モンスター誕生(プレイ日記)


【第3回】 “理性の煙”

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 … 11/11
 体力点 … 19/19
 運点 ……  9/10
 所持品 … 革切れ

〔101〜〕
 モンスターはこの扉をどうしても開けたかった。しかし、開け方が分からない。それもそのはず、モンスターに把手などという仕組みは理解できるはずもなかった。モンスターは拳を扉に叩きつけた。忽ちにして、扉の一部に穴が開いた。穴の周囲を引きはがし、身体が通る大きさに広げていく。部屋の中は壁に並ぶ松明の光に照らされ、左右の壁に扉があった。さしたる家具はなく、床一面に汚い藁が薄く敷き詰められ、壊れたテーブルや椅子の破片が散らばっていた。どうやら大がかりな闘いが、つい最近あったらしい。部屋の中央に、見たことのある物体が横たわっていた。さっき戦って勝った相手と同じく、鎧を着た戦士だ。藁の上にうつ伏せに倒れ、ピクリとも動かない。頭にかぶったヘルメットの両サイドに、翼の形の飾りがついていた。腕と肩のつなぎ目のところに、黒い刃の剣が突き立てられていた。戦士のすぐ近くの死体に、更に三人の死体があった。一人は革の鎧とヘルメットを身につけ、戦士と同じような体格をしている。腹のあたりの血の染みが、彼の死に様を物語っていた。残る二人は背が低く、鱗がある茶色の革鎧を着ていた。豚のように鼻が低く、下顎に鋭い牙が生えていた。四人とも死んでからかなり時間が経っているように見える。
 モンスターは部屋の中に入り、そっと死体をのぞきこんだ。と、突然何者かの足音が聞こえてきた。すぐ近く、部屋の中からだ。しかし、音を立てるような存在は何も見えない。革の鎧を着た死体を見ていたモンスターに突如恐怖が襲いかかった。死体の太腿の肉がいきなり消滅したのだ! 信じられない思いでモンスターはしばらく見つめていた。腿の肉はどんどん少なくなっていく。同じことが豚鼻の死体の腕にも起こっていた。一体なぜ? 何が起こっているのだろう? モンスターは恐慌状態に陥った。次の行動を起こさなくてはならない。ここでを行う。出た目は……だった。
 モンスターは死体がゆっくり消えていくという理解できない事態に恐怖を覚え、辺りを警戒しながら扉に近づいていった。豚鼻の死体の側を通り過ぎるとき、モンスターの足が空中にある何かを蹴飛ばした。キーッという叫び声がどこからともなく聞こえ、モンスターの足に激痛が走った。体力点2を失う。何かが咬みついた! 驚きのあまり地面を転がって足を振り回すと、咬みついている何者かが離れていくのが分かった。
 と、今まで何もなかった空間に、三つの人影が現れ始めた。そして、次の瞬間、三匹のやせこけた化け物が姿を現した。



 骨ばった小さな体が、ぴょこぴょこと素早く動く。顔を除く全身が、薄汚れた貧相な毛で覆われていた。目は小さいが、鋭い歯で縁どられた口だけが異常に大きかった。この性質の悪い生き物は、屍肉喰らいだ。屍肉喰らいは死体を漁っているとき、背後から襲われるのを防ぐために姿を消すことができるのだ。しかし、食事をしていないときにはその能力を発揮することはできず、気が短くなる。三匹の屍肉喰らいは食事の邪魔をされて怒り狂っていた。屍肉喰らいは三匹同時に襲いかかってきた。(管理人注:同時に襲いかかってくる敵とも普通に攻撃力を比べますが、モンスターの攻撃力が上でも攻撃を躱しただけに留まります。)
 〔屍肉喰らい1〕   技術点  6  体力点  6
 〔屍肉喰らい2〕   技術点  6  体力点  7
 〔屍肉喰らい3〕   技術点  6  体力点  6
 〔モンスター〕    技術点 11  体力点 19

[戦闘ラウンド(青字DDの値)]

