暗黒教団の陰謀(プレイ日記)


【第1回】 叔父の依頼

〔STATUS(現在の値/原点)
 生命力 … 27/27
 気力 … 17/17
 知性 … 15
 経験 … 0
 狂気 … 1
 所持金 … 20ドル
 手に入れたもの … なし
 メモ … なし

〔1〜〕
 私は叔父の家を訪れた。マサチューセッツ州アーカムのミスカトニック大学を退職した叔父は、アーカムのはずれに立つ屋敷で、あいかわらず研究を続けているが、このところ体調がおもわしくなく、私は叔父に突然呼び出されたのだった。叔父の屋敷に入った私は、昔から叔父につかえている執事によって、おびただしい蔵書がひしめく書斎に通された。見ると、叔父は車椅子に坐り、なんともやつれた姿をしている。叔父に会うのは久しぶりだが、それにしても、なんというやつれようか。驚いている私を叔父は手招きすると、大きな机に向かい合う椅子に私を座らせ、思いもかけないことを話しはじめた。
「おまえもミスカトニック大学の附属図書館に勤めているから、ある程度のことは知っているだろうが、この世には、普通の者が想像することもできない、言語に絶する邪悪な存在がひそんでいるのだ」
 叔父はそう言って、私が漠然とした知識をもつ、<旧支配者>の秘密について話し続けた。叔父の話によると、<旧支配者>の復活のときは迫っており、徹底的な手段が講じられないかぎり、<旧支配者>による地球の完全な支配と、人類の絶滅は避けられないことだという。核兵器をもってしても、時間と空間を超越する<旧支配者>には、何の効果もあげられないのだ。(非核三原則を謳っている祖国ジパングではどのみち無理だろうが)
「<旧支配者>の復活をくいとめるには、<旧支配者>についての知識を完全なものにしなければならない。ミスカトニック大学で厳重に保管されている、『ネクロノミコン』といった魔道書にしても、秘密のすべてが書きとめられているわけではないからな。しかしわしは、長年にわたって調査と研究を続けた結果、すべての鍵が<輝くトラペゾヘドロン>にあることを知った。<輝くトラペゾヘドロン>を手にいれることさえできれば、<旧支配者>を未来永劫、いまと同じような永遠の眠りにつかせておくことができるかもしれん。そしてわしはついに、<輝くトラペゾヘドロン>が、ルルイエの深きものどもによって見つけだされ、このマサチューセッツの某所に保管されているらしいことをつきとめた。しかしわしは、おまえが見てもわかるように、もう自分で動き回ることができない。おまえだけには言っておくが、わしは医者から癌だと診断されているのだ。だが、これは癌ではない。このわしの症状こそ、<旧支配者>に立ち向かおうとする者にふりかかる、忌まわしい<旧支配者>の呪いに他ならない。<旧支配者>の秘密にせまり、<旧支配者>の復活を阻止しようとした者には、すべて<旧支配者>の呪いがふりかかってしまう。ラヴクラフトにしても、ダーレスにしても、癌で死んだと言われているが、実際はわしと同様、<旧支配者>の呪いがふりかかって、不治の病に精神と肉体がむしばまれてしまったのだ。ああ、然るべき用心をおこたったことが悔やまれる。わしの生命はもう長くはないだろう。だからわしの願いを聞いてはくれんか。どうかわしの調査を引き継いで、何としてでも<輝くトラペゾヘドロン>を見つけ出してくれ。」
 叔父はそれだけ言うと、ひどく咳き込んで、車椅子にぐったりもたれかかってしまった。
 私は叔父の話に呆然としてしまう。なんという途轍もない話だろうか。この地球に人類が誕生するよりも早く存在して、温厚な<旧神>を相手に宇宙の覇権を争ったあげく、<旧神>の激怒に触れ、さまざまな場所に追放あるいは幽閉された、<旧支配者>が復活した場合、再び大宇宙の支配権をめぐって、恐るべき闘いが行われることになる。そうなったとき、悠久の歳月にわたる追放と幽閉のうちに、以前とは比較にならないほど力をたくわえている<旧支配者>は、地球を根城に全宇宙をゆるがしかねない最終的な全面闘争を起こすだろうから、人類などひとたまりもなく絶滅させられてしまう。
 しかし叔父の話によれば、<旧支配者>についての知識を完全なものにすれば、間近にせまった<旧支配者>の復活を食い止めることができるのだ。そのためには、魔力をもつ伝説の<輝くトラペゾヘドロン>を手に入れなければならない。しかし物理法則を超越する<旧支配者>を相手に、いったい何ができるというのだろう。叔父が言うように、<輝くトラペゾヘドロン>にはそれだけのちからがあるのだろうか。
