死神の首飾り(プレイ日記)
【第2回】 十字軍の最期
〔STATUS
(現在の値/原点)
〕
技術点 ……… 12/12
体力点 ……… 19/19
運点 ………… 11/11
金貨 …… 0
宝石 …… なし
食料 …… 10
飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、たいまつ5本
〔13〜〕
鎖かたびらをつけ、矢を番えた弓を持った女が、目の前にある松明の炎の中に現れる。
女は私を見るとすぐに、その矢の狙いをこっちに定める。お世辞にも歓迎されているとは言えない。女の後ろには、大きく息を吐いている3人の男がいる。一人目は背が高く、顔立ちが整っているピカピカの銀の鎧に身を包み、仄かに白く光る剣を両手で握りしめている。二人目は金色の布で織ったローブを着込み、顔には黄金の仮面をつけている。その仮面が笑っているので、ジパングの素顔同盟(すやまたけし著)を思い出した。また、よく見ると象牙の杖も持っている。三人目は太ってがっしりした男で、鎧の上にコートを羽織っている。赤い十字架がその胸を飾り、腰の脇に先の尖った矛をぶら下げている。再び、私は先程聞こえた吠え声を耳にする。
「もうすぐ、あいつらに追いつかれてしまうぞ」
一人目の男が叫ぶ。そして、前方にいる女が私に向かって呼びかける。
「お前は何者だ。この邪悪な者達でいっぱいの魔窟で一体何をしているのだ。」
はあ? ここが魔窟? それも邪悪な者達でいっぱい? オーブの神々め、こんな危険な世界に放り込みやがって。だが、今はこの四人に対峙する方が先だろう。
「ここが魔窟って、どういうことだ?」
女戦士は一瞬びっくりしたようだったが、気を取り直して改めて呼びかけた。
「質問に対して質問で返すとは……。そうとも、ここは魔窟だ。で、お前は何者で、ここで何をしているのだ?」
もう訳分からん。半分やけっぱちになりながら、私は自分の境遇――傍から見ればどう見ても作り話にしか思えない――を答えた。
「私は
別世界からやって来た
。地球という星のジパングで昼寝をしていたら、オーブの神々とかいうわけの分からない連中に呼び出されて、世界のバランスとかいうわけの分からない話を聞かせられて、挙句の果てにはわけも分からず上空から突き落とされて、気がついたらわけも分からずここにいた。お前さん達こそ何者で、ここで何をしているのか、こっちが聞きたいくらいだよ。って言ったって、どうせこんな荒唐無稽な話なんか信じてくれないだろうがな。」
彼女の目は驚きで丸くなる。四人全員が信じられない表情で私を見つめる。ふん、どうせ「嘘に決まっている。」とか言うんだろう。一人目の男が「笑っている」男――僧侶だろう――に、尋ねる。
「今の彼の話は本当だろうか。」
「ふむ、待っておれ。今確かめる……なんと。これは真実の話じゃよ。この人は心の底から本当のことを話しておる。」
ほらね、やっぱり信じてくれた……って、信じてくれるの? こんな作り話みたいな話を。だが、四人の私に対する警戒心が安堵感に変わっているのは雰囲気で分かった。
僧侶は女戦士に、弓を下ろすよう「笑いながら」命じる。女戦士は言われた通りにし、地下室の入口の方を警戒しようとそちらへ向かう。
「さて、我々はどうしたらいいだろう。出口は塞がれてしまったし、今の私の力では、念力で外に連れ出されるのはたった一人だけなのだが」
僧侶たちがチラチラと私の方を見ながら言う。すると、それまで一度も口を開かなかった三人目の男が口を開く。
「恐らく、彼は我々の使命を全うさせるために、神々が使わせ給うた選ばれし方では。」
「そうじゃ、わしもそう思う。」
どうやら、悪い人達ではなさそうだ。私は遠慮がちに声をかけてみる。
「あの……、私の言っていることを信じてくださったということで、よろしいでしょうか。」
「もちろん!」
四人が異口同音に答えた。そして、僧侶が“笑いながら”私に近づき、このオーブについての話をしてくれた。
