奈落の帝王(プレイ日記)


【第6回】 黒い軍隊

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 … 10/10
 体力点 … 17/18
 運点 … 10/10
 時間表 … 5
 特筆点 … なし
 金貨 … 5
 食料 … 5
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶

〔95〜〕
 メマの村に行く途中、注意は右手のずっと遠くの、谷間の遠い端に引きつけられた。体が無意識のうちに震え、鳥肌まで立ってくる。馬までもが恐怖にいななく。何だ、この異様な恐怖心は……。むっとする悪臭が肺に満ちてきた。前方に、草木のまばらな斜面をゆっくりと覆っていく黒い塊が見えた。黒い溶岩か…?目を凝らすと、その黒い塊は溶岩ではなく人の群れだとわかった。こうして見ている間にも、黒い塊はどんどん近づき、黒いしみのように広がっていく。ついに敵の正体を発見したぞ!だが、喜んでばかりもいられない。早くカラメールに戻ってこのことを報告しなくては。それにしても、この侵略軍の数といったら、カラメールの全軍隊をあわせた数よりも多そうだぞ。谷へ下りて、もう少し近くで敵を見てみよう
 馬は嫌がっているようだが、わき腹を蹴ると、早足で斜面を下りていった。「うわっ、何だこの臭いは。」メマの緑色のねばねばと私のワインの臭いなど足元にも及ばないほどで、生理的嫌悪を強く感じるのがわかる。
 迫り来る軍隊は、それこそ何千人もの人々がいるはずだが、軍靴の重い足音は泥に消されて全く聞こえない。今や敵は十分に近づき、前進する第一列の兵がよく見えるようになった。「…!」思わず息をのんだ。予想していたのは蛮人や傭兵や、オークなどの邪悪な生き物だったが、それは大間違いだった。前進してくるのは、大量の農民たちではないか。しかも、子供までいる。衝撃的な事実に頭がクラクラしてきた。と、メマがあまりの恐怖に泣き出してしまった。メマの泣き声で我に返った。「大丈夫だよ、メマ」そう言って、メマを抱きしめた。メマが泣きながらも黒い軍隊を指差している。最初、メマが何を指差しているのかわからなかったが、やがて、空中にうねるような黒い霧がかかっているのに気づいた。あるいは雲かもしれない。
 むくむくとした黒い雲が、黒いビロードの経帷子よろしく、こちらに押し寄せてきた。…これはちょっとまずいぞ。急いで向きを変えて、その場を離れる。しかし、黒い雲はしつこく追いかけてくる。またストーカーか?金属的なうなりが聞こえてくるので、危険を承知でふり返ってみると、黒い雲が目の前にせまっていた。よく見ると、その雲の正体は、バッタほどの大きさの、黒いスズメバチの大群だった。畜生、ジパングでもスズメバチによる死者が毎年出るからな。これは容易ならざる状況だ。しかし、スズメバチはこっちの頭上をぐるぐるとまわるだけで、結局襲ってはこなかった。その理由はすぐにわかった。メマの身体に塗られている緑色のねばねばのお陰だ。やはり、エンシメシスの腕は確かだった。まあ、臭いの面で聊(いささ)か問題がなくもないが…。おっと、黒い軍隊がメマの村にたどり着くまでに、メマを両親のもとに送り届けなくては。
 村へと馬を疾走させると、メマは必死にしがみついてきた。柵に近づくと、村の大きな門が開いた。
「あれは、メマちゃんだわ!」
 村の人々がメマの存在に気づく。私は村人たちに危険を知らせる。
「皆さん、聞いてください!黒い軍隊がこの村を襲おうと近づいてきます!時間があまりありません!早く逃げてください!」
 村人たちは半信半疑で聞いている。と、メマも大声を出した。
「みんな、この人の言うことは本当よ!私も黒い軍隊を見たの!黒いスズメバチもいて怖かった。この人は私をこの村まで送り届けてくれた親切な人です。だから、みんな、早く逃げて!」
 村人たちは、メマの言葉を聞いてようやく信じてくれたようだ。持てる限りの荷物と家畜を持ち、避難をし始めた。
 村人たちが避難する中、メマの両親がこちらに近づいてくる。
「うちの娘が本当にお世話になりました。何とお礼を言っていいのか、言葉が見つかりません。」
「いえいえ、お礼よりも早く逃げてください。敵はもうすぐです。」
「はい。本当にありがとうございました。さあ、メマ、行くよ。」
「待って!…<批判屋>さん、ちょっとこっちへ来て。」
 メマは私の手を引いて、路地裏まで私を連れて行った。
「<批判屋>さん、いろいろとありがとう。<批判屋>さんがいなかったら、私はパパやママに会えなかったわ。」
「いいえ、お礼を言うのは私の方だよ。メマのおかげで手がかりもつかめたし、敵の正体もわかった。カラメールにこのことを知らせに戻ったら、危険な旅に出かけたという君の師匠を追ってみるよ。魔法使いエンシメシスがいったいどんな予言をしたのかがわかれば、この謎も解けるはずだからね。」
「うん。…ところで<批判屋>さん、これが何だか覚えている?」
 そう言って、メマは吹き矢筒を取り出した。
「覚えていますとも。私は危うくその吹き矢の餌食になるところだったから…」
「この吹き矢、<批判屋>さんにあげる。エンシメシス先生に教わって作ったものなの。1回しか使えないけれど、何かの役に立てて。」
 そう言ってメマは、自分の持っていた吹き矢筒をくれた。「ありがとう。」私がメマにお礼を言うと、メマは再び口を開いた。「<批判屋>さん、目を閉じて。開けていいって言うまで目を開けないでね。」
 言われるがままに目を閉じると、メマの両手が私の首の後ろに回るのを感じた。次の瞬間、唇に柔らかい感触が…………。しばらくして、柔らかい感触が去り、メマの声がした。「<批判屋>さん、目を開けていいわよ。」……それは数十秒の出来事であったが、数時間の出来事のように感じられた。「<批判屋>さんの任務が成功しますように。」そう言って、メマは両親のところへ走って行った。
 やがて、メマが両親とともに村から避難するのを見かけた。メマの両親が、去り際に遠くからこっちに向かって頭を下げていた。
 メマはいい子だったなあ……そんなことを考えていると、黒い軍隊が谷を越えてじりじりとこちらに向かってくるのが見えた。おっといけない、今度はこっちが逃げる番だ。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは太い赤字
 技術点 … 10/10
 体力点 … 17/18
 運点 … 10/10
 時間表 … 5
 特筆点 … なし
 金貨 … 5
 食料 … 5
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶
 (Save Number:35→53)

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2013/07/31


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