死神の首飾り(プレイ日記)


【第10回】 時給金貨60枚?

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 ……… 12(+2)/12 (戦闘時のみ)
 体力点 ……… 19/19
 運点 ………… 9/11
 金貨 …… 14
 宝石 …… 死神の首飾り
 食料 …… 8、黄金のリンゴ
 飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
 装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、たいまつ5本、銀の鎖帷子(戦闘時のみ技術点+1)、剣術の指輪(戦闘時のみ技術点+1)、陶製のバラ

〔289〜〕
 私は酒場レッドドラゴンを出る階段を登っている。酒場の暗がりで慣れた目に、昼下がりの太陽の光は少々まぶしく、つい瞬きしてしまう。この危険な酒場を訪れて、よく生きて出ることができたもんだ(運点+1)。再びセブンスィンストリートに戻って来た私は、これからのことを考える。歴史学者アポテカスには夕食までに戻ってくるように言われていた。確か、アポテカスの家は……。
 と、私のところに小さな少年が走って来た。 「ねえねえ。ある学者を助けてくれればお金になる話があるよ。大丈夫、時間はかからないから。」
 こういうのをジパングではキャッチセールスと言う。「絶対に儲かるから」は、主語が抜けている。「あなたとは言っていないよ」というのは詐欺野郎どもの常套手段だ。即ち「絶対に儲かるから、俺が。」という意味である。その手には乗らないぞ。私は聞き返した。
「誰のお金になるんだい?」
「勿論、あなたのお金ですよ。(僕も紹介料をもらえるんだけどね)
 まあいいだろう。私は少年に対して頷いた。
「じゃあこっちこっち。」
 少年は私の袖を引っ張って、道を歩いた。私は少年について行く。少年は私を学問の園に連れて行く。真っ赤なケシの花を咲かせた背の高い生垣にかこまれた修道院を抜け、タールを塗った木材とガラスでつくられた大きな温室の前に着く。学者であることを示す青いローブを着た男が二人現れて、私を出迎えてくれる。一人はひょろ長くて禿げている。もう一人は太っていて鼻眼鏡越しに私を見る。
「連れてきたよ。」
「おお、ご苦労さん。」
 そう言って、二人は少年に金貨2枚を渡す。少年はすぐさま立ち去る。そして痩せた方が私の方に向き直る。
「ようこそおいでくださいました。私はボロー、そしてこちらはポローニアスと申します。話はあの少年から聞いていると思います。」
 そして、もう一人の太った方が私に話しかける。
「あなたにお頼みしたいことがあります。もし引き受けてくだされば金貨20枚をお渡しします。所要時間は……そうですなあ、20分程で済みますよ。」
 20分間で金貨20枚、ということは、時給換算すると、なんと金貨60枚! これは破格の仕事だ。FFシリーズだから、大方戦闘に関する仕事だろう。レッドドラゴンの連中が怖れていたテュチェフとカサンドラに無傷で勝った腕前、見せてやろうではないか。私は2人に続いて温室に入って行った
「わしらは学者でな。生体解剖が研究課題じゃ。外科手術と魔法の両方を使って、新しい生き物をつくっておる。さて、わしらがつくったものを見てもらおうかね。」
 モローが温室の中を歩きながら、私に色々と話をしてくれた。やがて温室の中央に着く。そこには穴倉がある。穴の縁にはギザギザの歯が下向きについている。はしごが下ろされ、私達は下へ降りる。穴倉には檻があり、そこに恐ろしく醜い生き物が飼われている。上がワニで下がいぼだらけのオーガーという2つの頭、六本の手足、巨大なゴキブリの胴体を持つ生き物だ(ここをクリックするとイラストが出ます。見る勇気のある方のみご覧ください。)
 モローが興奮気味に言う。
「美しい怪獣ではないかね。見事な合成怪獣だ。」
 アポテカスの言っていた「合成怪獣」とはこのことだろうか? それにしても、この生き物が美しいだと? オーブの世界の美的感覚は地球とはだいぶ異なるようだ。
 ポローニアスがモローの言葉を続ける。
「わしらが必要としているのは、この怪獣の戦闘能力を試してくれる戦士なのだよ。戦闘用に造ったのだからね。大丈夫、心配することはない。これが君を傷つけようとしたら、ここにいるモローが呪文をかけて怪獣を眠らせることになっているから。」
 明らかにオスと思われるオーガーの顔が歪み、涎を垂らしている。引き受けてしまったこともあるし、まあいいだろう。
面白そうな仕事ですね。戦ってみましょう。但し、私が合図をしたら呪文をかけてくださいね。」
「引き受けてくださるか。ありがとう。勿論、君の安全は保障しますよ。」
 モローがまたもや興奮気味に言う。2人は上へ昇ってはしごを引き上げる。
 ガチャン!
 これは檻の柵が上がった音だ。すぐさま怪獣は餌代わりとばかりにこっちに飛びかかってくる。私も剣を構えた。2人の学者はノートとペンを取り出し、観察記録を取り始める。そういうところはプロの学者だなあと妙に感心してしまうが、今は合成怪獣と戦わなくてはならない。
 〔合成怪獣〕   技術点  8   体力点 12
 〔批判屋〕    技術点 14   体力点 19

