奈落の帝王(プレイ日記)


【第11回】 無敵のラメデス

 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 … 15/18
 運点 … 10/10
 時間表 … 10
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得
 金貨 … 4
 食料 … 5
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)

〔175〜〕
 ドシン!
 穴の柔らかい底に着地した。蹴られたお尻の痛みはまだあるが、幸い落ちたときの怪我はなかった。片側で、一個の闇に光る目が、斑(まだら)で灰色の形を変える大きな肉の塊の真ん中でこちらを凝視している。目の下にはぱっくりと開いた黒い口があり、そこから気味の悪いびちゃびちゃという音が聞こえてくる。この化け物は、邪悪な魔法使いのみが生み出せるという最も忌まわしいクワグラントだった。
 クワグラントは私を吸い込みにこちらに向かってきた。吸い込む…そうだ、今こそメマの吹き矢筒を使うべきときだ!ポケットからメマの吹き矢筒を取り出し、ほっそりした管を化け物に向けた。そして、今まさにクワグラントの口が近づいてこようとした瞬間、管を勢いよく吹いた。細かい粉が雲のように噴き出したかと思うと、たちまちぱっくりと開いた口に吸い込まれた。
「グエーッ!!」
 効果は抜群だった。化け物はひきつけを起こして後ろに倒れ、喘ぎ、咳き込む。そのとき、吹き矢筒に何やら書いてあることに気づいた。「吹き矢の成分:コショウ・唐辛子・炭酸カルシウムの粉・消石灰の粉」……恐ろしい成分だ。こんなものを吸い込んだら肺がおかしくなるわ。あのときメマに吹かれなくて良かった……ともあれ、クワグラントは弱体化していた(技術点−2、体力点−6)。この機会を逃さず、剣を抜いて飛びかかる。各戦闘ラウンドにおいてクワグラントが一度でも勝った場合、クワグラントの口に吸い込まれて骨から肉を吸い取られるので、それ以降は自動的に各ラウンドごとに体力点2を失っていく。弱体化したとは言え、容易ならざる相手だ。
 〔クワグラント〕 技術点   6  体力点  14
 〔批判屋〕 技術点 10(+1)  体力点 15
[戦闘ラウンド(青字DDの値)]
[1R] ×〔クワグラント〕6+=15 < 16=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔クワグラント〕体力点−2=6(危ない危ない…)
[2R] ×〔クワグラント〕6+=11 < 17=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔クワグラント〕体力点−2=4
[3R] ×〔クワグラント〕6+=13 < 18=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔クワグラント〕体力点−2=2
[4R] ×〔クワグラント〕6+=14 < 17=11+〔批判屋〕○ ⇒ 〔クワグラント〕体力点−2=0
 完全勝利できたのはメマの吹き矢筒のお蔭と言っても過言ではない。もしも吹き矢がなかったら最初のラウンドで負けていた。そうなれば大幅な体力点を失うことは必至であっただろう。
 クワグラントの死体を見下ろしてほっとするのも束の間、鉄格子の向こうでは看守が指で鍵をじゃらじゃらいわせている。
「悔しかったらこの鍵を取ってみな。鉄格子まで登って来い。指を踏んづけてまた落としてやるからな。」
 この不快な穴から出たければ、あいつを即死させる方法を考えなくてはならない。看守は私が剣でクワグラントと戦っているのを見ている。看守に向かって剣を投げつける仕草に気づかれたらよけられてしまうだろう。…そうだ、《ハエ刺し》だ。今こそあの練習の成果が試されるときが来た。鉄格子のあいだを抜けてくれますように……
「へっ、何だよお前のその手つき。変な剣の持ち方をしていやがるぜ、ぶひゃひゃひゃ。だいたいお前、剣を持っている手が…ぐふっ……!」
 剣は看守の腹に見事命中し、笑い声をあげていた悪党を刺し抜いた。看守は鉄格子にくずおれ、撥ね上げ戸の鍵が看守の引きつっている手からぶら下がる。そして、鉄格子にぶら下がっているラメデスがその鍵を奪い取り、鉄格子の扉を開けた。ラメデスは穴から脱出した。ラメデスは看守を穴に突き落とす。看守がクワグラントの死体の上に落ちる。
「おいお前、大丈夫か?ちょっと待っていろ!今助けてやるからな。このロープにつかまれ!」
 ラメデスは穴の上から私に向かってロープを放った。それは私が主塔の屋根で使ったロープだった。看守に蹴られたとき、ロープだけが穴の上に取り残されたのだった。私はロープにしっかりつかまった。ロープが引き上げられる。疲労困憊にも関わらず、ラメデスの力は強かった。やがて、私も穴を出ることができた。
「助けてくれてありがとう。私はラメデス。キャロリーナ夫人の命を受け、三ヶ月前に秘宝を手に入れる旅に出た。そして秘宝を手に入れ、先日、カラメール城に戻ってきたのだ。それにしても、お前の剣さばきは見事だったぞ。特に、看守を一撃で屠ったあの必殺技、あんな技は見たこともない。」
