甦る妖術使い(プレイ日記)


【初期設定と背景】

 私の名はALADDIN(アラジン)。祖国ジパングでは<批判屋>と呼ばれている。
 前回のプレイで惑星セラエノに行ってきたが、地球に戻ってきた。

 技術点 … サイコロを振って出た目は6。従って、原技術点は12。
 体力点 … サイコロ2個を振って出た目は2と2で4。従って、原体力点は16。
 運点 … サイコロを振って出た目は6。従って、原運点は12。

 技術と運が恵まれた。その分体力は低いが、技術点判定や運だめしで何とかなるだろう。今回は食料や飲み薬が初期装備から外されている。既にこの段階で、今回の冒険は何か不穏な空気が流れているのだが…。かくして、初期設定は整った。

 これから私が赴こうとしているのは、アランシアにあるヤズトロモの塔だ。ダークウッドの森に聳え立つこの塔は、アランシア三大魔法使いの一人であるヤズトロモが住んでいる。偏屈で無愛想者だが、領民の悩みには全力で立ち向かってくれる、基本的には善良な魔法使いだ。今、チャリスで何か大変な噂が立っている。下手をするとアランシア全域の滅亡に関わる噂だ。その真実を突き止めよう。

〔背景〕
 チャリスは、月岩山地から流れるシルバー川の土手にある、ほんの小さな町である。もともとは、数軒の掘っ立て小屋が集まっただけであったこの土地は、山地から出る金めあての者どもが集まるようになって、やっとどうにか町とよべる程度に大きくなった。シルバートンの町へ向かって西へ旅する商人にとって、ここは最初の休息の地なのである。襲われる恐れもなく、ここでは休むこともでき、また商売をすることもできた。数えきれないほどの宿と酒場、ここはアランシア一騒々しい町でもあったのである。
 しかし、いま、その町のライオン荘の二階の部屋からは、どこにも浮かれたようすはみてとれなかった。この三週間というもの、空の色は暗く、何かおぞましげであった。東からやってきた旅人たちは、口々に疫病や災害、飢饉が西へ向かってやってきつつあることを告げた。
 そして昨日、この凶兆の源をみつけたものがいるという噂が、野火のように町中に広がった。月岩山地から、鷲の背中に乗って南に向かって飛んでいたエルフが、大地に異様な臭気の煙を吹いている深い裂け目をみつけたというのである。その裂け目のまわりの草は、すべて真っ黒に変色して枯れており、樹木も葉を失って枯れていた。そしてエルフがその裂け目を飛び越そうとしたとたん、焼け焦げてしおれた手が裂け目からのび出し、そのかぎ爪のような指が鷲に狙いを定めて、あっという間にそこから雷光がほとばしり、鷲に大きな穴を開け、どうにか命だけはとりとめたエルフは、そこからチャリスへたどり着いたのだという。
 ダークウッドの森の南の外れに住む年老いた魔法使い、旧友のヤズトロモにこの話を伝えなければいけない。そう思った君は、いまや見慣れてしまった薄暗い空の下、ヤズトロモの塔へ向かって馬を駆った。夕暮れ前にその門前の小道にたどり着いた君は、馬から飛び降り、大きな樫の木でできた門につけられた銅のベルを鳴らした。しかし、返事はない。
 と、その君の背中を、何者かが軽く叩いた。君は慌てて身構え、剣に手をのばした。
「おいおい、物騒な奴だな!」
 目の前に立っていた年老いた男は、警告するように腕を振りながらそう言った。
「いったい全体こんなところまで何をしに来たのかな? 長いこと音沙汰もなかったくせに、突然やって来てわしの農園を通りぬけ、死人だってびっくりするような音でベルを鳴らし続け、この年寄りの平和で静かな生活を邪魔しくさって! いったい何用じゃ?」
 君は、老魔法使いの、いつもながらの無愛想なようすを見て思わず微笑んだ。
「何がおかしい?」
 しかし、彼がそう尋ねたとたん、君の気分はまた暗くなった。面白がっているときではないのだ。君の表情が変わったのを見てとって、ヤズトロモは眉をしかめた。
「どうも上へ行って何があったのか聞いたほうがよさそうじゃのう。なにか困っとるんじゃろ? でなければ、こんなところへは来まいって……どうもそいつは、この薄暗い空の色に関係があるんじゃないのかね?」
 樫の椅子に腰を下ろし、口も開かずじっとエルフの伝えた話を聞いていたヤズトロモは、聞き終えてもただ憂慮の色を顔に浮かべるだけであった。それからしばらくして、彼はため息まじりに語り始めた。
「わしの恐れていた最悪の事態のようじゃのう。妖術使いが甦ったのじゃ。バカな! アランシアの息の根を止めるかもしれんような奴じゃよ……」
 いったいなんのことかわからない君は、そのまま彼が先を続けるのを待った。ヤズトロモは思い出したくもない悪夢の様子を語るかのように、100年前アランシアを恐怖のどん底に陥れた邪悪な妖術使いラザックの伝説を語り始めた。

