フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第22回】ロールシャッハ城の元兇

 玉座の間にギーゼンを捨て駒にした元兇がいた。公爵と姿形はそっくりだが、そいつは偽者だ。なぜなら、本物がここにいるからだ。



「こ、これは……殿下が二人……」
 偽公爵の側にいる老人が驚いている。
「ねえ公爵、この人がバカ大臣?」
 ソフィーが相変わらず歯に衣着せぬ質問をする。
「うむ。余は爺と呼んでいるのだが。余が産まれたときからのお世話係としても務めている。信用に足りる人だ。」
「でも、頭は悪いんだね。だって、髪の色で偽者ってわかるじゃん。」
 確かにソフィーの言う通り、偽アルベルトの髪の色は灰色だ。人間、追いつめられると脇が見えなくなるというが、その良い例であろう。
 そうこうしているうちに、玉座に座っている偽者もこちらに気がついたようだ。



 何者って、こちらにおわす御方こそ本物のアルベルト公爵にあらせられるぞ。
「よくも余を……いや、余よりも民を弄(もてあそ)んだな。その罪は重いぞ。」
「何を戯言を。皆の者、出あえ! 余の偽者じゃ!」
「ほう、貴様はこれを見ても余を偽者とのたまうか。」
 そう言って本物のアルベルト公爵はペンダントを取り出した。
「むぅ、そのペンダントは……」
 大臣が目を見開く。
「さすがは爺だ。このペンダントを覚えておるな。」
「殿下“達”に申し上げます。先の陛下が崩御なされた折、あのペンダントをいかがなされたか、覚えておいでですな?」
「無論、覚えておる。」
 両者とも異口同音に答えた。
「では、いかがなされたか、答えられい。」
 間髪を入れず、本物のアルベルト公爵が答える。
「陛下の遺体を前にして、王子が陛下のペンダントを形見に欲しいと泣き叫んでいた。だが、それは埋葬品として棺に納めなくてはならないものだった。そのとき、私のペンダントを王子に譲ったのだ。」
「嘘を言うな。あのペンダントは、陛下の亡骸とともに埋葬されたもの。大方墓を掘り起こして手に入れたものであろう。墓荒らしは立派な犯罪だ。剰(あまつさ)え余を騙るとは、万死に値する。この者たちを直ちに捕らえよ!」
 偽者が大臣に命ずる。しかし、……
「そうはいかん!」
 大臣は我々の前に立ちはだかるようにして偽者に向き合った。
「何を。この無礼な。」
「無礼なのは貴様の方だ。この偽者めが。本物のアルベルト公爵ならば、このペンダントのことを知らぬはずがない。如何に儂(わし)が耄碌(もうろく)していても、このペンダントの故は忘れてはおらぬぞ! 今は亡き陛下のペンダントとアルベルト殿下のペンダントは対をなすもの。それすらも知らぬとは。泣き止まない王子にせめてもの慰めにと殿下は王子にペンダントを差し出したのだ。そのとき王子が殿下の手からもぎ取るようにして受け取っていたのを今でも覚えている。」
 あのク○餓鬼、昔から礼儀知らずだったのか。だが今頃は女王陛下に相当厳しく躾けられているだろう。
「ハハハハハ……、ばれちゃあしょうがない。完璧に化けていたつもりだが、実は髪の色だけはどうしても真似できなかったのだ。いつかはこういう日が来ると思っていた。」
「何ですと。そう言われてみれば、確かに……。」
「ほら言ったでしょ。大臣がバカだって。」
 こらっ、ソフィー、余計なことを言うんじゃない。
「そうとも、儂はバカじゃ。儂は何年、否何十年殿下のお世話係を務めてきたのだ。じゃが、お嬢ちゃん、城内全ての者は決してバカではないのじゃ。兵士の中の2〜3人は公爵が偽者ではないかと儂に相談までして来たというのに、儂は真っ向から否定した。あのとき儂が兵士の言い分を聞いておればこんなことにはならなかったのじゃ。儂のことはいくらバカと言っても構わない。だが、城内の者全員をバカと言うのはよしておくれ。」
「ソフィー殿も爺も、今はそんなことを言い合っている場合ではない。」
 そうこうしているうちに……。