 にわかに信じられない話だったが、どうしよう。確かに、叔父は研究のし過ぎで常軌を逸し、妄想に取り憑かれているようにも見える。だが、このような荒唐無稽な話が作り話とは到底思えない。それに、ここで「はい」と返答しなければ、このプレイ日記は早々終わってしまうことになるし…。
 よし、(仕方がないから)叔父の調査を引き継ごう。私は叔父にそう返答した。叔父は心なしか顔を輝かせたようだった。叔父は車椅子から体を乗り出すようにして言った。
「よく言ってくれた。わしが突き止めたことをこれから話すから、それをよく頭に叩き込んで、調査を進めてくれ。そもそもわしがこの調査を始めたのは、<星の智慧派>がインスマスで密かに活動を再開しているという噂を耳にしたからなのだ。<星の智慧派>はかつて<輝くトラペゾヘドロン>を手に入れ、フェラデル・ヒルの教会を巣窟にして、恐ろしい生贄を使う暗黒の儀式を執り行っていた、邪悪な宗派のことだ。かなり昔に行方をくらましていたが、どうやら命脈を保っていたらしい。やつらの目的は、<輝くトラペゾヘドロン>を使って、<旧支配者>の復活を助けることにある。」
 叔父はそう言って、最近のインスマスの動向について話し始めた。
 なんでも、長い間操業を停止していたインスマスのマーシュ精錬所に、新しい経営者がのりこんで、数ヶ月前から活動を再開し、従業員を募集しているのだが、そうして集まった従業員のなかで行方不明になった者が多く、暗澹たる噂が口にされるようになっているという。インスマス最大の工場であるマーシュ精錬所は、昔から兎角不吉な噂の絶えないところだった。およそ60年前にインスマスの住民の多くが逮捕され、町から見える<悪魔の暗礁>沖の深い海溝に潜水艦から魚雷が発射されて以来、インスマスは恐怖と狂気に取り憑かれた土地なのだ。
 このところ、異様な事件はなりを潜めているが、それでもなお、俗にインスマス面と呼ばれる、特異な容貌の住民が頻繁に見かけられ、閉鎖されていたダゴン秘密教団の会館にも、夜に灯りがともるようになった。そしてダゴン秘密教団の会館の玄関に、髑髏をかたどった紋章が取り付けられたことから、悪名高い暗黒宗派、<星の智慧派>との関係が取り沙汰されるようになっている。
 <星の智慧派>はフェラデル・ヒルの教会を巣窟にしていたころ、人間を生贄にする血の儀式を執り行い、<輝くトラペゾヘドロン>を使って、<闇をさまようもの>を呼び出しては生贄と引き換えに忌まわしい知識を得て、<旧支配者>復活のときを早めようとしていたのだった。<旧支配者>が復活したとき、<旧支配者>直属の配下として地球を支配し、邪悪な暗黒帝国を築き上げるために。
「つまり、ダゴン秘密教団と<星の智慧派>が結びついているのだ。ダゴン秘密教団はルルイエの深きものどもと密接な関係をもっている。やつらの目的は、大いなるクトゥルーを復活させて、地球を征服することにある。この点で、<旧支配者>すべての復活を目指す<星の智慧派>と、目的は微妙に違っているが、ダゴン秘密教団と<星の智慧派>が手を結んだことからは、ただひとつの結論しか導き出せない。ルルイエの深きものどもが<輝くトラペゾヘドロン>を海底から引き上げ、それをダゴン秘密教団に渡したのだろう。クトゥルーを復活させる方法を知るためにな。しかしダゴン秘密教団は<輝くトラペゾヘドロン>の正確な使い方が分からず、ついに妥協をして、<輝くトラペゾヘドロン>の扱いに慣れている<星の智慧派>と結託したわけだ。行方不明になった者たちは恐ろしい生贄にされ、ダゴン秘密教団と<星の智慧派>は力を合わせ、<旧支配者>を復活させる計画を推し進めている。」
 叔父はそこまで言ったところで、激しく咳込み、苦痛に満ちた顔をした。屋敷の外はもうすっかり闇に包まれている。
「今日はここまでにしよう。いつもの部屋で休みなさい。調査に必要なことは明日教える。」
 長いあいだしゃべり続けたことで、叔父は疲れきってしまったのだろう(長すぎるわ!)。私は書斎を離れ、二階に向かった。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 生命力 … 27/27
 気力 … 17/17
 知性 … 15
 経験 … 0
 狂気 … 1
 所持金 … 20ドル
 手に入れたもの … なし
 メモ … なし
 (Save Number:183→347)

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2015/12/01


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