 ヤズトロモが善良なる魔法使いの徒弟として魔法の技を学び始めたのとちがって、ラザックは最初から邪悪な暗き力に魅せられていた。彼は、自分がいつの日にか、すべてを従えることができるほどの呪術使いになれることを悟った。彼はその力をアランシアのために役立てようなどとは思わずその国土すべてが自分の前にひざまずくことのみを願った。彼はアランシアの東方奥深くへ旅し、その秘術に磨きをかけた。その暗き力を統べる技は、瞬く間に上達し、徒弟から魔法使い、そして呪術使いを経て妖術使いとなった。40年間というもの、彼はこれを1人で成し遂げたのである。
 その後、ラザックは、アランシア中のすべての貴族、領主たちに、自らをその支配者と認めるようにという通達を送った。この通達は、初めは全く無視された。何しろ、それまで彼の名を聞いた者すらいなかったのである。ラザックはこの仕打ちに、貴族たちの領地に疫病と災害を振りまくことで応えた。そして、次の満月までに、彼が支配者であることを認めるように迫った。
 数えきれないほどの戦士が、ラザックを打ち倒すために旅立ち、そして死んでいった。
 しかし、ついにクールという名の勇敢な戦士がその任務を果たし、アランシアを救ったのである。
 彼はある剣を持っていた。月岩山地の霧深き湖を、彼が筏で旅していたとき、湖から突き出した骸骨の手に握られていたその剣を見つけたのである。クールは、その剣の類まれなる美しさに魅惑された。そして即座にその剣に手を伸ばした。骸骨はあらがうことなく剣を手放すと、そのまま湖へと姿を消した。しかしクールは、そのとき剣以外のことは何1つ目に入らなった。即座に岸に筏をつけると、彼はその新たなる武器を試してみた。その剣は、何者をも貫き通し、鉄の鎧すら楽々と切り裂いてしまうような代物であった。その剣は、なんと一度はラザック自身が帯びていたもので、そしてこれこそ、世界で唯一、彼を打ち負かすことができる力を持つものだったのである。
 ラザックは、妖術使いとなるために、すべての武具を捨て去らねばならなかった。しかし、その彼の力をもってしても、この呪われた剣を破壊することはできなかった。ラザックは、しかたなくその剣を湖に投げ捨てた。それは骸骨の手により受け取られ、クールに見つかるまで湖面を漂っていたのである。運命のいたずらにより、ラザックはクールの手に渡った自らの剣で命を落とした。しかしまさにそのとき、クールの体もすべてぼろぼろに崩れ落ち、ただ骸骨だけが残るのみとなってしまった。ラザックの最期の呪いが、彼に骸骨としての永遠の悪夢を与え、その手から剣を放せないようにしたのである。

 そのとき以来、クールはフードのついたローブを纏い、月岩山地のその湖の上で、筏に乗りながら、その剣を奪い取る者、そして自らに安らぎのときが訪れるのを待っているのだと言われている。ラザックの亡骸は石の棺に納められ、南の丘の地中奥深くに埋められた後、善良なる魔法使いによって封印された。百と十年の間、再びこれを開けることはならず、もし開ける者あらば、かのものは再び破壊とともに甦ると定められたのである。
「わしに言えることは」
 ヤズトロモは深い溜息とともに続けた。
「どこかの墓泥棒がラザックの棺を見つけて、そいつを暴いたのではないかということじゃ。手遅れになる前に、奴を倒さねばならぬ。なんという面倒な! ラザックの剣と、奴の魔法から身を守るための護符、御守りを集めなければなるまい……お前さん、まさかいやとは言うまい!」
 ラザックと哀れなクールの話に圧倒されつつ、君はゆっくりと首を縦に振った。
「そうか!」
 ヤズトロモは更に続けた。
「そう心配することはない、わしがお前を骸骨になどするものか。お前がそれを探している間に、わしも助けになる友人を集めておくから。そうとなったらぐずぐずしておられんぞ。お前は月岩山地の湖を探すのじゃ。今晩はゆっくり休んで、明日の早朝には旅立ちじゃ……」


さあ、ページをめくりたまえ

2017/05/26


直前のページに戻る

『甦る妖術使い』のトップに戻る

ゲームブックプレイ録のトップに戻る

トップに戻る


(C)批判屋 管理人の許可なく本ホームページの内容を転載及び複写することを禁じます。