死神の首飾り(プレイ日記)


【最終回】 地球への帰還

〔400〜〕
 スターリーチ山が地響きを立てて揺れた。スターリーチ山は活火山ではないから、地響きなど前代未聞の出来事だった。スターリーチ山の揺れはグレイギルドからも観測され、天文学者達はこの原因を解明しようとした。だが、この原因を逸早く知った者がいた。それは、アポテカスとディオドラス、それから母なる神の巫女リランサと女性兵士だった。死神の首飾りがオーブの世界から消滅したことにより、悪の力が衰え、オーブの世界に均衡が訪れたのだった。

 私は、丸く石が立ち並ぶ円形の場所にいる。空気の匂い、鳥の歌声、みんなもの珍しく感じられる。ここはどこだろう? 考えあぐねていると、女神の声が頭の中で響いた。
「我が忠実なるしもべよ、よくぞこの任務を達成しました。ここは地球です。あなたはついに地球に帰って来たのです。」
 抗議をしたくても、くたくたに疲れ切っていて、体が動かない。そんな私を見て、リーブラは状況を察した。
「ふふっ、だいぶ疲れているようですね。今はゆっくりおやすみなさい。」
 私が何か言う前にリーブラは巨大な姿で実体化し、私を包み込むようにして抱く。私は何も抗えない。私はリーブラに身体を預けるようにして倒れ込んだ。そして、そのまま意識を失う。
 次に意識を取り戻したとき、私は石の円陣の中央に立っていた。
「ALADDIN殿、この度はオーブをお救いくださり、ありがとうございます。」
 突如、頭の中で声がした。この声は……私の目の前に、2人の神が現われる。
「私は、時間を司る神。オーブの神々に属しています。」
 赤ちゃんから老人までの姿が滑らか過ぎる神が頭を下げる。
「私は、バランスを司る運命の神。そして、母なる神もオーブの神々です。」
 両目のない神が頭を下げる。そして、2人は口を揃えて言う。
「また、必要があれば、あなたをよぶことにしよう!」
「嫌です。二度と私を呼ばないでください。」
 2人とも私の返答に驚いたようだ。オーブの民にとっては神々と話ができること自体が名誉とされている世界かもしれないが、私にとっては甚だ迷惑でしかない。
「勝手に人を道具扱いして、必要なときに助けてくれないで、うまくいけば自分のお蔭、うまくいかなければ他人のせいにする奴らとはもう付き合いたくないと言っているんだ。母なる神の方がずっと良かったよ。いいや、あなた方神とやらに比べたら、死神の首飾りを取り戻すのに力を貸してくれた盗賊組合の方がずっとプラスになったよ。」
「いや、私達だって、あなたが失敗すれば109番もしくは43番で助けようと思っていた。本当だ。」
「ふ〜〜ん。本当かなあ。仮に本当だとしても、私は109番や43番には行かなかった。つまり、あなた方は私を助けてはいない。地球のメリケンという国でも、就任しやがった自分ファーストのドナルド・トランプとかいう気違いに未だ天罰が下っていない。こんな状況で神を信じろっていうのか。」
 ホーカナを斃し、テュチェフの片目を奪い、カサンドラの頬に傷をつけ、そしてレッドドラゴンを串刺しにした私は、天罰とか神罰とかいうものは怖くなかった。むしろ、ホーカナ達の方が怖かったくらいだ。
「ともかく、金輪際私を呼ばないでもらいたい。女神リーブラにもそう言っておくから。」



