奈落の帝王(プレイ日記)


【第20回】 帝国への入口

 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 … 10/18
 運点 …  10/10
 時間表 … 13
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得、色の変わる傷跡
 金貨 … 4
 食料 … 4
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)、紋章のついたロケット、狐の手袋、ジェーラの葉

〔89〜〕
 川は山腹のトンネルに続き、筏は暗闇へと流されていく。幾度となく水しぶきがかかり、ずぶ濡れになった。しばらくして川筋が曲がり、筏は岩棚の上に打ち上げられる。その表面は水に洗われて滑らかになっていた。辺りを見回す。今にも消えそうな松明が近くの岩の割れ目に突っ込んであり、その明かりを頼りに曲がり角を曲がってみると、川はアーチの下を流れていくのがわかった。アーチには鉄の柵がつけられ行く手を阻んでいる。背後の岩棚からは、壁の明かりがちらちらと瞬く暗いトンネルが続いている。もう一度水に入って柵を調べようとも思ったが、ただでさえずぶ濡れでくたくたなのに、もうこれ以上濡れるのはウンザリだ。トンネルを調べることにしよう。周囲に気を配りながら道を進む。やがて、燃え立つ火の壁が行く手をすっかり塞いでいるところへ出た。川に戻って柵を調べるか、それとも火の中に飛び込むか。火は強そうだが、ぬれねずみの今は逆にちょうど良いかも知れない。今さら引き返す気もないし、ここは思い切って火の中に飛び込むことにしよう。
 火の壁は単なる幻影だった。安心する一方、少しは火に当たりたかったというのも事実だ。だいぶ服も乾いてきたが、このときが一番寒い。何しろ、水が水蒸気になるときに皮膚から熱を奪うのだから。寒中水泳で最も寒いのは、水に入ったときではなく水から出たときなのだ。
 転がり込んだのは狭苦しい部屋で、私は4人の銀色の肌をしたヒューマノイドと出くわした。彼らはマークロンといい、完全武装して、冒険に必要な装備を持っている。飛び込んだとき、彼らのうち3人は小さな鉄張りの扉を相手に奮闘しており、4人目がそばに立っていた。何をしているのだろう?ここは彼らの動きを見守ることにする。マークロン達は私が入ってきたことに誰一人気づいていない。どうやら3人が扉を閉め、4人目が呪文を唱えているらしい。4人目の指先が燃え立つように輝いている。やがて、彼がこちらに気づいて呪文をやめた。顔にうろたえた表情が浮かんでいる。それもそうだろう。マークロンにしてみれば、まさかあの火の壁を越えてくる者がいるとは思わなかったに違いない。
「イレンチンヤ、ピプヘン!」
 声が私の頭の中に聞こえる。マークロンは私に気づいても、こちらに対して呪文を向けることはしなかった。マークロン達の目的はどうやら扉の向こうにあるようだ。ここは、他の3人のマークロンを手伝ってみることにしよう。私は即座に扉の方に走った。3人のマークロンに加わり扉を押す。やがて4人目のマークロンが大声で言った。
「イスベック、ピンチャ!」
 彼の仲間が扉から飛びのいたので私も後に続いた。扉がばたんと開いて、ずんぐりした爬虫類型の生き物であるココモコアが部屋になだれ込んできた。次の瞬間、一筋の閃光と猛烈な熱線が走った。あまりのまぶしさに思わず目を閉じる。次に目を開けたときには、床には黒焦げになったココモコアが散らばっていた。マークロンはさっと立ち上がって扉を抜けた。4人目の魔術師マークロンも私に丁寧にお辞儀をしてから、他の仲間のあとに続いた。扉の向こうは大きなトンネルになっていた。と、先ほどのマークロンたちの甲高い悲鳴が聞こえてきた。すぐにマークロンたちが引き返してきた。私は彼らをよけて、そろそろと先に進んだ。
 洞窟は天井が高く、そこから細かい砂が霧のように降ってくる。床の真ん中は砂で覆われ、微かに揺れていた。砂の上には信じられないような財宝が無造作に置かれている――私が今まで見たこともないような魔法の宝の山だ。砂が揺れるたびに、宝が沈んでいく。渓谷を渡る風のような、何者かが吹く微かな口笛が私の耳に届いてきた。不気味な雰囲気から察するに、この部屋こそがカデューサスの言っていた奈落の帝国の入口に違いない……。ここで、《時間表》のます目を調べる(これまでにチェックしたます目は13だ)。
 不意にしゃがれ声がした。辺りを見まわすと、緑色のねばねばに覆われた人間の顔が見えた。その人物は言う。
「気をつけなさい!メジェム−ノソスが戻ってくる。私ことエンシメシスはメジェム−ノソスを倒すことに失敗した。」
 エンシメシス…?ということは、この人物こそが魔法使いエンシメシスか。ついに私はエンシメシスに逢うことができた。だが、下手に近づけば、私までも緑色のねばねばに覆われてしまう。私は距離を置いて話しかけた。
「あなたが魔法使いのエンシメシス殿ですね。私は<批判屋>と申します。」
 エンシメシスに、私が今ここにいる理由を説明する。メマのこと、黒い軍隊のこと、そして笑わぬ将軍を倒したことなどを順番に話した。エンシメシスは、緑色のねばねばに苦しみながらも、私の話を真剣に聞いていた。
「<批判屋>殿……あなたはメマに会われたのですな。あの子は本当にいい子でして…それで、メマは今どこに…?」
 エンシメシスは愛弟子の安否を気遣う。
「心配いりません。メマは無事に両親に送り届けましたよ。黒い軍隊が彼女の村を襲う前に、メマをはじめ村人全員を避難させました。」
「そうですか…それは何より……」
 そうだ。エンシメシスに聞くことがあったのではないか。3本の瓶と狐の手袋についてだ。
「エンシメシス殿。大変失礼とは思いながらも、あなたの家から3本の瓶を持ち出してしまいました。グルシュ、アラール、ザザズの3本の瓶です。メマに聞いても分かりませんでした。」
