フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第15回】仕掛けの果てに

 イタタ…。私は打ちつけた部分を撫でながら他のメンバーの無事を確認する。どうやら全員怪我はないようだ。
 リーゼルが不満げな表情をしている。



 まあ、扉が開いたことだし、そんなにカッカしなくてもいいでしょう。しかし、ソフィーは別のことで不満だったようだ。
「ちょっとエル、あんたスカートがめくれているわよ。まだ見えていないからいいけれど。」
「何が?」
「何がって……スカートの中が見えちゃうでしょ。隊長の前ではしたない。」
「スカートの中? アレクだったら別にいいわよ。ほら。」
 そういってエルは私にスカートの裾をめくり上げて見せる。
「……!」
 私は一瞬、全身が硬直した。第3回でのエルに対する疑惑が明らかになった。やはり、エルは何も着けていなかったのだ。
「エル……スカートをきちんと戻してもらっていいかな。」
 私の口からは、その言葉で精いっぱいだった。
「は〜い。」
 漸くエルが元の格好に戻った。
「でも、ソフィーだって見えていたわよ。」
 あの……ここであまりそういった話を横行させないでもらえますか。まるでジパングの女子校みたいな会話だ。



 クリスのこの一言で、皆我に返ったようだ。ナイス!



 先へ進むと、入口らしきものが現れた。この先が城の裏口なのだろうか。
 覚悟を決めて、先へ進む。



 随分と薄暗い場所に出たぞ。どうやらここは城の地下牢のようだ。牢というのはどこの国にもあるもので、要はその国にとって不利益を齎(もたら)した輩を閉じ込めておく場所だ。その「不利益」は国や時代によっても異なり、たとえ真実を唱えた者でもその国の実情に合わない場合は入牢(じゅろう)に処されてしまう。
 さて、目立つ正面の扉を試してみる。



 この牢のどこにも開けるスイッチや手がかり(合言葉など)が見つからないところを見ると、今はこの扉を開けるときではないということだろう。
 次の行動を考えようとしたとき……誰かいる! 一番右側の牢だ。
 私は、牢の扉を叩いてみる。しかし、何の反応もない。
「よし、抉(こ)じ開けてみよう。」



 多分こんな感じで……カチリ。ほら開いた。
「すごおい。アレクって、泥棒でも生計を立てられるわよ。グスタフもびっくりだわ。」
 それも誤解を受けるような表現だな。だが、ソフィーの言うことも尤もだ。李下(りか)の冠(かんむり)瓜田(かでん)の靴(くつ)。この技は人に見せびらかさないようにしないとな。本当に盗難が起きたとき、真っ先に私が疑われてしまう。
「とにかく、中に入りましょう。」とリーゼル。しかし、クリスは用心深かった。
「私は、これが罠である可能性を考えて、扉と通路の境界線にいるわね。」
 クリスみたいな人が1人はいなくては、万一のときに全滅してしまう。よほど場にそぐわない言動ならばともかく、彼女たちの提案は原則として受け入れる度量が必要だ。
 さて、私は牢の中に入る。そして……





 どうやら、この人は耳が聞こえないのか、それともクリスの言う通りこの牢に何かの罠があるのだろうか。いずれにせよ短絡的な言動は厳禁だ。以前、難聴であることを知らなかった「先輩」が難聴の「後輩」に話しかけたときに反応してもらえず、「先輩」は無視されたと勘違いし、思わず「後輩」を殴ったという話も聞く。こういう「先輩」は、相手が自分より「上」の人でも殴るのだろうか。いや「後輩」だから殴ったのだろう。そもそも立場的に「下」の人が自分の都合通りに動かないから暴力に走るなど最低の行為であり、そういったことは必ず自分に返ってくるものである。
 そうだ。聴覚の鋭いエルならば聞こえているだろう。私はエルに尋ねる。



 エルの声も聞こえない。ということは、この牢に何かの魔法がかかっていると考えるのが正しいだろう。と、牢の男は通路の方を指さしている。取り敢えず通路に出ようか。



 なぜ私の名前を。もしかして、アルベルト公爵その人か?
「隊長は、半年前、私の兄の葬儀のおり、私の護衛を務めてくれたな。」
 そう言えば、そんなことがあったような(だから、いきなりこの世界に放り込まれて半年前も何もないっつーの!)。
 ともかく、ついに本物に出会えたのだ。
 この人の話も長くなりそうで面倒くさいから、次回に続く……。



← 【第14回】へ | 【第16回】へ →


2019/09/28


直前のページに戻る

『フィンブルヴェトル物語』のトップに戻る

電源系ゲームプレイ録のトップに戻る

トップに戻る


(C)批判屋 管理人の許可なく本ホームページの内容を転載及び複写することを禁じます。