死神の首飾り(プレイ日記)


【第6回】 死神の使者との遭遇

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 ……… 12(+1)/12 (戦闘時のみ)
 体力点 ……… 19/19
 運点 ………… 11/11
 金貨 …… 10
 宝石 …… 死神の首飾り
 食料 …… 8、黄金のリンゴ、
 飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
 装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、たいまつ5本、銀の鎖帷子(戦闘時のみ技術点+1)

〔130〜〕
 私は、リランサの唇の感触を思い出していた。リーブラは私を不貞な男だと思っているだろうか。理由はどうあれ、リランサの(に)唇を奪った(奪われた)事実は変わらない。だが、これも天命だ。元を辿ればリーブラが安請け合いをしたのが原因だ。文句を言われる筋合いはない。
 そんなことを考えながらストアストリートを歩いていると、全体的に店が閉まりかけていた。もうそんな時刻なのだろうか。と、二頭の黒馬に牽かれた大きな黒い馬車を通そうと、家路に急ぐ人混みが二つに割れる。黒馬は二頭とも黒い羽毛で飾られた冠をかぶっている。外套を着た馭者が陰気な表情で前を見つめている。おい、馭者よ、お前が何者だか知らんが、歩行者優先というのを知らんのか。本来ならばお前がお願いする立場なのに、どうしてお前が我が物顔で道路を通ろうとするのだ。それとも、これがグレイギルドの決まりなのか。
 私は馭者を睨みつけた。御者はそんな私を見て、馬を止める。どうやら私を轢き殺すつもりはないようだ。馬車を降りて、馭者がこちらに近づいてくる。銀のステッキを持った男だった。銀色のサテンのシャツと黒纏の毛皮のコートを着ている。店の主人はこいつの到来を歓迎しているようだ。本当にそうか? 心から思っていないことだけは分かった。何しろ、店の主人の笑顔は引きつっていたからだ。それでも馭者は主人の“笑顔”に頷き返すと、今度は私の方に顔を向ける。
「私は死神様の使者である。お前の持っている首飾りを取りに来たのだよ。」
 その口調は穏やかだが、私には命令口調に聞こえた。私が身構えると、目の前でびっくりするような変身が起きる。



 毛皮のコートは襤褸布になり、青い目が輝いていた顔は、今やひびの入った黒い頭蓋骨に変わり、落ち窪んだ二つの眼窩がこちらをじっと見つめている。骸骨の手には錆びついた細身の長剣が握られている。しかも、この変身に気づいているのは私だけのようだ。というよりは、この馭者は私にしかこの姿を見せていないとも思える。と、馬車の布が翻り、中の様子が見えた。真っ黒な棺があり、その蓋には銀色の文字で何かの字が彫り込まれている。……<批判屋>って、私の名ではないか!
「さあ、首飾りをわたせ」
 馬鹿め、誰が渡すか。ここで首飾りを渡したら、千葉県野田市教育委員会のように、脅しに屈したことになる。十字軍の四人やウォードマン、そしてリランサの期待を裏切るような真似は絶対にしないぞ。ここで、持っていないと嘘をついても良いのだが、それじゃ芸がないなあ……そうだ。ちょっとした罠を思いついたので、仕掛けることにした。
「その首飾りとやらは、これのことか。ちょっと確認してくれ。」
 そう言って、私は、首飾りの一部を使者に見せた。
「あ? どれどれ……」
 使者が無防備に近づく。よし、いいぞ。
「おお、これだ。早くよこ……ギャッ!!」
 最後の声は、私が奇襲攻撃をかけたときの奴の悲鳴だ。
「何をする! <批判屋>、貴様、私を騙したな!」
 騙すだなんて人聞きの悪い。もともとお前に渡すつもりなんかないよ、このバ〜〜カ!
「ええい、こうなったら貴様を殺して奪い取ってやる!」
 ふん、どうせ渡そうが渡すまいが私の命を奪おうとしていたんだろうが。さあ、オーブの世界初の戦闘だ。この死神の使者の持つ剣も魔法の力を持っており、戦闘で私が負傷した場合、通常の体力点の減点とともに技術点1も失う。厄介な敵に出くわしちまったぜ!
 〔死神の使者〕  技術点  8   体力点 
 〔批判屋〕    技術点 13   体力点 19

[戦闘ラウンド(青字DDの値)]

