仮面の破壊者(プレイ日記)


【第12回】 兜盗難事件

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 ……… 10(+1*)/10 墓鬼の剣(*技術点+1で原点を超えても可)
 体力点 ……… 21/22
 運点 ………… 9/10
 金貨 …… 15
 食料 …… 4
 飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
 装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、ザクロ石の指輪、鉄の笏(支配する者はただ1人であるべし)、銅の鉱石の塊、つるはし、スナタ猫の牙(11匹の龍の模様と8個のリンゴの種)、女神コランバラの石像
 メモ …… ガーリンを呼び出す場合は100へ進む

〔71〜〕
 さて、私も国賓として扱われたのだから、宴を楽しもう。この枯葉の谷というところは本当によい場所だ。異種族の者達が仲良く楽しそうに歌っていたり飲んでいたりする。酒の上での喧嘩を見ては笑い、バカ騒ぎをする者を見ては喜んでいる。喜怒哀楽の激しい領主だが、悪い人ではなさそうだ。私も宴を楽しみ、体力点4点回復した。まさに宴も酣(たけなわ)というとき、先程の門衛が慌ただしくヘヴァーのもとにやってきた。時々頭をさすりながら、ヘヴァーに報告する。
「ヘヴァー様、実は<批判屋>様のお泊りになる部屋の中に隠れていたピグミー・オークに不意打ちをされて不覚にも気を失ってしまいました。そして、気がついたときには<批判屋>様の兜が跡形もなく消えていて、ピグミー・オーク達の手がかりも全く残っていませんでした。申し訳ございません。」
「それは一大事だ。して、その方、不意打ちの傷は大丈夫か。」
「はっ。また痛みますが、この通り何とか生きております。」
「報告ご苦労であった。すぐに捜索隊を集めよ。」
「承知いたしました。」

 門衛は私に一礼し、すぐさま捜索隊の結成にとりかかる。ヘヴァーが私に対して頭を下げた。
「いとこよ、今の話を聞いていなさったであろう。誠に申し訳ない。全ては領主たる私の責任である。私があのとき荷物を運ばせなければこんなことにはならなかった。」
「いいえ、ヘヴァー殿、貴殿のせいではありません。悪いのはピグミー・オークです。取り敢えず、門衛の方が襲撃された部屋に案内してはもらえませんか。」
「お安い御用です。<批判屋>殿を部屋に案内せよ。」
 私の泊まる予定だった部屋は、質素だが清潔感にあふれて居心地が良さそうだった。ふと、窓を見る。何かあるぞ。ロープだ。ロープの先を見ると、地上まで届いており、そこは城壁の外側なのだ。そう言えば、門衛は何も手がかりがないと言っていたが、ロープがしっかりあるではないか。それを見落とす門衛でもあるまいし。ひとまずここはヘヴァーが来るまで待つことにしよう。やがて、ヘヴァーがやって来た。
「おお、わがいとこよ。あの兜が貴殿の一族にとって如何に重要なものであるかは知っておる。魔術師アイフォー・ティーニン殿が鷲を使って貴殿が来られることを知らせてよこしたのじゃが、その中で貴殿を見分ける一番確かな方法は兜だと言われておったのでな。」
 アイフォーが鷲を使って? まあ、アランシアにもヤズトロモという大魔術師がいると聞いているから、アイフォーが鷲を使っていても何ら不思議ではないが、どこか心に引っかかるんだよなあ。カンの鋭い読者であれば、私<批判屋>が心に引っかかる理由をお察しなさっていると思うが(管理人注:分かった方は掲示板へご投稿ください)。
「<批判屋>殿、早急に集めた5人の捜索隊が中庭に集結しておる。私は城内の者から情報を仕入れる故、これにて御免。」
 ヘヴァーは沈痛な表情のまま部屋から出て行った。私も部屋を出て中庭に向かった。5人の捜索隊と合流し、ピグミー・オークの追跡に出発する。
 夜間に、しかも月が沈んでしまってからでは、泥棒たちのあとをたどるのは困難だ。しかし、いくらかの進展はあった。朝になると私達は矛槍草の大平原の端を北に向かって進んでおり、そこから先は背の高い草が追跡を容易にしてくれる――傾いたり折れたりした草がはっきり見えるからだ。じきに泥棒達の頭と肩が草の上でピョコピョコ上下しているのが見えてくる。ふと、ここであることに気づく。時間こそかかったが、泥棒達はなぜこれほど簡単に追いつかれるようにしたのだろう。ロープにしても、随分簡単すぎる手掛かりだ。まるで捕まえてくださいと言っているようなものである。そう言えば、門衛はロープに気づかなかったのだろうか? いや、そんなことはない。恐らく門衛がヘヴァーに報告に行った後、隠れていたピグミー・オークがわざわざご丁寧にロープを残したのだろう。ということは、私が1人でここにいることを想定した罠でも仕掛けているのだろうか? 答えは次の瞬間に出た。