 私がリーブラの名前を出したことで、リーブラはまたもや姿を現した。
「まあまあALADDIN。ここは私に免じて……」
 そう言って、リーブラはまたもや私の唇を奪う。この感覚、何回味わっても心地よいんだよなあ。これまでの苦労を帳消しにしてしまう恐ろしい効果がある。私がリーブラによって骨抜きになっている間、リーブラはオーブの神々と何やら話をしていた。
「オーブの神々よ、我がしもべは見事に任務を達成しました。私はオーブの眷属ではありませんからオーブの世界に口出しする権限はありません。しかし、十字軍の騎士の方々の来世はきちんと保障するべきです。それと、今度私が助けを求めたら、できる限り協力すること。これは神同士の約定です。誓えますね。」
「はい……」
 2人のオーブの神は渋々ながら同意した。夢見心地から現実に戻った私に、オーブの神々は、その後のオーブの様子を見せてくれた。
 ウォードマンと白狼は健在だった。乳飲み狼だった二匹の狼もだいぶ大きくなっていた。グレイギルドの町ではホーカナの死によってフェル=キリンラの寺院の勢力が弱まり、母なる神の寺院の勢力が強くなっていた。とは言えリランサは傲慢さを微塵も出さず、信仰心がより深まったようだった。アポテカスとディオドラスは私の任務の達成を知ったようで、それぞれ歴史学と地理学の研究論文を進めていた。一番変わったのは酒場レッドドラゴンのようだ。盗賊組合達の証言により、私の似顔絵がレッドドラゴンの至るところに掲示された。テュチェフとカサンドラは相変わらず傲慢な態度は取っているものの、私の似顔絵から目を背ける仕草を取るようになった。酒場の主人は私の似顔絵のお蔭で、これまで踏み倒されていた酒代を全て回収することが出来たようだ。ホッグロードとホッグメンは、スターリーチ山の地響きに一時は驚いてはいたものの、死神の首飾りがオーブの世界から消え去ったことを悟り、また宴が開かれていた。最後に、レッドドラゴンは死神の首飾りが地球へ持ち去られた瞬間、苛烈な炎を上げて燃え尽きてしまったようだ。ドラゴンの鱗の盾は焼失したが、ドラゴン殺しの槍は傷一つ、焦げ一つなくスターリーチ山の頂上に転がっていた。
「ALADDINよ、そなたの凱旋の時はまいりました。」
 リーブラは何やら呪文を唱える。次の瞬間、私の周囲は白くなり、何も見えなくなった……。

 私は目を覚ます。そう言えば、昼寝をしていたんだっけ。何やら異世界の大冒険の夢を見ていたようだ。夢……なのか………。私は、家で金属製の首飾りを見つける。こんな首飾り、家にあったかなあ。気味が悪いから捨てようと思ったが、祟られると嫌なので、後日近所の神社でお焚き上げをしてもらった。実は私が異世界を救った英雄であることは、地球上の誰も知らない。

〔最終STATUS(現在の値/原点)
 技術点 ……… 12(+2)/12 (戦闘時のみ)
 体力点 ……… 15/19
 運点 ………… 10/11
 金貨 …… 14
 宝石 …… 死神の首飾り
 食料 …… 6、黄金のリンゴ
 飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
 装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、たいまつ5本、銀の鎖帷子(戦闘時のみ技術点+1)、剣術の指輪(剣を用いている場合に限り戦闘時のみ技術点+1)、陶製のバラ、困ったときの書、ドラゴン殺しの槍(戦闘時のみ技術点+1)、琥珀色の松脂の入った瓢箪、ドラゴンの鱗の盾
 メモ ………… 「自然そのものである母なる神よ、我を助けたまえ」


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 ゲームブックプレイ日記『死神の首飾り』をここまでご覧いただき、誠にありがとうございます。
 この作品における批判の概要については、このページで述べていますので、ここではプレイした感想を述べたいと思います。
 まず、この冒険は他の冒険と比べて決着のつく戦闘が少ないことが特徴です。倒したと思っていても、実は相手は死んでいなかったという場面が多かった印象があります。主人公はオーブの神々に選ばれし者としてオーブの世界に降臨(突き落と)されました。ですから、主人公は冒険を始める前の段階において既にオーブの神々の加護があることになります。プレイ日記には出てきませんが、普通ならばそこでDEAD ENDとなる場面でもグレイギルドの町を脱出する前に死んだ場合は109番へ、グレイギルドの町を脱出した後に死んだ場合は43番へ、それぞれ進む機会があります。しかし、こうしてプレイ日記をしたためてみると、この処理もかなり完成度が低いことが判明しました。例えば、白狼を殺してウォードマンの怒りを買ってしまった場合(147番)にDEAD ENDとなるのは合点がいきます。147番の振る舞いをしてはオーブの神々の加護が得られないのは当然と言えば当然だからです。しかし、普通の戦闘でも死ぬ可能性はあり、その状況においてオーブの神々の加護が得られないのは腑に落ちません。各戦闘の番号において「この戦闘で負けた場合は109または43へ」という指示があって然るべきだったと思います。
 このゲームブックのBGMとしては、個人的にはドラゴンクエスト4の船のBGM(叙情的な曲)だと思っていましたが、Wizardry Variants Daphne(通称ダフネ)のソーシャルゲームが2024年10月にリリースされてからは、中ボス戦闘やヘルムート戦のBGMも合っていると思い始めました。皆さんのBGMは私と異なると思います。「この場面のBGMはこれがふさわしい」などございましたら、掲示板でご意見を戴けるとありがたく思います。
 本プレイは社会思想社『死神の首飾り』(邦訳版)を基に著述しましたが、ストーリーの展開上、一部各能力点やアイテムの得失などが前後している場合があります。また、一部設定を変更している場面があります。以上の点をご理解・ご了承・ご容赦くださるようお願い申し上げます。




2025/01/22


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