仮面の破壊者(プレイ日記)


【第23回】 乙女の谷のヴァシティ

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 ……… 10(+1*)/10 墓鬼の剣(*技術点+1で原点を超えても可)
 体力点 ……… 22/22
 運点 ………… 10/10
 金貨 …… 5
 食料 …… 6
 飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
 装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、ザクロ石の指輪、鉄の笏(支配する者はただ1人であるべし)、銅の鉱石の塊、つるはし、スナタ猫の牙(11匹の龍の模様と8個のリンゴの種)、女神コランバラの石像、剣歯虎の鉤爪、ヘヴァーの角笛(邪悪な敵の技術点-1)、宝石入りの首飾り、回復の水薬(体力点が最大6点回復する)、透明人間マント、耐凍薬、宝珠(21は支配者の支配をあらわす数字)
 メモ …… ガーリンを呼び出す場合は100へ進む、ジュジャのいる場所は『地面じゃないけど支えられる、水じゃないけど流れられる、空気じゃないけど噴き出せる、火じゃないけど爆発できる』場所、ジュジャを探す詩『迷うべからず、さまようべからず、常に真ん中の道を行け』、乙女の谷(208ページ『時間のない国――入るには樫の木を、出るにはリンゴの木を――』)、3つの扉に行き当たったら木の扉から入る

〔126〜〕
 私は低木林をあとにして、のしかかってきそうなほど大きく不気味に見えている山々に向かって登っていく。道が次第に険しくなり辺りが荒涼してくると、ある丘の頂に王冠をかぶせたように生えている二本の太くて大きい樫の木が、奇妙なことにまるで沈みゆく夕日の門のように見えるではないか。何気なく私は丘に登って樫の木を調べることにする。その光景は幻想的だったが、他に何かありそうな気が……もしかすると、ジュジャの本にあった『入るには樫の木を』というのは、この木のことではないか。これまでの出来事が走馬灯のように脳内を駆けめぐる。森エルフの村における魔法の水晶の鏡で見た光景、枯葉の谷で詩人が強調していた笏と宝珠、そしてジュジャの本の内容……。これだけ証拠が揃えば十分でしょう。私は笏と宝珠を手にもち、樫の木の前にかざした。俄かに、二本の樫の木の間に陽炎のようにゆらめく幕が現われる。やはりここだったんだ! 私は迷わずその門をくぐり抜ける。すると、私の目の前に一人の美しい女性が立っているではないか。あまりにも近すぎたので私は思わず数歩後退する。と、さっきまであったはずの樫の木の門が跡形もなく消えているではないか。不思議に思う私を見て、美しい女性は微笑む。
「時間のない国にようこそ。私の名はヴァシティ。伝説の書では“永遠の乙女ヴァシティ”の名で知られているかと存じます。」
 あまりの美しさというより神々しさに圧倒され、私も反射的に自己紹介をする。
「これは申し遅れました。私は<批判屋>のALADDINと申します。アリオンという国の領主を務めています。実は、私はモルガーナという魔女を討伐するために旅をしています。」
 ヴァシティは優しく微笑み、頷く。どうやら私と私の旅の大切さを受け入れてくれたようだ。
「あなたはまだいくつもの危難を乗り越えねばなりませんが、あなたが使命を果たすには、どうしても私に会わねばならぬことになっていたのです。尤も、あなたと一緒に行ってあげたくてもあげられないのですが。一度だけ私はこの時間のない国を離れたことがあります。そうですね、あなたたちの数え方で言うとほんの十数世紀前くらいでしたでしょうか。ですが、そのとき数え切れないほどの悪魔どもの攻撃を受けたのです。幸い、悪魔たちにこの体は穢されずに済みましたが、戦っている間に私は再びこの国を離れるために必要な品を失ってしまいました。」
 もしかすると、その品というのは『リンゴの木』のことではないだろうか。いや、でも、そんな大きな木を失うということがあるのであろうか。
「<批判屋>さん、あなたのおっしゃる通り『リンゴの木』ですよ。でも、どうしてそれを。」
「瘴気の沼の小さな家に住んで(?)いるジュジャという人から教わったんです。『時間のない国――入るには樫の木を、出るにはリンゴの木を――』と。」
 途端に、ジュジャの顔が輝いた。
「まあ、ではジュジャはまだ生きているのですね。」
