーしてーをカヲゴヲナ、アキネゾ。コポ、ポタヨゾ。アチメ、オヲサコルツアリケテワ、ロシルリトユ

 外見に似合わず随分声が高い奴だ……って待てよ。この顔、どこかで見たことがあるぞ。思い出した、あの水晶玉だ。確か、あの水晶玉も自分(?)のことをダラマスとか言っていたな。間違いなくこいつがハニカスの宿敵だ。
 声が途切れ、ガラガラという音とともに壁がずれて新しい通路が現れた。だが、そんなことは構わず、おれは注意深く辺りを見回した。何しろ、おれは言葉が分かるのだからな。
 突然、四つの炎がゆらめいて消え、代わって天井の照明が部屋を明るく照らし出した。部屋には贅沢な装飾が施されていた。壁面の至るところに金縁の絵画や豪華な織物が飾られている。絵は地獄の風景を描いたものばかりだ。そして、部屋の四隅の四つの顔は、本物そっくりにつくられた彫像だった。おれの正面に、大きな恐ろしい姿をした男が立っていた。おれも恐ろしい姿をしているのだろうが、こいつはこいつでまた恐ろしい姿をしているのだろう。黒のローブを身に纏い、赤い眼が二つ、フードの奥から光っている。ハニカスの話によると、こいつはゾンビーだったはずだ。
「お前は、つい最近ここに送られてきた」
 ダラマスが口を開いた。
「お前はザラダン・マー様が造られた実験動物だ。マー様とその部下のキンメル・ボーンがマランハの術で造りあげたモンスターの一つなのだ。マー様は薬や魔法を用いて動物を別の動物に変化させたり、或いは色々な動物の器官を組み合わせ全く新しい生き物を創造する実験をなさっておいでだ。実験は成功するとは限らないが、もし成功して生き物が完成すると、ここでしばらくの間観察して、それから最終的な使い道を決めるのだ。お前がどんな使い方をされるのかは分からんし、興味もない。だが今は、お前は私の所有物だ。金山で働かせてやるつもりだが、もう一つの選択を与えてやろう。もしマー様に呼ばれるまで金山で働くのが嫌だったら、この別の道を選んでもよいぞ、つまり、死だ!」
 ダラマスはこう言って、ぞっとする甲高い笑い声をあげた。おれは、水晶玉のことを思い出した。さっきのやけどの仕返しをしたくてたまらなかった。おれは、鉤爪をむき出しにしてダラマスを睨みつけた。
「なるほど、別の道を選ぶわけだな。」
 そう言ってダラマスは机の上の書物を広げた。
「お前が黙ってイエローストーン金山に行けば、私も水晶玉のことは大目に見てやろうと思ったが、もう許さん。よくも私の水晶玉を生き埋めにしてくれたな。今度はやけどでは済まされんぞ。」
 ダラマスは机の上の書物を見ながらぶつぶつつぶやいている。ダラマスに隙が生じた。今こそダラマスにつかみかかるチャンスだ。だが、おれはそれ以上のことを思い出した。ハニカスからもらった指輪だ。おれは銀の指輪をはずした。
「何のつもりだ……それは“祝福の指輪”ではないか! どこでそれを手に入れたんだ? さあ、そいつをよこせ! 今すぐ……」
 ダラマスはくぼんだ目を細め、刺すような視線でおれを睨みつけた。途端におれは金縛りに遭ったように動けなくなってしまった。ダラマスが近づいてきて、おれの手から指輪を奪い取ろうとしている……。
「うぐっ! 水晶玉を生き埋めにされたから息切れして叶わん。」
 おれは辛うじてダラマスの呪縛から解放された。即座に指輪を壁に向かって叩きつける。
 ブシューーーッ!
 指輪に嵌め込まれていた石が砕け散り、甘い匂いのガスが噴き出した。
「ヒエエエエッ!」
 ダラマスが甲高い悲鳴をあげて北の壁に駆け寄り、その一部を手で叩いた。隠されていた扉がするすると開き、秘密の通路が現れた。ダラマスはそちらへ向かおうとする。だが、ガスの方がダラマスよりも速かった。ガスに包まれた瞬間、ダラマスはがくりと膝をついた。喉を掻きむしり、地面をのたうち回る。間もなくダラマスはぴくりとも動かなくなった。やった、おれはダラマスを倒したぞ! これでハニカスとの約束は果たした。鉄格子のせいでハニカスを助けに行くことができなくなったが、ハニカスも喜ぶことだろう。
 おれは、ハニカスの机の上を調べてみた。書物を見てみる。どうやら、米粒を死のウジ虫――貪婪な食欲を持ち、鋭い歯で動物の体内に潜り込み、内側から食い尽くす――に変化させる呪文のようだった。ダラマスは本気でおれを殺そうとしていたのか。サイ男の言っていた「ダラマスを怒らせては勝ち目がない」と言っていた理由がわかった。ハニカスの助けがなかったら、死んでいたのはおれの方だった。おれはダラマスが本当にくたばったかどうかを確かめるために、ダラマスに強力な蹴りを入れた。ガスッ! ダラマスは起きてこなかった。どうやら、本当にくたばったようだ。人間の世界では、このような行動は死者に対する“ボウトク”と言われるのだろうが、おれのようなモンスターには関係ない。こいつがハニカスにしたことに比べたら、おれの行動なんて何でもないことだ。そもそもこいつは初めから死者(ゾンビー)なんだから、今更何を言うかというところだろう。
 さて、隠されていた通路が二つある。最初に開いた西の通路か、それとも二番目に開いた北の通路か。西の通路はイエローストーン金山へ、北の通路はダラマスが逃げようとして開いたものである。ダラマスが「死の煙」から逃れようと必死に開けた通路が「間違った」通路のはずがない。おれは、ダラマスの死体にそれ以上関わることなく、北の通路へ進むことにした。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 … 11/11
 体力点 … 18/19
 運点 …… 10/10
 メモ … ザラダン・マーの門に着いたら93を引いた番号へ、エルフの粉を全身に浴びてしまった
 所持品 … 革切れ、ペンダント、水晶の棍棒(333)、29番兵への手紙、銀の指輪(『ダラマスにつかみかかる』ときに50を加えた番号へ)、金貨2枚
 (Save Number:184)

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2022/11/08


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