「紹介が遅れた。私は<批判屋>という。あの技は、私なりに工夫した未完成の技だったんだ。あの工夫がなかったら、間違いなく看守によけられていたよ。」
「それにしても、さっぱりわからん。秘宝を手に入れるために、筆舌に尽くしがたい数々の困難を乗り越え、目的の品を発見したというのに、どうだ、この扱いは?看守の腰抜け野郎に薬を飲まされ、殴られ、あんな化け物の前に置き去りにされるとは。キャスティス神のお恵みにより、宝は既に安全な場所に隠してある。さあ、キャロリーナ様にお渡ししなくては。」
 あれ?ラメデスは男爵夫人の死を知らないのか?私は尋ねてみることにした。
「ラメデス…お前は知らないのか?」
「知らないって、何を?」
「いや、キャロリーナ男爵夫人が……その……亡くなったことを………
「何?キャロリーナ様が亡くなっただと!それは本当か、<批判屋>!!」
 無意識のうちにラメデスは私の胸倉をつかんで締め上げていた。何という力だ。このままではもう一人死者が出てしまう。私は弱々しくもラメデスの両手を押さえつけた。
「ぐ・ぐるじい〜〜…本当だ、嘘じゃない…冗談でこんなことが言えるか…私だって未だ信じられないんだ……さあ、その手を離してくれぇ……」
 ラメデスは我に返り、締め上げているその手を緩めた。私は思わずむせて咳き込み、呼吸を整えた。ラメデスの方を見ると、彼の目から涙があふれ出ていた。
「キャロリーナ様、なぜあなた様が……畜生〜〜っ!復讐してやる!!」
 ラメデスが悲しみと怒りのあまり、拳を石畳に叩きつける。忽(たちま)ちその箇所にひびが入った。この男に殴られたら骨折ではすまないだろうなぁ……
「<批判屋>、お前を信頼しての頼みがある。ちょっと一緒に来てくれないか。」
 ラメデスはさっと立ち上がって部屋を出ると、暗い通路を照らすために壁の松明をつかんだ。私は彼に続いて宮殿の中庭に出る。彼は馬小屋の傍らにある水槽をまたぎ、浮きかすの浮いた水の中に手を入れて、皮の小袋を取り出した。そして、私にその小袋を手渡した。
「私はこれから、我が敬愛する夫人を殺めた裏切者を探しに行く。その小袋を持っていてくれ。私が死んだときにはカラメールの新しい領主に渡すのだ。」
 そう言って、彼はこちらの返事も待たず、松明を頭上で振り回しながら主塔の門へと突進した。おいラメデス!……後を追おうと思ったが、もう間に合わないだろう。ここは馬小屋に隠れて、様子を見ることにする。
 俄(にわ)かに宮殿の中庭が騒がしくなった。主塔の衛兵たちから悲鳴があがり、金属同士のぶつかる耳障りな音が聞こえ始めた。しかし、如何に無敵のラメデスでも一度に何十人もの衛兵を相手にして勝てるわけがなかった。ラメデスの苦痛の叫び声が聞こえてくる。次いで、衛兵のあいだから勝鬨(かちどき)の声があがった。衛兵達はそれぞれの部屋に戻っていく。
 中庭の騒ぎが静まったので、ラメデスを探してみることにした。中庭には五十人を下らない衛兵の死体が転がっていた。衛兵の死体の中に、胸に矢を受けている者がいた。ラメデスだ!まだ生きている!私はラメデスの胸から矢を引き抜き、楽な姿勢にしてやった。そして、水筒の水をラメデスに飲ませる。
「おお、<批判屋>か……だが、私はもう助からない……」
「何を言うんだ、ラメデス。傷は浅い。……カラメールの裏切者は、私が必ず探してみせるからな。」
「ありがとう、<批判屋>。もっと早く…お前と…会いたかった……」
 それがラメデスの最後の言葉となった……やや粗暴ではあったが、純真で忠実で正直な男であった。
 それにしても、小袋の中身は何だろう。私はラメデスの遺品を調べてみた。
 皮袋の中に入っていたのは、プラチナなどの貴金属で精巧につくられた、大きな丸いロケットだった。はめ込まれた青い宝石は、紛れもないランゴール家の紋章の形に並んでいる。留め金は二頭の組み合わさった銀のイルカの形をしていた。このロケットの中身は何だろう。ふたを開けてみようとしたが、どうしても開けることができなかった。恐らくこのロケットには魔法的な力があり、それが開けるのを拒んでいるのだろう。多分、開くべきときが来るはずだ。私は紋章のついたロケットをそっと懐にしまう。
 部屋に戻るのは危険だ。夜が明けるまでは馬小屋で過ごすことにしよう。わらの山に心地よくもぐりこみ、すぐに眠りに着く。《時間表》のますにチェック

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは太い赤字
 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 … 15/18
 運点 … 10/10
 時間表 … 11
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得
 金貨 … 4
 食料 … 5
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)、紋章のついたロケット
 (Save Number:293→276)

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2013/08/19


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