迷宮のドラゴン


 両親の反対を押し切り、ワルキューレと共に闘おうと決意した主人公は、翌朝早く部屋を抜け出した。ここは、住み慣れたマベルラの町の大通り。あたりはまだ薄暗い。昼間の喧騒とは大違いで、今はひっそり閑としている。まだ誰もいないが、かえって好都合かもしれない。その方が、知り合いに会って引き止められる心配がないからだ。
 ふと主人公は思った。これから町の外へ出て行くというのに、武器が何もないではないか。今持っている装備だけでは心もとない。主人公は二つの考えが頭に浮かんだ。まずは、武器屋に行くこと、それから、友達のヤッシムの家に行くことだ。ヤッシムも主人公と同じく、勇者の仲間入りをしたいといつも言っていた。
 こうして、主人公は町を出る前に武器を調達する算段を講じることになった……。

 『迷宮のドラゴン』は、『ワルキューレシリーズ』の第一巻です。この作品のみ本田成二・木越郁子両氏共著となっています。
 第1巻にあたる本作品は、主人公の故郷マベルラの街〜西アフブルクにあるドラゴンの洞窟までです。まさか、第1巻目でいきなり目的のワルキューレやゾウナに出会うという展開にはならず、第1巻目ではワルキューレやゾウナの“噂”のみとなります。その代わり、共に戦ってくれる魅力的な仲間やゾウナの手下の中でも中堅格のボスが登場します。
 最初、マベルラの町を出発する前に武器を手に入れる必要があります。朝一番で武器屋をたたき起こすと半額で買い物ができます。それでもショートソードしか手に入りませんが、それが最善の手段です(私に言わせれば、最初から買うことのできないロングソードを表示している54番、247番、341番は非常に問題のある部分ということになります)。最初からロングソードを装備するためには裏口から忍び込み、武器屋の主人を殺すしかありませんが、これは仮にも世界を救おうとする者のすることではありません。盗んだ武具を所持しているとララッタの街や西アフブルクの街でよくない目に遭いますし、第一故郷の町で殺人罪を犯したとあっては英雄として凱旋することができなくなります。
 マベルラを出発した直後は、まだ何の魔法も知りません。旅先でいろいろな魔法を知る機会も出てくると思います。これも、英雄としての成長のひとつといえるでしょう。最初に覚える魔法は、世捨て人の老人から教わる「火の玉の術」です。1巻で覚える主な魔法は「火の玉の術」「薬の術」そして「透視の術」です。しかし、エンマコンダの洞窟(ゾーキス湖)からは、2巻以降で出てくる「ガラス(透明)の術」「星笛の術」「稲妻の術」といった強力な術の場合分けも出てきます(これについては『ピラミッドの謎』で詳しく述べることにします)。
 ゾーキス湖を通過した後、共に戦ってくれる仲間が登場します。まずは、大男の漁師ニスペンです。ニスペンは、ゾウナの手下ゴブガブにさらわれた妹コレットを助け出すため、ゴブガブの要塞へ出発します。「おたずね者」のニスペンを捕まえた、という口実は正義ポイント(「魅力」ポイントのことです)の低さにかかっています。ここでは、いかに悪人面に見えるかどうかが鍵となっています。
 この作品の大きな特徴としては「傷跡」のフラグを立てていることです。この「傷跡」は、原作でタッタたちに悩ませられていた村の少年にも出てきていますが、この「傷跡」のフラグは個人的にはあまり好きではありません。特に「右頬の傷跡」は、ララッタの街を出るときに必ずつくものであり、たとえ女性でなくても「顔に傷」という印象はお世辞にも好印象を与えるとはいえません。
 かんむり岬へ行く途中、ララッタの街で兵士たちに捕まったところを助けてくれたサンディと出会います。375番でなぜサンディが頬を赤くしたか、これも伏線になっています。サンディは魅力的な人物なのですが、態度に一貫性がない部分があるのも事実です。たとえば、242番も342番もけがをしている人物が登場しますが、242番の方は攻撃しようとするとサンディが止めるのに対し、342番はサンディは止めません。サンディの行動に一貫性を持たせないのは、人物設定が稚拙としか言いようがありません。サンディの正体はドラゴンを倒してから判明します。

 ところで、『迷宮のドラゴン』からは飛び先のない項目番号がたった1つだけあります。それは87番です。これは、第2巻『ピラミッドの謎』をプレイしたときにわかります。もしかすると、第1巻と第2巻は、作成当時は同時進行だったのかも知れません。

| 『ピラミッドの謎』 →

2008/07/07


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