[1R] ×〔屍肉喰らい1〕6+=14 < 18=11+〔モンスター〕○ ⇒ 〔屍肉喰らい1〕体力点−2=4
   △〔屍肉喰らい2〕6+=13 < 18〔モンスター〕△
   △〔屍肉喰らい3〕6+=14 < 18〔モンスター〕△
[2R] ×〔屍肉喰らい1〕6+=14 < 20=11+〔モンスター〕○ ⇒ 〔屍肉喰らい1〕体力点−2=2
   △〔屍肉喰らい2〕6+=15 < 20〔モンスター〕△
   △〔屍肉喰らい3〕6+=9 < 20〔モンスター〕△
[3R] ×〔屍肉喰らい1〕6+=11 < 16=11+〔モンスター〕○ ⇒ 〔屍肉喰らい1〕体力点−2=0
   △〔屍肉喰らい2〕6+=11 < 16〔モンスター〕△
   △〔屍肉喰らい3〕6+=13 < 16〔モンスター〕△
[4R] 即死〔屍肉喰らい2〕6+11=17 ≪ 13=11+ピンゾロの丁〔モンスター〕 ⇒ 〔屍肉喰らい1〕体力点=0
   △〔屍肉喰らい3〕6+=13 ≪ 〔モンスター〕
   (管理人注:同時戦闘の際、敵を即死させたラウンドは他の敵の攻撃を全て躱したものとみなします。今後も同様です。)
[5R] ×〔屍肉喰らい3〕6+=12 < 17=11+〔モンスター〕○ ⇒ 〔屍肉喰らい3〕体力点−2=4
[6R] ×〔屍肉喰らい3〕6+=14 < 18=11+〔モンスター〕○ ⇒ 〔屍肉喰らい3〕体力点−2=0
 屍肉喰らいを全て倒したモンスターは、しばらく休んで呼吸を整えた。好奇心の趣くままに、七つに増えた死体を調べ始めた。豚鼻のオークの肉をモンスターは一口齧ってみたが、汚くて臭く、すぐに吐き出した。腰に吊るした小さな袋を裂いてみると、小さな骨が部屋中に散らばった。冒険者二人は小袋に、例の金属円盤を何枚か持っていたが、モンスターには関心がなかった。翼つきのヘルメットをかぶった死体が背中に担いでいる大きな袋は、見た目が派手でモンスターの注意を惹いた。縛ってあった紐を引きちぎり、不器用に中を探ると、何か堅いものがある。うまく取り出せないでイライラしていると、袋から小さな小箱が床に落ち、蓋が開いた。箱の中には透明なフラスコ――紫色のガスが詰まっている――が入っていた。興味を惹かれて、箱からフラスコを取り出そうとしてみるが、モンスターの無骨な指ではどうしても滑らかなフラスコを持つことができなかった。苛立ったモンスターは小箱を持ち上げて落とした。運のよいことにフラスコは箱から飛び出し、その拍子にフラスコの栓が外れ落ちた。中で激しく渦巻いている紫色のガスがフラスコからゆっくりとあふれ出てきた。漂い出てきた紫色のガスは少しも拡散せず、纏まったままうねるようにモンスターに近づいてきた。モンスターが口をぽかんと開けて見ているうちに、ガスは人間の顔のような形にまとまり始めた。いや、人間の顔にしては少し角ばり過ぎている。蛇のような瞳がモンスターを見つめ、唇の薄い口が動いて話し始めた。



「ロン、ヌミラワ、モビラサ、メネユ。トヲザ、ロルテ、ロンタオヨワ、サヨジ。サオサ、ロンガミワ、ノソコヲ。トヲザナ、ラスアネ、ハオラワ、ポソウヲ。ケルユラ、トヲザネ、イヲムアノ、トヲザン、カラハヨキブサ。ロル、ヒソソバ、ヌミラナ、チオヲ。ヘサベサン、ハテホロラシリ、セネテカホヅ」
 (管理人注:この言葉の意味を知りたい方はこちらをご覧ください。)
 モンスターは訳の分からない言葉を話す顔に殴りかかった。しかし、モンスターの手は何の手ごたえも感じずに通り過ぎただけだった。不思議な顔がゆっくりと目をつぶる。色が紫から白に変わり、再び紫に戻った。と、顔が消え、ガスはフラスコの中に吸い込まれると、栓がひとりでに閉まった。そして、フラスコは中を飛んで小箱に収まり、小箱は消滅してしまった!
 こんな部屋はもうごめんだ。モンスターはそう思った。だが、モンスターは知らなかった。まずは、この経験により運点が加わったこと。それから……。
 西の扉から出て行こうか? それとも東の扉から出て行こうか? ここでを行……わなくてよくなったこと。
 実は、モンスターに話しかけた顔は“理性の煙”だった。これからは、モンスターは本能のままの行動ではなく自分の意志で判断ができるのだ。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 … 11/11
 体力点 … 17/19
 運点 …… 10/10
 所持品 … 革切れ
 (Save Number:382→51)

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2022/10/13


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