 ジュジャのその少女のときめきのような顔を見ていると、その純粋さにこっちまで胸がときめいてくる。
「それはよかったあ。まだこの世ができて間もない頃に二人で過ごした日々は、何と楽しかったことでしょう! あの戦いさえなければ、私達は永遠を誓い合えたのに……。でも、この領地から出る方法を知っているということは、実際に出ることができるということとはまったく違うのですねぇ……。」
 ジュジャの言う通り、「分かること」と「できること」は違うとよく言うからなあ。分かっていてもできないのは、単に分からないよりも状況としては悪い。だが、ここで私は大変なことに気づいた。もしかして、私はこの国に閉じ込められているということなのだろうか。ヴァシティは私の疑問を察したのか、穏やかに語りかけて来た。
「ええ、そうですわ。ここを出る方法がないのなら、あなたは私と一緒にこの国に閉じ込められているのですよ。でも、心配は無用です。恐らく、また別の旅人がこの国に入ってくるでしょう。何世紀もしないうちにね。それまで、あなたの旅を中断して、私と一緒に乙女の谷の暮らしを楽しみましょう。」
 冗談じゃない。アリオンはモルガーナの侵攻の危機にさらされているというのに。だが、私はあきらめなかった。私がここに来るのが天命であるならば、私がここを出られるのも天命なのだ。何かザックの中にこの国を離れる手段があるかもしれない。私はザックの中を検める。
「あら、面白そうな牙。」
 ヴァシティは私の取り出したスナタ猫の牙に興味を示したようだ。この牙は奴隷鉱山のドラガーが持っていたものだ。確か、龍の模様が刻まれていて中にはリンゴの種が入っていたような気がする。……リンゴの種? 私はリンゴの種をヴァシティに見せた。
「これだわ! 準備は全て整ったのですね?」
 ヴァシティは叫ぶ。ときめく少女の叫びに、私はときめきと驚きのダブルパンチを食らった。瞬時に心臓が早鐘を打つ。
「ヴァシティさん、それでは私はここから出ることが出来るのですね。」
「勿論ですわ。さあ、リンゴの種を私にください。」
 私はヴァシティにリンゴの種を2つ渡した。ヴァシティが種を地面にまく。
「この種が木になる頃、あなたは旅立ちの準備ができていることでしょう。それまで、私の家へ一緒に行きましょう。」
 ヴァシティに誘われるがままに、私はヴァシティについて行く。ヴァシティの家は驚くほど清潔で、どころどころ光が反射していた。
「あなたは、モルガーナがしきりに手に入れたがっている魔力を生み出す鍵となる印を知っていることでしょう。しかし、印がどのように描かれているのかを知っていますか? 円周上に等間隔に6つの点をとり、すべての点を通って元の点に戻るように線を引くと、12通りの模様ができることがわかるでしょう(管理人注:これは高校数学Aに出てくる“円順列”ですが、恥ずかしながら管理人の学力では12通りの模様ができる求め方が分かりません。分かる方がいらっしゃいましたら掲示板へお願いします)。そして、それぞれの職種の人々は、印の法則に従って行動します。モルガーナは生死を問わずこうした人々をさらってきて、彼らの精気を自分のゴーレム達にかぶせる仮面に作りかえているのです。彼女が吟遊詩人と農夫を捕えているのはあなたもご存知でしょう。」
 吟遊詩人と農夫? そうか。枯葉の谷で出会った吟遊詩人見習いの師匠である“クールで一番素晴らしい吟遊詩人”と、廃墟の村の老婆の旦那さんのことか。確か、詩人には額に印をつけていたな。あれも印の一種なのだろう。
「<批判屋>さんの兜にもありますよ、ほら。」
「本当だ!」
 確かに、私の兜にも正六角形の印が。これもヴァシティの言う通りにするとできる模様の一種だ。
「単純明快な印ですが、その印こそ私達が支配者の印と呼んでいるものです。そして支配者とは、とりもなおさず<批判屋>さん、あなたのことです。支配者の印は、全ての印を1つに合わせて印の魔力を生み出す役目を持ったもので、これこそモルガーナの手に入っていないものなのです。」
 ヴァシティは、その美しい声からは想像もつかぬほどの恐ろしい説明をする。彼女の説明に含まれる意味は重大なものだ。モルガーナは既に11種類の印を手に入れていることだろう。そして、私の持つ最後の印を待ちわびているのだ。私の任務とは、モルガーナの仕掛けている罠の真っ只中に態々飛び込んでいくことなのか? モルガーナは私の精気も吸い取ってゴーレムにしてしまうつもりなのだろう。
