ピラミッドの謎


 悪の化身ゾウナを討伐せしめんとするワルキューレの後を追いかける主人公は、道中様々な人物に出会い、様々な戦いを経験した。ヒルダの家で出会った漁師ニスペンとともにゴブガブを倒し、ニスペンの妹コレットを救出した。また、ララッタの地下牢に閉じ込められたときには盗賊サンディに助けられた。そして、サンディと二人で西アフブルクのはずれにあるドラゴンの洞窟に入った。
 サンディの正体はララッタの王女アレクサンドラであったが、それを知ったのはドラゴンを倒した後であった。サンディの手当てをしようとしたとき、実はサンディが女性であることが判明した――サンディの胸にある、二つの柔らかいふくらみがそれを立証したのだ。アレクサンドラの身の上話によると、アレクサンドラの両親はゴブガブに殺されてしまったという。そして、アレクサンドラはゾウナを倒すことを誓ったのだった。今の彼女はもはやララッタのアレクサンドラ王女ではなく、盗賊サンディであり、主人公の親友である。
 こうして、サンディと主人公はドラゴンの洞窟を無事に脱出した。間もなく、東アフブルクの町に到着するであろう……。

 『ピラミッドの謎』は、『ワルキューレシリーズ』の第2巻です。第2巻にあたる本作品は、ドラゴンの洞窟の出口〜ピラミッドまでです。いよいよワルキューレと対面することになります。そして、悪の化身ゾウナにも出遭うことになります。
 第2巻は大きく分けると、二部構成になっています。前半が東アフブルクの街、後半がピラミッドです。2巻でも新キャラクターが登場します。
 前半で登場する新たなる3人目の仲間は、練達の戦士クラウドロングまたはゲームの達人スミシーです。戦闘面においてはクラウドが圧倒的に強いのですが、スミシーはサイコロゲームにおいて非常に有利になります。確率的には、圧倒的にスミシーと仲間になる方が多いです。クラウドと仲間になるには、リオン老人の店はあきらめなくてはならず、しかもドラゴンスレイヤーを持っていると仲間にはなれません。
 東アフブルクで過ごす夜に3人目の仲間は襲撃され、瀕死の重傷を負います。ここで、再びサンディと二人きりになります。
 ピラミッドへ向かう途中、6人組に襲撃されますが、ここで謎の助人が二人登場します。一人は第一巻目にも登場した漁師ニスペンです。そして、もう一人の助人は魔法戦士アテナです。アテナは戦闘能力こそ低いのですが、クリティカルヒットやテレポートの魔法など、特殊能力に長けたキャラクターです。ピラミッドへは主人公、サンディ、ニスペン、そしてアテナの4人で向かうことになります。
 ピラミッドの内部は、東アフブルクの街で主人公一行が討伐したヘヴンズ・シットの副首領サウドの兄アジズ一味のアジトとなっています。
 ここで、第一巻とのつながりについて調べていくことにしましょう。
 ピラミッドの内部(100番→188番)で、第一巻『迷宮のドラゴン』に飛ばされます。ここで、やっと主人公の「右頬の傷跡」の意味がわかります。この傷跡は「第一巻を既にクリアしている」というフラグだったのです。ということは『迷宮のドラゴン』と『ピラミッドの謎』を両方とも揃えた状態で『迷宮のドラゴン』からプレイすると、まだ出会ってもいないサンディたちと合流するというバグが発生することにもなります!また『迷宮のドラゴン』の87番には、本書の200番及び287番から飛ぶことになりますが、これらの「巻を越えて」の飛び先もなかなかのものだと思います(面倒という見方もありますが)。

 この巻の部分部分における私の個人的な感想を述べていきます。
 このゲームブックだけではないのですが、同一パラグラフに矛盾した表現があるのが気になります。例えば、37番及び165番のサイコロゲームにおいて「いったん親になったら、自分からおりることはできない」と書いてあるくせに、直後の文で「ゲームをやめたくなったら」とあります。自分から親をおりることはできないルールですから、ゲームを自分からやめることはできないわけです。また、203番においては、入院費が足りないということはありえません。なぜなら、東アフブルクの夜の襲撃者を倒したときに手に入る金貨40枚で十分足りるからです。
 また、東アフブルクの繁華街で買い物をすると、ピラミッド内でエクスペリエンスドレインの魔法を防ぐ手段を失うことになります。エクスペリエンスドレインの魔法は原体力ポイントまで失うことになり、かなりきつい魔法です。エクスペリエンスドレインを防ぐミラージュシールドの手がかりを知っているのはクライアンであり、クライアンと話をするには黒装束の男たちの襲撃を解決して東アフブルクの繁華街に戻った直後に闘技場に赴かなくてはなりません。闘技場に赴くと、もう装備を整えることはできません。デザートの宿にはオレンジポーションがなく、しかも宿泊しても知力ポイントだけは回復しません。ピラミッド内では魔法に頼る場面が多く、せめてオレンジポーションくらいはデザートの宿においてほしかったものです。
 それから、ピラミッドに夜行くことはできなかったものでしょうか。砂漠の夜は日本の冬並みに寒いものの、砂漠用のマントで寒さをある程度防げないものでしょうか。何も暑い昼日中に砂漠を横断しなくても…と思ったのは私だけではないはずです。
 そして、何といっても私個人的に一番不満に思っているのが287番です。

「魅力ポイントが低い=正義の心がなさすぎる」

という図式は成立しません!それに「正義の心がなさ過ぎる」という言葉は、仮にも自分の命の恩人に対する物言いではないからです。
 ともあれ、第2巻は人と人との出会いが一番激しい巻というのは確かです。いよいよ最終巻へ突入となります。重傷を負ったクラウドまたはスミシーは一体どうなるのか、その答えは、第3巻『時の鍵の伝説』で明らかになります。

 『迷宮のドラゴン』と『ピラミッドの謎』の決定的な時期の違いは、昭和と平成で分けられるということです。そして、当時の世相を反映しているのが130番です。マントの価格について消費税という言葉を使っているのが特徴です。

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2008/08/16


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