「グッ!」
 本物のアルベルト公爵が偽者の先制攻撃を受けた!
「殿下!」
 偽者を除く全員が本物のアルベルト公爵に駆け寄る。



「グゥォォォォ!」



 2回連続の中ボス戦闘。無論逃げることはできない。ここでもエルの精神攻撃が炸裂する。
 エルのスキルによって、ドッペルゲンガーが眠った。
 ここで、先程のレベルアップでエルが覚えた「癒しの歌スペシャル」とやらを使ってみよう。



 おお、HPが大幅に回復していく。どうやらこれは癒しの歌の強化版のようだ。



 私とクリスの呪文が封じられたが、とどめはリーゼルが刺した。
  • 1350経験値、金500マルクを獲得
  • 炎の指輪を入手
  • アレク … レベル13へ、シェイドを習得
  •  漸く私もレベルアップしたか。最近何だか彼女たちの方が強くなってきている気がする。気のせいか?
     さて、ドッペルゲンガーを見るが、辛うじて息がある。ギーゼンと同じく、こいつも捨て駒なのだろう。
    「ヌゥォォォ! この私が…私がやられるとは…」
    「貴様らの親玉は誰だっ! ギーゼンといい、お前といい、恐らく親玉にとっては捨て駒程度の扱いなんだろう?」
     私はドッペルゲンガーに思い切ったことを言う。
    「捨て駒…か……そうかも知れぬな。私は…最後まで反対した……神と魔族の同盟など…グフッ!」
     最近何だか中ボス格の敵の最期がみんな「グフッ」に聞こえるのは気のせいか、それとも創造主の意向か?



     リーゼルが歩み寄る。己にとどめの一撃を浴びせた相手に歩み寄られた恐怖のためか、ドッペルゲンガーはそのまま消滅した。
    「これは…驚いたな…」
     アルベルト公爵がよろよろしながら立ち上がる。
    「殿下、まだ動いちゃだめよ。」
     クリスが不安そうにアルベルト公爵に声をかける。と、ここでエルが公爵に歩み寄る。
    「殿下、動かないでくださいね。癒しの歌スペシャル!」
     エルの歌声とともに公爵の傷がみるみるうちに回復していく。やがて、公爵の体はすっかり元通りに戻った。
    「エル殿、ありがとう。」
     と、次の瞬間、エルがよろめいてその体を私に預ける形となる。エルが疲れやすい体質だからではない。エルが疲労困憊になるほど公爵のダメージは大きかったということだ。
    「さて、私はエル殿のお蔭でもう大丈夫だが、しかし、エル殿が疲れ切ってしまったようだ。」



    「承知いたしました。」
     私はゆっくりと返答した。
    「爺。例の手筈を。」
    「お任せください。アレク殿達の部屋はしっかりと確保しています。では、皆さん、こちらへ。」
     私はエルを背負い、その後にリーゼル、クリス、そしてソフィーが続く。
    「さあ、こちらです。」



     まずはエルを私の背中から降ろす。いつの間にか寝息を立てているエルをベッドの1つにそっと寝かせる。
     ん? ……ちょっと待った、ベッドが4つだけ?
    「大変失礼しました。只今御一人分追加いたします。」
     大臣の合図とともに、ベッドがもう一つ運ばれてくる。いや、だからそういう問題ではなくて、私だけ別室とかではないの?
    「では、ごゆるりと。」
     そう言って大臣達は事も無げに立ち去る。あの…ちょっと……。
    「隊長〜。疲れちゃったからもう寝ましょう。」
     弁明する暇も与えられず、私は3人に担ぎ上げられる。3対1では勝てるわけもなく(しかも彼女たちの力が以前よりも強くなっている気がする!)、いつの間にか5つ連結されたベッドの真ん中に半(なか)ば放り投げられる形で乗せられた。
    「アレク、私をここまで背負って運んできてくれたのね。ありがとう。」
     いつの間にかエルまで参戦(?)していた。さっきまで疲労困憊だったとは思えぬほどの回復力だ。
     私の両手両足は彼女達4人が一本ずつ抱きかかえる形で拘束(?)されることになった。
     もはや逃れる術はない……(ゲームブックだとDEAD ENDを彷彿させる表現です)


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    2020/04/29
    2020/04/30 一部修正



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