奈落の帝王(プレイ日記)


【第19回】 笑わぬ将軍

 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 … 10/18
 運点 …  10/10
 時間表 … 13
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得、色の変わる傷跡
 金貨 … 4
 食料 … 4
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)、紋章のついたロケット、狐の手袋、ジェーラの葉

〔235〜〕
 私は穴居人の洞窟を後にした。馬に乗り、軍隊の方へ向かう。やがて、先ほどの輿が見えてきた。ここで馬を降り、虚ろな目をした軍隊の方へ、できるだけ勇敢に向かって行った。本当は少し怖い。何しろ、これだけの人数に一斉に襲いかかられたら間違いなく私はボロ切れのようにされてしまうのだから。しかし、やるしかない。
 黒い軍隊も私に気づいたようだ。数人が担いでいた輿が下ろされ、中から贅沢な身なりをした男が現れた。顔には深い皺が刻まれ、こちらの心まで見透かさんばかりの強力な視線を感じた。その目を見ていると恐怖のあまり血が凍りつきそうになる。人の群れはこちらに向かっては来ないが、男が静かに、落ち着いた態度で彼らに前進するよう命じた。男が言う。
「よくも、私の翼ある召使いたちを殺してくれたな。」
 男の目は憎悪に燃えていた。
「ああ、殺してやったよ。一匹残らずな。礼ぐらい言って欲しいもんだな。」
 わざとせせら笑う。心の中では恐怖心でいっぱいになりながらも、努めて平静を装った。
「貴様の望み通り、たっぷりとお返しをしてやる。」
 この男こそが黒い軍隊の元兇、笑わぬ将軍である。まさにカラメールの運命はこの私の手にかかっているのだ。さて、どうするか?どうせ普通に攻撃しても勝ち目はない。さっきの軽口もほんの空元気であることを見抜かれているに違いない。ならば《ハエ刺し》だ。笑わぬ将軍に気づかれないように……私の剣は将軍に向けて稲妻のように走るが、相手の動きは速すぎた。剣をすばやく抜いて、ファングセイン鋼の剣を地面にたたき落としてしまう。
「この技を知っているのはお前だけではないのだ。」
 何ぃ〜っ。もはや《ハエ刺し》も効かないのか。将軍は、剣をこちらめがけて投げつけた。私によける暇はなかった。剣が私の胸を刺し抜く…………しかし、ここで将軍に思わぬ誤算が生じた。将軍の剣は私の胸ポケットに入っていた謎かけ盗賊の瓶に当たったのだ。将軍の剣が瓶に当たった拍子に瓶の栓が抜け、中から何かが出てきた。予想していたのは液体の類だったが、私の予想はまた裏切られることになった。
「ここでお笑いを一席。」
 へ?何これ?この任務を始めた最初の頃にもらった“謎かけ盗賊の瓶”だが、中身も本当に謎である。故国ジパングの“ラクゴ”のネタが入っているとは…。
「寿限無寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末雲来末風来末 食う寝る処に住む処 やぶら柑子のぶら柑子 パイポパイポ パイポのシューリンガイ シューリンガイのグーリンダイ グーリンダイのポンポコナア ポンポコナアの長久命 長久命の長助」
 しばらくの間、私はポカーンと口を開けていた。まさしく馬鹿面と呼ぶにふさわしい姿だった。ふと我に返る。こんな場違いなものが戦闘の役に立つものか。私は謎かけ盗賊の瓶に再び栓をしようとした。しかし、私の近くから笑い声が聞こえてきた。
「グヒヒヒヒヒヒィィィ〜〜…!!やめろ、それだけはやめてくれ!ガッハギッヒグッフゲッヘゴッホ………」
 なんと、さっきまであれ程厳(いかめ)しかった軍の指揮官はどうすることもできず、狂ったように笑っている。その間にも、謎かけ盗賊の瓶からは声が漏れていた。
「お餅って、何でカビが生えるんですか?」「馬鹿野郎ぉぉ、早く喰わねぇぇからだ。」
「『向かいの空き地に囲いが出来た。へえええぇぇぇ〜。』やってみな。」「向かいの空き地に囲いが出来た。メェェェ〜〜。」「誰が山羊をやれと言った。今年(2013年)は巳年だ。」
「ぎゃはははは〜〜。もうやめでぐれぇぇ〜〜…!」
 笑わぬ将軍はひきつけを起こしたように悶え苦しんでいる。今だ!私はもう一度《ハエ刺し》を試みた。将軍の剣を投げ返す。今度は将軍に狙いをつけるのは容易だった。男は笑いに身悶えしているし、剣で叩き落とそうにも、その肝腎の剣が将軍目がけて飛んでいるのだから。
