奈落の帝王(プレイ日記)


【第7回】 夜の襲撃

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 … 10/10
 体力点 … 17/18
 運点 … 10/10
 時間表 … 5
 特筆点 … なし
 金貨 … 5
 食料 … 5
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶

〔53〜〕
 黒い軍隊が背後にせまる。カラメールからはまだ遠いが、連中が道筋にあるものを根こそぎにしてしまうのは間違いない。軍隊の正体はただの農民の集団だが、数の上ではカラメールの全軍隊に優(まさ)っている。しかも、敵の軍隊の頭上には黒いスズメバチの大群がいる。さっきはメマがいたから辛うじてスズメバチの毒牙を免れたが、次に遭遇するまでにはメマなしの打開策を講じなくてはならぬ。さもなくば、私も消え行く村人と同じ運命をたどることになるだろう。マッドヘリオスの言葉を思い出す――<批判屋>君、一番大事なのは、君が無事に戻ってきて、敵の正体を報告してくれることなのだ。そうすれば、どうやって街を守ればよいかわかるからな――私はまだ敵の弱点を何も知らないし、たとえ知ったところであのカラメールの小軍隊では恐らく何もできまい。カラメールの市民が生き残る道は避難しかないだろう。かくなる上は、カラメールに戻って避難するように警告するより他はない(《時間表》のますにチェック)。
 疲れた馬に拍車をかけて、カラメール地方の見慣れた田園地帯を進む。ときおり水を汲むときだけ馬を止め、休みたい衝動と戦いながら、通り過ぎる人みんなに警告していく。一人でも多くの人が助かるように。先を急ぐうちに、とうとう馬がよろめき始め、もうこれ以上は進めなくなった。無理もない。考えてみれば、今日は馬によく働いてもらった。あれだけの肉体的負担と心理的負担をかけてしまった馬には、今夜一晩よく休んでもらおう。
 活気のある市場町、カマダンについた。馬丁が馬から降りるのを手伝ってくれ、宿屋に入る。お風呂に入り、漸くワインまみれの体を洗い流すことができた。お風呂から上がると、疲労がどっと押し寄せてきた。部屋に入るなり、ガタのきたベッドに倒れこんだ。
 しかし、疲れているのに眠ることができない。なぜだ…わかった、シージュのにおい玉のせいだ。眠りを妨げるにおい玉だが、これでは助けになるというより邪魔になると言った方がよいではないか。私の体は真の休息を求めて悲鳴をあげ、睡眠不足の苦しさにもがく。…もうだめだ。我慢できない。今はにおい玉の袋をはずそう。におい玉をはずし、背嚢の中にしまい込む。作業が終わった瞬間、疲労が波のようにどっと押し寄せ、意識を失い、ベッドに大の字になる……(《時間表》のますにチェック)。
 …なんか煙臭いな。燻製でも造っているのか?いや、そうではなかった。目を覚ましたとき、部屋中に煙が充満していた。扉の下の隙間が赤く輝いている。何かのロケーションかと思ったが、熱が伝わってくるところからすると、本物の火事だ。慌てて頭からシーツをかぶり、ふらふらと立ち上がって、鎧戸の閉められた窓へと向かった。窓を荒々しく開け、恐ろしさに後ずさる。窓の外に黒いマントを着た人影が浮かんでいたのだ。その黒い頭巾の下には、扉からもれている燃え立つような赤い光を反射し、百個ものきらきら光る宝石のように輝いていた。大きなうなりに耳をつんざかれそうになりながら、すばやく相手に拳をくりだす。だが、相手の動きは速く、矢のようにまっすぐ上昇してしまった。
 すばやく決断しなくてはならない。このままでは焼け死んでしまう。扉の方へ走る―扉の向こうが赤く光っているのにこれはまずい。飛んで火に入る夏の虫になってしまう。別の出口を見つける―そんな暇はない。ここは窓から外へ出るしかないだろう。
 文字通り、火事場の馬鹿力で装備をつかんで窓から放り投げ、自分もあとに続いた。敷居を慎重に乗り越え、しまいに指先だけで体を支え、降りるのに備えて下を見る。そのとき、不意に頭上で何かの気配がした。だが、今は上を見ている場合ではない。すぐに飛び降りるしかない。
 飛び降り、器用に着地し、ショックをやわらげるために前へ転がる。まるで猫みたいなしぐさだ。立ち上がると、背中にねばねばする液体がはねているのがわかった。液体はぶくぶく、しゅうしゅうと音を立てている。慌てて胴着を剥ぎ取り、近くの水槽につけた。液体は水に触れると、一筋の蒸気を上げ、水が怒ったように泡立った。後ずさり、用心して空を見上げる。激しいうなりをあげながら、黒い翼を持った生き物が空高く舞い上がり、夜の闇に消えていった。
 今ではひとかたまりの街の人々が集まって、この出来事を見物していた。背後できしむような音がし、次いで物の裂ける凄まじい音が聞こえた。振り返ると、宿屋の屋根が崩れ、渦巻くような火の粉を舞い上げていた。
 …一体、あの黒い人影は何だったんだ?また別の「目」が私を見張っていたのか?…装備を確認する。大丈夫だ。失ったものは何一つない。それにしても、まだ夜は明けていないぞ。これからどこで過ごそうか……。
 そんなことを考えていると、首に軽く金属が触れ、しゃがれ声がささやいた。
「一歩でも動いてみろ、八つ裂きにしてやるぜ」
 一難去ってまた一難とはまさにこれなり。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは太い赤字
 技術点 … 10/10
 体力点 … 17/18
 運点 … 10/10
 時間表 … 
 特筆点 … なし
 金貨 … 5
 食料 … 5
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶
 (Save Number:111)

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2013/08/10
2013/08/15一部修正


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