フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第16回】公爵の秘密

 アルベルト公爵の話も長いので、箇条書きで書くことにする。
  • 牢獄内で声が聞こえなかった理由は、公爵が敵にジャミング(妨害)の魔法をかけられたからである。
  • 3ヶ月前、アルベルト公爵は、既に魔族と結託していたギーゼン将軍に謀られた。
  • 現在、城にいる「アルベルト公爵」はドッペルゲンガー(即ち偽者)である。
  • ここにいる(即ち本物の)アルベルト公爵は、現在バイエルン王国が内戦状態であることを知っているが、どうすることもできない。



  •  だが、これで「アルベルト公爵」の変貌ぶりの真相が明らかになった。やはり、ギルドは真実を突き止めていた。グスタフの言っていたことは本当だったのだ。私の思っていた通り、ギルドは誇り高い組織だった。初めてギルドと交渉したとき、グスタフが「状況と金次第」と言っていた理由も今は何となくわかる。彼らはこれまで何度も騙し討ちや裏切りの目に遭ってきたのだろう。そんな環境下に身をおいたら、人をそう簡単に信用できなくなるのは当然のことだ。だが、こちらがギルドの要求を呑み、相応の戦果を挙げてからは、ギルドはこちらに対して協力的な態度に出た。そして、その抜け道が本物のアルベルト公爵の居場所につながっていた。ギルドは十分信頼に値する組織であることが判明した。



    「ドッペルゲンガーは、魔族とはいえその魔力は有限だからな。定期的にギーゼンとともに私を訪問し、一旦元の姿に戻ってから私に変身するのだ。」
     ドッペルゲンガーがジャミングのかかった牢内でも魔法が使えるほどの力を持っていることは明らかだ。だが、ソフィーの疑問は尤もだ。そして、公爵にとって怖い質問でもある。なぜなら、ドッペルゲンガーがアルベルト公爵になりすます必要がなくなったら、公爵は抹殺されることになるからだ。
     このままここにいたら、アルベルト公爵は座して死を待つようなものである。そこで、クリスが提案する。
    「ねぇ公爵、ここを出ましょうよ。」



     リーゼルの気持ちはわかる。だが、残念ながらそう簡単に事は運ばない。公爵が本物である証拠がない限り、本物のアルベルト公爵が「偽者」として処断されてしまう。そうなっては向こうの思うツボだ。



     カール王子が幼い頃、アルベルト公爵の大事にしていたペンダントが欲しいと強請(ねだ)って、アルベルト公爵がカール王子に渡したペンダントと聞く。
     それだ! カール王子に渡したペンダントをアルベルト公爵に一時的に「拝借」すれば、偽者を暴くことができるだろう。
     早速バイエルン城に戻って、カール王子に事情を説明してペンダントを持ってくることにしよう。だが、エルが不満そうな顔をしている。



     そうだった。すっかり忘れていた。フォルスト一家のアジトにいたとき、確か落盤が起きたんだ。だから、洞窟の魔法陣で回復ができなかった。
    「せめてイザール大橋が渡れればなぁ……」
     リーゼルがぼやく。



     公爵に何か考えでもあるのだろうか。
    「よし、2通書状を認(したた)めよう。一通はハスラー将軍に、もう一通は女王とフォルゲン伯爵に連名で書く。」



    「私はアレク同様左利きでね。」
     そんなことまで知っているのか(というより、私が左利きなど初めて知ったわ! 恐らく作者が左利きなのだろう)。
    「普通の右利きの人には、この左利きの“癖字”はそう簡単に真似できないのだ。それに、ある『合言葉』を唱えると、この字は私の直筆であることがすぐにわかるのだ。」
     確かに、左利きの人が描いた絵を模写するには左手で描かないといけないとか何とか。左利きの字と合言葉の二重のセキュリティー(?)によって、アルベルト公爵の字であることが分かるのだから、これで問題はないはずだ。
    「先に言っておくが、ロールシャッハ城の大臣などにこの書状を送っても、私が本物だという定義にはならないだろう。なぜなら、」
    「ロールシャッハの大臣がバカだからでしょ?」
     ソフィーが思わず口走った。
    「公爵が本物か偽者かも分からないバカ大臣に、本物の書いた手紙を送っても区別できるわけないじゃない。」
     この発言には私も一瞬背筋が凍り付いた。故国ジパングならまだしも、王国制であるロールシャッハの大臣を“バカ”呼ばわりするとはちょっと……。だが、このソフィーの歯に衣着せぬ発言が、思わぬ好展開を招いた。
    「お嬢さん。あなたの言う通りだ。民衆は、『公爵』の変貌ぶりに対して大臣が何ら手段を講じていないと思っているだろう。そして、ここにいる本物と城にいる偽者を見分ける能力が大臣にはないと思われても致し方ない。しかし、理由はそれだけではない。」
     流石は人格者のアルベルト公爵。ソフィーの発言も真摯に受け止めている。
    「ある合言葉を唱えると、私の直筆かどうかわかるという点は、城の重臣たちはみんな知っているからだ。偽者も当然それを知っていて、色々な書状を認めているらしい。」



    「だから、女王陛下と連名にする。実は、カールは別の暗号も知っているからな。だから、フォルゲン伯爵と女王陛下に見せる際は、カールにも見せるよう、君達からも伝えてくれ。」
     承知いたしました。だから、別の暗号を知っているカール王子には態(わざ)と宛てなかったわけか。これなら怪しまれることもない。
     アルベルト公爵は書状を認める。獄中にいる人が書状を認めてその書状を要職の人に渡す……ジパングで、前中納言光圀公がよく獄中で書状を認めていた場面を思わせる。
    「よし、書けた。必ずハスラー将軍とフォルゲン伯爵に届けてくれ給え。」
     承知いたしました。



     そして、我々は来た道を戻る。地下水路の敵は、もはや単なる経験値稼ぎの糧にしかならなかった。



     こうして、我々は倉庫の裏口に無事に戻ってきた。さて、次なる目的地はイザール大橋だ。




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    2019/10/22
    2019/10/24 一部修正


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