「その技を…グヒヒ…知っているのは……ゲハハ……お前だけでは……グフフ………ないと言ったであろうが………グフッ!!」
 将軍の剣は持ち主の腹を貫通し、倒れながらもまだ笑っている……。私は将軍に歩み寄り、愛用の剣を取り戻した。
 将軍が地面に崩折れると、その体は陶器で出来ていたかのようにばらばらに砕け散った。破片の中から一片の黒い雲がわき上がり、ぐるぐると渦を巻いて、今しがた殺したばかりの将軍の姿になった。自信たっぷりに笑い、こちらへ進んでくる。男の腕が首に回され、私は地面から持ち上げられる。目だけが鋭い、ぼんやりした煙のような顔が私に近づく。その顔が挑戦的に言う。
「私はバイソス、奈落の帝王だ。地上での殻は破壊されたが、それで死ぬような私ではない。カラメールの街は内部から奪われており、なお私のものだ。おまえが勝利を得ることはありえない。この連中の魂は虜にしてある。奈落に永久に囚われの身となるのだ!」
 私は黙って謎かけ盗賊の瓶を煙に近づける。
「ハナ●ソの話をそっとハナク●う!」 (←このネタが分かる方は相当なマニアです)
「ええい、やめい!その忌々しい瓶はもはやただのガラスの塊に過ぎん!」
 煙は謎かけ盗賊の瓶を叩き落とした。どうやらこの煙には謎かけ盗賊の瓶は通用しないようだ。流石は奈落の帝王……などと感心しているうちに、煙のような体が消え、私は地面に落ちる。周りを見まわすと、私を取り囲んでいた兵士たちが虚ろな目をしてぼんやりと動きもせず立っていた。とりあえず罪もない人々と戦うことだけは回避できたようだが、しかし、まだ彼らを救ったことにはならない。
 これからどうしよう。私は今後どうするかを考えながら馬に戻る。
<批判屋>殿…<批判屋>殿…<批判屋>殿…<批判屋>殿!
 何だ何だ?振り返って見ると……蛇だった。珍しい蛇だなあ……。いくら今年(2013年)が巳年だからって、しゃべる蛇というのも珍しいぞ。
「お忘れですか?カデューサスです。」
「カデューサス?……ああ、アレセア婆…いや、アレセアお姉さまの使いか。」
「バイソスは奈落へ落ち延びました。この人たちを助けたいのでしたら、あなたがバイソスを追わなければなりません。あなたの先を行くエンシメシス殿は失敗してしまいました。」
「なぬ?エンシメシスが?それは本当か!」
 私は無意識にカデューサスの首を絞め上げていた。
「ぐ…ぐるじ〜い……本当ですとも。この手を離して…。」
「あ、ごめん。」
 カデューサスの言葉で我に返り、蛇の首から手を離した。何だかこの場面、前にもあった気がするなあ……。
「この谷川は地下へ流れこんで、奈落の帝国の入口にあたる洞窟へと通じています。さあ、急いで、時間を無駄にしてはいけません。」
 蛇はすべるようにして姿を消した。私は川へ急ぐ。間もなく私は腐りかけた丸太で筏を造った。馬には、これまでの状況を書きつけたメモをカラメールまで届けてもらうことにしよう。黒い軍団はこれ以上増えないだろうし、カラメールが陥落していなければ権力者の誰かが私の書きつけを読むことだろう。それが狙いだ。私は馬の鞍に書きつけをくくりつけ、手綱を引いた。これでよし。無人の馬だから、半日あればカラメールにたどり着くことだろう。
 馬がカラメールへ駆けて行くのを見届けた後、私は筏に乗り、急流を下った。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは太い赤字
 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 … 10/18
 運点 …  10/10
 時間表 … 13
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得、色の変わる傷跡
 金貨 … 4
 食料 … 4
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)、紋章のついたロケット、狐の手袋、ジェーラの葉
 (Save Number:238→89)

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2013/11/16


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