「<批判屋>さん、その通りです。しかし、あなたがこの邪悪な筋書きを止めるための人間であることも確かです。モルガーナによってクール大陸が暗黒の手に落ちるのを阻止できるのはあなたしかいないのです。」
 私はこの厳しい宿命に使命感を燃え上がらせ、再び旅を続けることを決意する。だが、リンゴの木がまだ実っていない。
「<批判屋>さん、ゆっくりと体を休めてからでも遅くはありませんわ。」
 そう言ってヴァシティは私を浴場に案内した。ありがたくいただくことにしましょう。あまりの気持ち良さに、つい長湯をしてしまった。そして、浴場から出た後は、寝室に案内された。これまでの疲れからか、私は寝入ってしまった……。
 目が覚めたとき、朝食の用意がされていた。ヴァシティと一緒に私が朝食をとっているとき、ふとヴァシティが席を外した。そして、すぐに戻ってきた。
「<批判屋>さん、間もなくリンゴの木が実る頃ですわ。」
「そうですか、ありがとうございます。」
 私は朝食後に身支度をすませ、ヴァシティの家を出た。すぐ近くに大きなリンゴの木が2本実っていた。
「ヴァシティさん、色々とありがとうございました。必ずやモルガーナを討伐します。ここにいる間、かなりの時間が経っているに違いありません。私はここを出たら急いでクリル・ガーナッシュへ急ぎます。」
「大丈夫よ。ここは時間のない国ですから。ここにいれば、あなたは年を取らないし、ここに入るときとここを出るときの時間差は1秒たりとも途切れていないわ。」
 ヴァシティの顔には、満足感と少しの寂しさが浮かんでいた。ヴァシティが私のそばに寄る。
「あなたとお話できて楽しかった。ありがとう。」
「ヴァシティさん、私もあなたに出逢えて嬉しかった。今度は、任務という形ではなく自由な形で逢いたいものです。」
 ヴァシティの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。私は思わずヴァシティを抱きしめ、そして唇を重ねる。私の目にもうっすらと涙が浮かんでいた……。
 名残は尽きないが、私にはモルガーナを討伐するという大事な任務があることを忘れてはならない。私はヴァシティに別れを告げ、リンゴの木の門をくぐり抜けた。次の瞬間、私は丘の頂上に立っていることに気がついた。私が出てきた2本のリンゴの木の隣には、2本の樫の木がある。そして、夕日も私が乙女の谷に入ったときとそっくりそのままの位置にある。こちらの世界では時間が動き出し、夕日は間もなく沈んだ。
 永遠の乙女ヴァシティは女性というよりは少女に近かったなあ。だから乙女と呼ばれているのだろう。私はそんなことを考えながら、丘の頂上で野宿する準備を整え、眠りに就いた。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 ……… 10(+1*)/10 墓鬼の剣(*技術点+1で原点を超えても可)
 体力点 ……… 22/22
 運点 ………… 10/10
 金貨 …… 5
 食料 …… 6
 飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
 装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、ザクロ石の指輪、鉄の笏(支配する者はただ1人であるべし)、銅の鉱石の塊、つるはし、スナタ猫の牙(11匹の龍の模様と8個のリンゴの種)、女神コランバラの石像、剣歯虎の鉤爪、ヘヴァーの角笛(邪悪な敵の技術点-1)、宝石入りの首飾り、回復の水薬(体力点が最大6点回復する)、透明人間マント、耐凍薬、宝珠(21は支配者の支配をあらわす数字)
 メモ …… ガーリンを呼び出す場合は100へ進む、ジュジャのいる場所は『地面じゃないけど支えられる、水じゃないけど流れられる、空気じゃないけど噴き出せる、火じゃないけど爆発できる』場所、ジュジャを探す詩『迷うべからず、さまようべからず、常に真ん中の道を行け』、乙女の谷(208ページ『時間のない国――入るには樫の木を、出るにはリンゴの木を――』)、3つの扉に行き当たったら木の扉から入る
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2024/04/02


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