奈落の帝王(プレイ日記)


【第14回】 変幻の森

 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 … 13/18
 運点 … 10/10
 時間表 … 11
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得、色の変わる傷跡
 金貨 … 4
 食料 … 5
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)、紋章のついたロケット

〔183〜〕
 私はすぐさま馬で、街を出発する。この運命を決する数日前に通った同じ道を東へ向かう。貴族達の手前、任務を続けるとは言ったものの、実際にやれることはもう限られているんだよなあ。《時間表》のますにチェック。ふと、数日前の出来事が脳裡をよぎった。エンシメシスだ!エンシメシスを探せばいいんだ!確かメマの話によると、エンシメシスは北の山脈の変幻の森に住む賢人アレセアの指示を仰ぐため、危険な旅に出たという(第5回参照)。よし、次の行き先は北の山脈だ。
 私は北へ向かって山に入り、風雪にさらされて白くなった、針金のような草の間を注意して進んでいった。ここには道はなく、穴や轍は草に隠れている。案内や標識がなければ正しい方向へ進んでいるかどうかわからないので、私は私自身の本能を信じ、常に太陽を左にして進むことにした。やがて私は山の頂上に立って、陰気な下界を見下ろした。草はまばらで、不毛の平原がほとんど地平線まで続いているのを見てがっかりする。そのとき、はるかかなた平原の真ん中あたりに何かが見つかった。目を細め、じっとその点を見つめる――おそらく、小屋か何かだろう。私は馬に拍車をかけて、斜面を下り、数時間後、平原の端に着いた。困ったことに、風が強まっている。草がなければ土は乾き切っているから、砂が舞い上がって視界が狭まるうえ、砂粒が顔に当たっていたい思いをするだろう。馬が怯えて後ろ脚で立ち、私は鞍から転げ落ちて、鐙にかけていた右足をひねる。この冒険初の運だめしである。DD<運点で吉である。DDは…3+4=7<10でと出た(運点:10→)。
 落馬して痛い目に遭うが、何とか両手で鐙をつかんで引っ張り、興奮状態の馬を宥(なだ)めた。手綱を引いて馬を座らせ、砂嵐が周りで吹き荒れる間、馬の陰に隠れて風をやり過ごす。
 やがて風が治まると、私は目の前の風景に驚かされた。何だこりゃ?森が広がっているぞ。どうにも説明がつかん。何しろ、砂嵐の前に見たものと言ったら不毛な平原で、森林など影も形もなかったのだ。…そうか、これが変幻の森か。これでエンシメシスに一歩近づいたぞ。
 私は興味をそそられて馬を進め、木々の間の微かに記された道をたどって変幻の森に入っていく。間もなく、細い道は蔦がからまり、根本をしなだれた植物に覆われた巨木のところで、二つに分かれた。あたりを見まわすと、下生えは厚く、馬のままでは踏み込めそうもない。ここで馬を降りることにしよう。さて、左右どちらの道へ進もうか。選択は慎重に。確か、変幻の森は下手をすると永久に出られなくなる危険な場所だったはずだ。エンシメシスの“危険な旅”とは、この変幻の森だけでも当てはまると言ってよいだろう。ここは慌てず騒がず木とそれを覆っている植物を調べることにする。
 木の幹は長い年月を経てごつごつしており、徐々に蔦に締めつけられようとしていた。びっしりと生えている植物はジギタリスである。この植物は“狐の手袋(foxglove)”という名前でも知られており、古くから心臓病の特効薬として用いられている。狐の手袋がみな優雅に左を向いている。狐の手袋、手袋、手袋……待てよ。変幻の森に関する注意をどこかで見たような気がするな。――変幻の森に入るのなら、やぶに咲く手袋をたどっていくこと。さもないと、永久に森から出られなくなる――私はエンシメシスの書きつけ(第5回参照)を思い出した。もしかすると「やぶに咲く手袋」とはこの狐の手袋のことはないだろうか。ならば進む道は左だ。私は狐の手袋を拾い、背嚢に収めた。狐の手袋は毒草だから素人判断では使えないが、エンシメシスに出会ったときに役立つかも知れない。それから、狐の手袋が指し示す左の道へと歩を進めて行った。
 少し行くと、小さな空き地に入った。真ん中にさらさらの土がわずかに盛り上がった小山があって、綺麗な丸い口が地面すれすれのところに開いている。黒い人間の手が、つかむところを求めているかのようにぼろぼろの土を引っ掻き回している。黒い雲の次は、黒い手か…?いや、そうではなかった。近寄ってみて分かったことだが、手が黒いのはアリにびっしりと覆われているせいだった。これはアリ塚だったのだ。う〜む、見ていてあまり気持ちの良いものではない。漂流教室に出てきた「怪虫の子供」を彷彿させる。それに、助けている最中にまた誰かにお尻を蹴られたらたまったものではないからな。万が一アリに集(たか)られたら小さくて無数にいるだけに、以前のクワグラントどころではなくなるぞ。ということで、君子危うきに近寄らず危険は冒さないことにする。しばらく様子を見ていると、アリに覆われた手は近くにあった棒をつかんで穴に引っ込んだ。やがて、中から軋るような音が聞こえてきた。塚の中で何が行われているかは想像がつかないが、巻き込まれずに済んで良かった。