「昔むかしのことじゃ。“ルーンの都”で死神の使徒達が、一つの首飾りをつくった。この首飾りがあると、彼ら死神の使徒達は、いつの日か彼らの主人である死神をこの世界へ招き出すことができるというものだ。そのときが今、来ているのだ。もし死神が招き寄せられれば、あらゆる生命が死に絶えることになるだろう。死神の使徒達だけが、あの語るだにおぞましい半死半生の姿で生き長らえることができる。そして彼らの世界が、このオーブの世界――我々が今いるこの世界――の至るところに灰色の影となって広がっていくことになるだろう。すべてが灰になり、自然界のバランスも永遠に崩されたままになるだろう。神聖な人々の一団であるシラカブの賢者達がこの事態を防ごうと努力した。彼らは死神の首飾りを奪い取ろうと十字軍をつくった。その十字軍も、今や我ら四人が生き残っているだけだ。使徒達の“姿なき王”は、この魔窟の奥深く死神の首飾りを隠していたのだが、そこに我々は入り込み、こうやって今、これを手にしているのだ。」
そう言って、彼はローブの下から首飾りを取り出す。ルビーに髑髏を彫り込んだ黒曜石の飾りがつけられている。
「そう、これこそが“死神の首飾り”じゃよ。これをお主に渡そう。オーブの民全員に代わってお願いする。この首飾りを持って、お主の住む世界である地球まで持って行ってくれ。この首飾りを破壊することは不可能じゃ。しかし、お主が地球までこれを持ち帰れば、もはや“姿なき王”の威力が二度とオーブに及ぶことはなくなる。持って帰るだけで十分なのじゃ。」
ジパングのファーストフード店の“お持ち帰り”のように言うが、そう簡単にはいかないことは容易に想像がつく。この人たちは純粋に自分達の使命に忠実なのだろう。私は
死神の首飾り
を受け取る。首にかけると冷たく、重く感じられる。肩が凝りやすい私にはかなりの重労働になるだろう。首飾りを受け取った私に僧侶が満足したのか、話を続ける。
「さて、これからわしは貴殿を地上に送り出すために魔法の力を使うことにする。地上に出たら、まず西に向かい、学問の都“グレイギルド”まで行きなさい。その都で、貴殿は自分の世界に戻る道を見つけることができるはずじゃ。そして、この金貨も受け取ってくだされ。きっと役に立つだろう。」
僧侶は、
金貨10枚
入りの財布を私に手渡す。と、そのとき……
「畜生、とうとう来やがったか!」
ダークエルフとケーブトロール達が魔窟に押し寄せ、二人の戦士が剣と矛で戦う。彼らは見事な武器のさばきでケーブトロールをほぼ全滅させる。一方、女戦士は遠くから驚くほどの正確さでエルフ達を弓で射止める。だが、ダークエルフは魔術で応戦する。ダークエルフ達は戦士二人に術をかける。戦士二人はほぼ即死状態でその場に頽(くずお)れた。そして今度は私の方に……
「キャーーーーーッ!!」
ダークエルフと私の間に入ったのは、女戦士だった。女戦士は私の身代わりとなったのだ。女戦士が息も絶え絶えに私に凭れかかり、か細い声で言う。
「ごめんなさい、あなたに弓矢を向けて……最後に、私からもお願い……首飾りを地球へ……」
そう言って、女戦士は床に倒れた。あまりにも急な出来事のショックで、私は動くことはおろか、一言も発することができない。やがて、巨大な悪魔の影が高らかに吠えたそのとき、僧侶がまじないをかけ終えた。
「これでよし。頼む……うぎゃっ!」
僧侶が“笑いながら”悲鳴をあげる。四人の十字軍が全滅した次の瞬間、目の前が灰色に染まった。
〔STATUS
(現在の値/原点)
〕
※ 変化があったものは
赤い太字
技術点 ……… 12/12
体力点 ……… 19/19
運点 ………… 11/11
金貨 ……
10
宝石 ……
死神の首飾り
食料 …… 10
飲み薬 …… ツキ薬(原運点+1まで回復)
装備明細 …… 剣、革の鎧、ザック、たいまつ5本
(Save Number:125→185)
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2024/09/28
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