フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第57回】無償の愛

 ニーナ王妃がテントに入った途端、ユーグ王子が警戒するように後ずさった。だが、ユーグ王子がニーナ王妃のペンダントに気づくと、それまでの警戒を一挙に解いた。
「母上!」
「ユーグ!」
 王妃と王子はお互い駆け寄り、抱き合った。2人の再会を、あたし達は取り囲むように見守った。
「ユーグよ、再会は嬉しいのじゃが、わらわの客人達を席に着いてもらわなくてはならぬ。皆わらわの大切な方たちじゃ。粗相のなきようにな。」
「はい、母上。皆様、ようこそいらっしゃいました。まずはお座りください。」
 ユーグはあたし達を席に招いた。
 テントの中は窮屈と思ったけれど、中は意外に広いわ。BGMも心を和ませるものになっているわね。
 あたし達は、バイエルンとアレシアの交渉に立ち会う形になった。アレシア王国の真のトップ2(Twei)とバイエルン王国の女王陛下代理人との話し合いの結果によっては、ルテティア城へ攻め入らなくてはならない。アルベルトの親書は偽の国王に破り捨てられたけれど、それは王妃と王子にとっても本意なのかを確かめなきゃ。



「それは、わらわが説明しよう。」
 そして、ニーナはユーグに前回と同じ説明をした。
「やはり、城の母上は偽者でしたか。父上もこの3ヶ月くらいで様子がおかしいと思ったら……。それにしても、父上が殺されて3ヶ月も気づかなかったとは……畜生!」
「ユーグ、己を責めるでない。魔族どもの手口がそれだけ巧妙だったのじゃ。かく言うわらわも、3ヶ月もニース温泉に禁錮にされたのじゃ。それを、ここにいるアレク卿達に救われたのじゃ。」
 そして、ユーグはアレクの方を向いた。
「そなたがアレク卿ですか。先日は、城でお会いしましたな。母を助けてくださったこと、誠に感謝いたしますぞ。」
 そう言って、ユーグ王子はアレクに頭を下げた。どこかの餓鬼とは違って、こちらの王子はきちんとしているのね。じゃあ、本当のアレシア国王はいい人……ってこと? あたし達はとんでもない思い違いをしていたようね。



 アレクの本名って、結構長いのね。ジパングの寿限無よりは短いけれど。
「城にいる国王並びに王妃が偽者とわかった以上、早急に排除すべきと思われます。」
「うむ。我が手で父の仇を討ちたいところだ。」
「ユーグ、おまえの気持ちはわかるが、早まるでない。おまえにもしものことがあったら、アレシア王国は何とするつもりじゃ。」
 ここで、アレクが仲裁に入った。
「まあまあ、王妃も王子も落ち着いて。モンスターには私も聞きたいことがあります。問題を早急に解決するため、ルテティア城へお戻りの際、城まで護衛をさせてもらいたく存じます。もしものときは私達が戦い、王子にはとどめを刺してもらいます。」
「アレク、確かにそなた達がいれば心強い。相手が魔族ならば、私一人では到底勝てないだろう。しかし、外国の人たちに自国の問題を任せてよいものだろうか……」
 そんなことを言っている場合じゃないでしょ! 王妃と王子、やはり性格も似ているのね。ここで、アルベルトが助け船に入った。
「ユーグ王子、お言葉ですが、この話をアレシアの人々にしたとします。人々はこの話を信じるでしょうか?」
「私は、母から直接聞いたので信じます。しかし、人々は信じないでしょう。城の兵士に話したとしても、軍は父の手に握られ、私にはまだ統帥権がない。とすると、アルベルト公爵、何か策でもおありでしょうか?」
「軍の将兵にこの話をしたら、偽国王の耳にすぐに入ってしまいますよ。要は、騒ぎを起こさずに城へ入り、手早く偽の国王と偽の王妃を倒してしまえばよいのです。」
「なるほど、アレク卿達と一緒に動き、偽者達を倒すということですな。しかし、なぜ外国の方々がそこまでしてくださるのですか? あなた方に一体何の得があるのですか?」
 王子の問いかけに、アルベルトは、落ち着いた口調で言った。
「少なくとも、アレシア国と講和をすることができる。アレクから聞いたが、王子は講和に肯定的とか。偽国王と偽王妃を倒せば、ユーグ王子はユーグ国王となりましょう。そうすれば、政権はユーグ国王が持つことになる。ユーグ国王は講和に調印してくださるでしょう。」
「ユーグ、公爵の言う通り、講和をすれば無駄な血を流さずに済む。アレシアの国民を第一に考えぬようでは、国王は務まらぬぞよ。ここは公爵殿やアレクの提案を受けようではないか。」
 ユーグ王子はそれでも首を縦に振らない。