 次の瞬間、ピグミー・オークが叢から現れた。ピグミー・オークは全部で6人いた。だが、こちらも6人いる。彼らは悪意に満ちた目でこちらを見つめる。
「ちきしょう、1人で来たんじゃねえのか。」
 リーダー格が舌打ちをした。どうやら、私が1人で来るのを見計らって私を六方から取り囲み、嬲り殺しにするつもりだったのだろう。確かに多勢に無勢とは言うからな。
「作戦変更だ。来やがれ! 俺達の狙いはつまらん兜なんかじゃなく、貴様なんだぞ!」
 リーダー格は怪しげな形の短剣を引き抜くと、私に突きかかってくる。他のピグミー・オーク達も、1人ずつ捜索隊とそれぞれ渡り合う。
 〔ピグミー・オーク〕  技術点  7  体力点 10
 〔批判屋〕       技術点 11  体力点 22

[戦闘ラウンド(青字DDの値)]

[1R] ×〔ピグミー・オーク〕7+14 < 19=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔ピグミー・オーク〕体力点−2=8
[2R] ×〔ピグミー・オーク〕7+10 < 14=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔ピグミー・オーク〕体力点−2=6
[3R] ×〔ピグミー・オーク〕7+15 < 17=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔ピグミー・オーク〕体力点−2=4
[4R] ×〔ピグミー・オーク〕7+13 < 15=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔ピグミー・オーク〕体力点−2=2
[5R] ×〔ピグミー・オーク〕7+14 < 17=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔ピグミー・オーク〕体力点−2=0
 リーダーを5ラウンドで倒した私は、他の捜索隊の加勢に入る。
「おい、2対1なんて卑怯だぞ。」
 ピグミー・オークは自分達の作戦のことも忘れ、私を罵倒する。
「何言ってやがる。さっきお前たちのリーダーが言ったことを忘れてはいないだろうな。『1人で来たんじゃねえのか』だと? あのロープは私1人を誘(おび)き寄せる罠だったんだろうが、お前らの思い通りに事が運ぶほど我々の考えは浅くはないんだよ。」
 そう言って、私は墓鬼の剣でピグミー・オークの短剣を跳ね飛ばす。そして、オークの喉元に墓鬼の剣を突き付ける。
「誰に頼まれた。お前達が単なる実行犯に過ぎないことは分かっているんだ。さあ言え。」
 次の瞬間、雷撃が目の前のピグミー・オークを襲った。雷撃はそれっきりだったが、既にピグミー・オークは黒焦げの骸と化していた。口封じか? 私は一瞬呆然としたが、すぐさま捜索隊の一言で我に返る。
「<批判屋>様、兜です。」
 私は捜索隊にお礼の言葉を述べてから、兜を受け取った。ピグミー・オークは全滅したが、こちらもただではすまなかった。捜索隊が2名ピグミー・オークの犠牲となったのだ。私達は、殉職した兵士達をかついで枯葉の谷まで戻った。
 枯葉の谷の城の入口では、城主自らが立ち、私達の帰還を待っていた。
「ヘヴァー様、<批判屋>様の兜は無事取り戻すことができましたが、捜索隊が2名死亡しました。」
「なんと! ううぅぅ……。」
 捜索隊の報告は、少なからずヘヴァーの心を痛めたようだった。ヘヴァーは捜索隊達を労い、そして目の前にいる2名の兵士の亡骸に手を合わせた。その目には涙が流れている。こういった喜怒哀楽を素直に出せることこそがヘヴァーの魅力なのだ。
「両名の者を手厚く葬るがよい。そして、我が国の殉職者名簿に書き加えるのじゃ。」
「はっ!」
「<批判屋>殿は、我々と一緒に会議室に来てもらいたい。」
 会議室には、既に枯葉谷の有識者と思われる人々が腰を下ろしていた。すぐさま会議が始まり、今回の襲撃事件についての話し合いが行われた。泥棒達は私がこの枯葉の谷にいることをどうやって知ったのか? 誰がどのようなルートで奴らに知らせたのか? 私は黙って聞いていたが、どの意見も推測の域を出ていないようだった。私には心当たりがあるのだが、それは言わないでおいた。この会議室内に聞き耳があることを案じたからだ。ヘヴァーの角笛との関連性も否定できない。
 会議が終わり、有識者達はそれぞれの家に帰っていった。会議室にはヘヴァーと私だけが残った。ヘヴァーは、彼が召し抱えている詩人について述べた。
「そうだ、いとこよ。詩人の吟唱する物語を聴けば貴殿の心配も晴れるかもしれない。貴殿さえ良ければ一緒に聴こうではないか。」
 私はこの誘いを断るほど愚か者ではない。
「ヘヴァー殿、是非ご一緒させてもらいたい。」
「おお、そうかそうか。では、詩人を呼んでくる故、暫時待たれよ。」