 空き地からは左右に道が分かれている。道を詳しく調べていると、アリクイがのそのそと現れて、まっすぐ広場の真ん中にある塚の方へ向かった。アリクイさん、おいしいアリさんが見つかるといいですね…。アリクイが出てきた道は左の道で、その道は蘭と狐の手袋の茂みに覆われていた。よし、だ。
 狭い道を注意して踏み分けて行く。しばらく行くと、頭上で物音がし始めた。最悪の事態を予想しながら、そっと足を進める。頭上から網が降ってくるのか、宙吊りの罠があるのか、それとも…。不意に大きな音がしたかと思うと「アグバーの指にかけて!」という甲高い声が聞こえてきた。その悪態は大きな「しーっ」という声にかき消されたが、更に別のいくつもの声がわめいた。「今すぐ撃つか?」「おれが合図を送るまで待て」「返答の合図は何だ?」
 突然「今だ!」と声がした。近くの木々で弓を引く音がして小さな矢が放たれ、私の足元に落ちた。と同時に、背の低いがっしりした人影が目の前に飛び降りて、こちらに石弓を突きつけた。「やい!」と言って矢を放つ。矢はまっすぐこちらに飛んできたが、低すぎてそのまま私の足の間を抜けていった。これが本当の“間抜け”か…。そんなことを思っていると背後でうめき声がした。思わず振り返ってみると、剣をふりかざしたゴブリンが腹に突き刺さった矢をびっくりして見つめていた。「うまいもんだな、ゴク。次のときは俺が石弓を使わせてもらうぜ…」矢を受けたゴブリンはしゃがれ声で言って、仰向けに倒れた。そしてそのまま動かなかった。ゴクと呼ばれたゴブリンはすまなそうに石弓を脇へ放り、ベルトからナイフを抜いた。「貴様のせいで大切な仲間を失った。覚悟しろ!」「ちょっと待て。その大切な仲間とやらを殺したのはお前だろうが。」「うるさい。問答無用!」ゴクが罵り声をあげながら飛びかかってきたので、止むを得ずこちらも剣を構えた。ところが、ゴクが三歩進んだところで彼は罠に足を掬(すく)われ、乱暴に上へ持ち上げられた。「やった!」と近くで声がして、また別のゴブリンがロープの反対の端を持って現れた。彼は私の姿を見ると、口をあんぐり開けてロープを持った手をゆるめた。ゴクは地面に落ちて罠を逃れた…。何なんだ、こいつらは?どうやらゴブリンたちは私を罠にかけようとするあまり、勝手に先走り各々で一人相撲をとっているようだ。色々な意味で、ちょっと危ない集団のようだ。あまり関わらない方が身のためだろう。私は先へ進んだ。
 しばらく行くと、頭上でまたゴブリンの声がした。「大丈夫だって、ガブルブ。おれがやっつけてやるよ。」軋るような声が言う。どうせまた、各々の一人相撲が始まるのだろう。私が堂々と曲がり角を曲がると、目の前に巨大な鬼(オーガー)が立ち塞がっていた。小さなゴブリンほどもあろうかという頭が、怒り狂ってこちらを睨みつけてくる。その後ろには、先ほど遭ったゴブリンたちが縮こまっていた。さあ、戦いの時間だ。まずオーガーが襲いかかってくる。オーガーと1対1の対決だ。オーガーとの戦闘中、ゴブリンは襲ってこない。
 〔オーガー〕 技術点 10     体力点 12
 〔批判屋〕  技術点 10(+1)  体力点 13
[戦闘ラウンド(青字DDの値)]
[1R] ×〔オーガー〕10+=17 < 19=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔オーガー〕体力点−2=10
[2R] ×〔オーガー〕10+=15 < 17=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔オーガー〕体力点−2=8
[3R] ○〔オーガー〕10+10=20 > 16=11+〔批判屋〕× ⇒ 〔批判屋〕体力点−2=11
[4R] ×〔オーガー〕10+=12 < 15=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔オーガー〕体力点−2=6
[5R] ○〔オーガー〕10+=19 > 17=11+〔批判屋〕× ⇒ 〔批判屋〕体力点−2= ついに体力点が1桁に…
[6R] ×〔オーガー〕10+=17 < 20=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔オーガー〕体力点−2=4
[7R] ×〔オーガー〕10+=16 < 17=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔オーガー〕体力点−2=2
[8R] △〔オーガー〕10+=17 = 17=11+〔批判屋〕△ (相殺)
[9R] ×〔オーガー〕10+=12 < 19=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔オーガー〕体力点−2=0