「ああ、その瓶か……その瓶はよく憶えている。私が薬品の調合が失敗続きで多少苛立っていたとき、メマがその3本の瓶を手にとっていた。あの子にしてみればただ疑問に思っていただけなのに、私はメマが危ないことをしていると勘違いして、思わずメマの頬をぶってしまった。実験の失敗続きで弟子に八つ当たりをするなんて、最低の行為だ。メマは内心私のことをひどく憎んでいることだろう。私は師匠と名乗る資格はない……。」
「いや、エンシメシス殿、それは違う。メマはそのときのことも私に話してくれた。そのとき彼女は『普段は優しいエンシメシス先生がこんなに厳しいのは命に関わることだから』と言っていた。あの子の口調にあなたへの憎しみは全く感じられなかった。メマはあなたのことを心の底から尊敬していたんだよ。」
「そうか、命に関わるか……偉そうなことを言っていた張本人がこのザマでは、メマにあわせる顔がない…。で、話は何でしたかな……おお、そうか、3本の瓶についてでしたな。まず、グルシュは……」
 そのとき、大きな足音が聞こえてきた。
「いかん!奴が戻ってくる!!足元にある呼び子を取って逃げなさい。メジェム−ノソスの攻撃を防ぐのに役立つでしょう。」
 ここまで来て逃げるだと?まさか!私はエンシメシスの意に反し、化け物と対決することにした。
 私が床から小さな銀の呼び子を拾っていると、化け物が微かに光る靄の中に現れ、急ぎ足でこちらに近づいてきた。悪臭を放つ腐敗した体は見ているだけで目が痛くなってくる。一本の鉤爪がねばねばする甲殻に当たり、くり返し音を立て、動くたびに吐き気に襲われた。私は呼び子を強く吹いた。メジェム−ノソスは一瞬怯むが、まだゆっくり進んでくる。こうなったら、呼び子を吹きながら戦うのみだ。エンシメシスほどの力を持つ人物でも歯が立たなかったメジェム−ノソスだが、私には考えがあった。エンシメシスの敗因は、彼の魔法が化け物に通用しなかったことだろう。ならば愛用のファングセイン鋼の剣で切り刻むだけの話だ!
 〔メジェム−ノソス〕 技術点 10     体力点 10
 〔批判屋〕      技術点 10(+1)  体力点 10
[戦闘ラウンド(青字DDの値)]
[1R] ×〔メジェム−ノソス〕10+=17 < 20=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔メジェム−ノソス〕体力点−2=8
[2R] ×〔メジェム−ノソス〕10+=16 < 20=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔メジェム−ノソス〕体力点−2=6
[3R] ×〔メジェム−ノソス〕10+=16 > 19=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔メジェム−ノソス〕体力点−2=4
[4R] △〔メジェム−ノソス〕10+=19 = 19=11+〔批判屋〕△ (相殺)
[5R] ○〔メジェム−ノソス〕10+=18 > 16=11+〔批判屋〕× ⇒ 〔批判屋〕体力点−2=8
[6R] ×〔メジェム−ノソス〕10+=19 < 20=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔メジェム−ノソス〕体力点−2=2
[7R] ○〔メジェム−ノソス〕10+=15 > 14=11+〔批判屋〕× ⇒ 〔批判屋〕体力点−2=6
[8R] ×〔メジェム−ノソス〕10+=14 < 15=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔メジェム−ノソス〕体力点−2=0
 メジェム−ノソスはどさりと崩折れた。すぐさまエンシメシスのもとに駆けつける。
「よくぞあの化け物を倒してくださいました。だが、私はもう助からない。この砂は奈落の帝国に通じている。メジェム−ノソスを倒した貴殿ならば、奈落へ行っても大丈夫だろう。それと<批判屋>殿、もし貴殿がメマに再び会うことがあったらメマに伝えてはくださらぬか。私の家をメマに譲ると。そして、例の本を開けと。本人に言えばわかる。」
「心得ました。必ずやメマに今の2つのことを伝えましょう。」
「ありがとう、<批判屋>殿。メマに憎まれてはいないことを知った今、もう思い残すことはない……どうか貴殿が無事でありますように…そして……メマのことを……たの……む……」
 偉大なる魔法使いはそこまで言うと息を引き取った。緑色のねばねばによる体力の消耗に耐え切れなかったのだ。志半ばにして斃れたエンシメシスのためにも、私は任務を続けなくてはならない。私は覚悟を決めて、部屋の中央の砂に入る。
 砂の方へ進み出ると、足が強く引っ張られるのがわかった。更に進むと、膝まで砂に埋もれた。数秒後には腰まで埋もれて足を動かすことができなくなる。流砂にはまった心境だ。頭が砂に隠れる直前に大きく息を吸い込み、息を止めた。どうかこれが一巻の終わりになりませんように……。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは太い赤字
 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 …  /18
 運点 …  10/10
 時間表 … 13
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得、色の変わる傷跡
 金貨 … 4
 食料 … 4
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)、紋章のついたロケット、狐の手袋、ジェーラの葉、銀の呼び子
 (Save Number:263→383)

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2013/11/24


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