 しばらくすると、会議室に若い詩人がやってくる。額には古くから伝わる詩人の印をつけている。この印さえつけていれば、文明化された土地ならどこへ行っても神聖な客として扱ってもらえるのだ。刺青かと思ったが、刺青ではなくシールのようなものらしい。
 さて、詩人がいくつか昔話を吟唱する……何だか随分“個性的な”歌だなあ。写実派の基準からするとピカソの絵は“ど下手”に見えるが、印象派の基準からするとピカソの絵は天才的というのと同じことなのだろうか? 芸術に点数はつけられないとは言うが……。
 私の訝しがる視線に応えて、ヘヴァーはその理由をこっそり耳打ちする。
「この若者は、私が以前召し抱えていたクールで一番素晴らしい詩人の弟子だったのじゃ。ところがその詩人は数か月前に何者かに攫われてしまい、その後の消息は全くつかめぬ。まだこの若者は修業中の身であり、観客が望む物語から歌をつくることを学んでおるところなのじゃ。」
 クールで一番“素晴らしい詩人”に弟子入りしたからと言って、素晴らしい詩人になれる保証はないが、修業中に師匠が失踪したのでは致し方ないだろう。それに、これは伝統的な詩人の技能であることは確かなのだ。
「そうじゃ、<批判屋>殿、何か詩人に歌を注文しては如何かな?」
 それは願ってもない機会だ。私も気が晴れるし、詩人も歌を学べるだろう。枯葉の谷にはウィンウィンの関係が多いなあ。
 さて、どんな歌を作ってもらおうか? 折角だから、占いの意味も込めて、私自身の枯葉の谷への訪問の歌を作ってもらうことにしよう。
 詩人は、少し吃ったり口籠ったりしながらも、アリオンを出て枯葉の谷へ至るまでの私の旅について、大部分が全くの空想からなる短い歌をどうにか作り上げる。私を喜ばせるためのものだろうが、最後の結末は大変愉快なものになる。中でも、詩人は真の支配者が用いた場合に笏と宝珠が発揮する力について熱く語り続けていた。私は、笏と宝珠さえ手に入ればこの旅を無事に終わらせることができるような気分になる。今、所持品に鉄の笏があるから、あとは宝珠だ。この歌を聴いたことで、私に運点1点分の幸運が向いてきた。
 やがて吟唱はお開きとなり、私は居心地の良い部屋に帰って眠った。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 ……… 10(+1*)/10 墓鬼の剣(*技術点+1で原点を超えても可)
 体力点 ……… 22/22
 運点 ………… 10/10
 金貨 …… 15
 食料 …… 4
 飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
 装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、ザクロ石の指輪、鉄の笏(支配する者はただ1人であるべし)、銅の鉱石の塊、つるはし、スナタ猫の牙(11匹の龍の模様と8個のリンゴの種)、女神コランバラの石像
 メモ …… ガーリンを呼び出す場合は100へ進む
 (Save Number:232→26)



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2024/02/28


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