「ガブルブ……すまん……約束を守れなかった…」そう言ってオーガーは息絶えた。恐ろしい外見はしていたが友誼に厚く、敵ながら天晴だった。残るはゴブリンだが、既にゴブリンは戦意を喪失しており、力ない抵抗をしているに過ぎなかった。

 〔ゴブリン〕 技術点 5      体力点 4
 〔批判屋〕  技術点 10(+1)  体力点 9
[10R] △〔ゴブリン〕5+=14 = 14=11+〔批判屋〕△ なにぃ?
[11R] 〔ゴブリン〕10+=17 ≪ 23=11+12〔批判屋〕勝 ⇒ 〔ゴブリン〕致命傷
 最後まで油断できない戦いだった…。オーガーとの戦闘で体力点を4点も失い、体力点は1桁になってしまった。ゴブリンとの戦いではこちらの攻撃をかわされるという事態が起きたが、次のラウンドでは久しぶりの致命傷が出た。
 オーガーとゴブリンの死体を探ったが、彼らの持っていたのは胸の悪くなるような肉の塊だけだった。こんなもの食ったら腹を壊しそうだ…。生き残った他のゴブリンどもはいつの間にか姿を消していた。更に道を進む。右手にはもうすっかりお馴染みとなった狐の手袋の群落が見える。しばらく進んで行くと、右へ曲がる道に出くわした。狐の手袋の群落はいつの間にか消えている。このまままっすぐ進むか、それとも右へ曲がろうか考えた。視線を道に戻す。…なんと、右へ曲がる道は背の高い茂みに覆われているではないか。さっきまでは茂みなど影も形もなかったのに。ともかくこれでは右へ曲がることはできない。かくなる上はまっすぐ進むしかないだろう。
 それにしても、本当に不思議な森だ。文字通り“変な幻”の森である……。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは太い赤字
 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 … /18
 運点 …  /10
 時間表 … 12
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得、色の変わる傷跡
 金貨 … 4
 食料 … 5
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)、紋章のついたロケット、狐の手袋
 (Save Number:166→17)

← 【第13回】へ | 【第15回】へ →


2013/09/28


直前のページに戻る

『奈落の帝王』のトップに戻る

ゲームブックプレイ録のトップに戻る

トップに戻る


(C)批判屋 管理人の許可なく本ホームページの内容を転載及び複写することを禁じます。