「王子様、ありがとうございます。」
「アネットに言われたら、承諾するしかないであろう。」
 そう言ったユーグ王子の顔は少し赤みをさしているようだった。アルベルトが話を続けた。
「ユーグ王子、たとえこちらに得がなかったとしても、人は時に“無償の愛”を示すことがある。損得勘定とは無関係の。今のアネット殿がそうであろう。人の上に立つ者は、時に“無償の愛”を示さなくてはならないのです。」
 ユーグ王子はアルベルト公爵の話を真剣に聞いていたわ。ユーグ王子に“無償の愛”が突き刺さっているのは確かよね。理窟や損得勘定では決してない“無償の愛”が。
「さあ、ユーグ王子、お城へ急ぎましょう。護衛は私達にお任せを。」
「うむ、頼むぞ、アレク。」

 さて、ここでステータスの確認よ。

 (↓現在のステータスです。画像をクリックすると詳細を見ることができます。↓)

 (↑尚、ソフィーはステータス画面には登場しません。↑)

 あたし達は、3回目(アレクは2回目)のルテティアの入口に立った。
 相変わらず、嫌な「下っ端の門番」がいるのね。でも、今回ばかりは門番も絶対通してくれるわ。何てったって……



 そうよ、こちらにおわす方こそがアレシア王国のユーグ王子よ。「下っ端の門番」達、頭が高いわよ。控えなさい、なんてね。
「役目の方、ご苦労である。」
「しかし、その者達は一体……うっ。」
 ソフィーの姿に、「下っ端の門番」達は一瞬驚いた。この「小娘」に何か言ったら、またフォルゲン似の上官に殴られる。
「案ずるな。私の付き人だ。危害を加える輩ではない。」
「しかし……」
 業を煮やしたアネットが思わず口を開いた。
「しかしもかかしもないわよ、『門番』さん。王子様の前だから、特別に『門番』さんて呼んであげる。さっき、フォルゲン伯爵似の上官がソフィーに謝っていたわよ。素直に通さないと、今度は打ち首獄門くらいになっちゃうかも〜。」
「ん? ソフィー殿、アネット、何のことであるか、私には分からぬ。」
 ユーグ王子が首を傾げた。
「王子様は何も気になさらなくて結構です。さあ、お城へ急ぎましょう。ソフィー、あとはよろしくね。」
「ええ、アネット。ありがとう。またね。」
 あたし達は、ユーグを連れてルテティア城へ入った。

 ルテティア城では、偽の国王がユーグ王子を探していた。
「父上、只今戻りました。」



「はっ、ルテティアに偽者がいないかどうかを見回っていました。」
「そんなことしなくていい。お前は黙って席に座っておれ!」
「いいえ。この城内に偽者がいると聞きましたので、探したいと思います。」
「ユーグ! いい加減にしろ!」
「いい加減にしろ、だと……。それはこっちのセリフだ!」



 ニーナの髪の色が違うわ。本物は青いのに、偽者は灰色……これって、アルベルトのときと一緒じゃないの。
「恐らくユーグ王子だけでなく、兵士の人たちの中にも気づいた人はいたはずよ。でも、偽の国王に圧力をかけられて、誰も言えなかったんだと思うわ。ユーグ王子はいつも偽の両親に見張られていて、辛かったでしょうね。もしかして、ロールシャッハ城の大臣もそうだったのかもしれない。私、何てひどいことを大臣に言っちゃったんだろう。」
 そう言ったのはソフィーだった。ソフィー、あなたのその言葉を聞いたら、ロールシャッハ城の大臣もきっとあなたのことを許してくれるわよ。ううん、許すも何も、大臣は最初からあなたに対して何も悪く思っていないわ。



 そう言って、ユーグ王子は偽国王に対して剣を抜いた。
「貴様らには騙され続けてきたからな。どうだ、国王・王妃ごっこは楽しかったか? よくも我が父を手にかけてくれたな。父の仇、思い知れ!」
 ユーグ王子の言葉に、「国王」の顔が醜く歪んだ。
「フハハハハ! ばれちゃあしょうがない。それでは、望み通り正体を見せてやろう!」
 そう言うと同時に、「国王」と「王妃」が変身を始めた。
「ユーグ王子、お下がりください。ここは我らにお任せを。私の合図でとどめを刺してください。」
「うむ。アレク、よろしく頼む。」



 ついに、偽者の正体を暴くときが来たわ。アレクを瀕死の重傷に追いやったのもあんたたちの差し金ね。覚悟しなさい!


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2022/05/15


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