[戦闘ラウンド(青字DDの値)]

[1R] ×〔合成怪獣〕8+14 < 21=14+〔批判屋〕○ ⇒ 〔合成怪獣〕体力点−2=10
[2R] ×〔合成怪獣〕8+12 < 18=14+〔批判屋〕○ ⇒ 〔合成怪獣〕体力点−2=8
[3R] ×〔合成怪獣〕8+16 < 21=14+〔批判屋〕○ ⇒ 〔合成怪獣〕体力点−2=6
[4R] ×〔合成怪獣〕8+14 < 21=14+〔批判屋〕○ ⇒ 〔合成怪獣〕体力点−2=4
[5R] ×〔合成怪獣〕8+1119 < 20=14+〔批判屋〕○ ⇒ 〔合成怪獣〕体力点−2=2

 ここで、私は2人に呼び掛ける。
「この合成怪獣はもう死にそうですよ。呪文をかけてくださーい!」
 私はモローに助けを求めた
「よしきた。イナカキ、ハンモュジ、ノコ!」
 だが、何も起こらない。合成怪獣は眠るどころか、瀕死の状況になっても私に襲いかかってくる。
「おや、何かおかしいぞ。」
 ちょっと待て、話が違うじゃないか。だが、合成怪獣は私に向かってくる。モローの助けを期待できない以上、やるしかない!

[6R] ×〔合成怪獣〕8+1018 < 20=14+〔批判屋〕○ ⇒ 〔合成怪獣〕体力点−2=0
 私の最後の一撃で合成怪獣は倒れる。多量の血と緑色の膿を流している姿を見るうちに、だんだん憐れみをおぼえてきた。
「上がってきたまえ。」
 穴倉にはしごが再び下ろされる。私ははしごを昇っていく。
 学者達は自分達がつくりあげた生き物が死んだのを見て悲しむ。
「申し訳ない。呪文が効かなかったようだ。君があれを殺さなければならなかったのは本当に残念だ。」
 モローがきまり悪そうに言う。だが、私はモローの言葉に納得はしなかった。自分達のつくり出した生き物を「あれ」呼ばわりするのも許せなかった。
「そのセリフは私に対してではなく、穴倉で死んでいる合成怪獣に言うべきではないのですか。あの怪獣は懸命に生きようとしていたのですよ。あなたがたの専門分野に関しては私は全くの素人ですが、これが倫理的に許されるかどうかの判断くらいはつきます。私が生きていたからまだよかったものの、もし死んでいたらどう責任を取るおつもりだったのでしょう。」
 私の頬に涙がこぼれていた。自分でも気づかないほどだった。
「それでは、報酬の金貨20枚を……」
「結構です。そのお金は合成怪獣を弔うために使ってください。」
「ですが、それでは……」
「いりません!」
 私の口調に、2人は黙り込んでしまった。やがて、ポローニアスが口を開く。
「では、代わりにこれを受け取ってはもらえませんか。これは困ったときの書と言って、あなたの運命を変えられるまじないが書かれています。1回だけしか使えませんが、どうぞお守り代りに。」
 そう言って、ポローニアスは私に“困ったときの書”を差し出す。私はそれを受け取り、温室を去る。
 地球でも“クローン”という生体実験がある。これは、ある生物と全く同じ存在の生物をもう一体つくり出すというものだ。だが、このクローン実験にも倫理的な問題が掲げられている。合成怪獣との戦闘で、この倫理的な問題の理由が少し分かったような気がした。
 やはり、うまい話には注意しろというのはジパングでもオーブでも同じなんだろうなあ。そんなことを思いながら、私はアポテカスの家へ向かった。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 ……… 12(+2)/12 (戦闘時のみ)
 体力点 ……… 19/19
 運点 ………… 10/11
 金貨 …… 14
 宝石 …… 死神の首飾り
 食料 …… 8、黄金のリンゴ
 飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
 装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、たいまつ5本、銀の鎖帷子(戦闘時のみ技術点+1)、剣術の指輪(戦闘時のみ技術点+1)、陶製のバラ、困ったときの書
 (Save Number:176→273)

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2024/11/07


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