[1R] △〔死神の使者〕8+1119 = 19=13+〔批判屋〕△

 死神の使者は物凄い勢いで突進してきた。危ないところだった。母なる神の御加護が早速あった。

[2R] ×〔死神の使者〕8+12 < 19=13+〔批判屋〕○ ⇒ 〔死神の使者〕体力点−2=2
[3R] ×〔死神の使者〕8+1119 < 20=13+〔批判屋〕○ ⇒ 〔死神の使者〕体力点−2=0
 これでとどめだ! 渾身の力を込めた一撃は……スカッ! 手ごたえがないぞ。死神の使者は地面の上にくずおれてゴミの山のようになってしまう。風がヒューンと音を立てるだけで、辺りは物音一つしない。回りの連中はと言うと、この戦闘に誰も気づいていないようだ。馬車は影も形もない。何だったんだ、あれは……。
 気を取り直し、再びストアストリートを歩くことにする。通りすがりに見た宝石店の前には閉店という看板が立てられている。大方さっきの死神の使者の仕業だろう。左へ曲がると、ブッカーの散歩道という名の並木道に出てくる。道の両側に灰色の石でつくられた大きな建物がある。空色のトーガを着た白髪の老人に率いられた青いトーガの若者の一団が向かい側の建物に入っていく。書物と巻物を描いた旗が私のすぐそばの建物で翻っている。こちらは図書館らしい。そうだ、この町は“学問の都”とか言っていたな。図書館でオーブの世界における情報をつかめるかもしれない。
 私は図書館の入口まで行く。ホールには机がいっぱい並べられ、そこでは筆記者と呼ばれる人達が書物や巻物を一生懸命に写している。オーブの世界には印刷技術は地球ほど発達してはいないらしく、筆記者という人達が書写という方法で本を“増刷”しているのだろう。そういう意味では、グーテンベルクの存在が如何に偉大かを知ることができる。
「ようこそマンマルクの大図書館へ。知りたいことがあれば、どんな本でも巻物でもお選びなされ。わしが手助けして差し上げよう。あなたは何を知りたいのかな。」
 そう私に声をかけてきたのは、学者風の老人だった。空色のローブを身につけている。恐らく学者であることの証なのだろう。銀の鎖帷子を身につけている私には場違いかもしれない。だが、それでも私は情報を得ようとする。学者のお薦め本としては、神々について書かれた本と、グレイギルドの歴史についての本だった。まずは、神々について知りたい。私がここへ来ることになったのも、オーブの神々の勝手な意向だからな。
 学者は私に「神々の書」という本を差し出す。金箔押しで革製の大きな本だ。この町は何もかも一回り大きい。ページをめくって読み始める。
 オーブの神々と一口に言っても、色々と神が多いようだ。ジパングでも十月はシマネのイズモタイシャというところに“800万(やおよろず)の神”が集まるというから、それはあまり驚かない。更に読み進める。
 私をこの町に連れてきた女兵士どもが唱えていた神々を示す図があるぞ。どうやら女兵士どもの女神はフェル=キリンラといい、天国を守る女剣士の守護神らしい。フェル=キリンラはパラディンの神であり、善を司るロシュバルと敵対関係にある。更にページをめくる。
 死神の首飾りについての説明文があったぞ。死神の首飾りとは、それを用いると、半分死んで半分生きている死神の使徒達に命令を出せるものだという。
 続くページには母なる神についての説明が出ている。母なる神とは自然そのものであり、生きるものすべてを守る神なのだ。
 次のページには、秩序を乱しあらゆるものを破壊する神、アナーキルを描いた挿絵も目にする。見るからに恐ろしげな雰囲気だ。その反対に、光の神、アヴァタール・ワンもいる。
 と、ここで我に返る。外はもう夕焼けだ。そろそろ図書館も閉館の時間だろうか。今日はグレイギルドの歴史についての本は諦める。私は「ありがとうございました。」と言って学者に本を返すと、図書館を出る。安全に眠れる場所――宿屋が見つかるといいのだが。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 ……… 12(+1)/12 (戦闘時のみ)
 体力点 ……… 19/19
 運点 ………… 11/11
 金貨 …… 10
 宝石 …… 死神の首飾り
 食料 …… 8、黄金のリンゴ、
 飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
 装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、たいまつ5本、銀の鎖帷子(戦闘時のみ技術点+1)
 (Save Number:336→186)

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2024/10/17


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