雪の魔女の洞窟(プレイ日記)


【第15回】 悍(おぞ)ましき死の呪い

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 … 12/12
 体力点 … 10/19
 運点 … 4/9
 特筆点 … 魔神をプリズムから救い出した、<グル・サン・アビ・ダァル>
 金貨 … 248
 食料 … 2
 飲み薬 … ツキ薬(原運点+1の値まで回復)
 所持品 … 剣、戦鎚(ハンマー)、マント、魔法の銀の笛ルーン文字の刻まれた棒、<勇気の護符>、石投げと鉄の玉1つ、金の指輪、銅の指輪、ミノタウロスの角の粉末ニンニク、龍の卵、四角い金属板、盾

〔38〜〕
「ん?赤速、何か言ったか?」
 赤水川の岸に沿って歩いていると、涼しいにも関わらず私の体からは汗が噴き出し、めまいを覚える。スタブとの別れが原因のさよならのめまいではなさそうだ(このネタが分かる人はちょっと古いかも…)。赤速を見ると、彼もまた元気とは言いがたい様子をしている。顔は蒼白で、目は光がなく落ち窪んでいる。
「まあ、座れよ。ついに話す時が来た。」
 赤速が苦しげな声で言う。一体何のことだ?私は草の上に座り込む。心臓が早鐘を打っているので些か不安になる。
「雪の魔女の洞窟を通り抜けたときに羊皮紙が釘付けにされた戸口を通りかかったのを覚えているか?」
 ああ、覚えているとも。いきなり赤速に怒鳴られたからな。だが、それは口にはしない。
「君は書いてあることが読めなかったんで僕に読んでくれと頼んだだろう。」
「ああ、頼んだよ。でも、何が書いてあるかはまだ君に教えてもらっていないな。」
「あれは……<死の呪文>だったんだ。」
「な〜んだ、<死の呪文>か。ははは…えっ…………」
「あの羊皮紙にはこう書いてあったんだ。〜〜この文字を見た者は<死の呪文>に身を蝕まれて死すものなり!!雪の魔女。〜〜
 私は顔面蒼白となった。ほんの興味本位の羊皮紙が、身の破滅を招くとは…。
「僕らはもうおしまいだ。思ったより早く効き目が表れた。」
「とすると……スタブもか?スタブも今頃苦しんでいるのか?」
「いや、スタブは大丈夫だ。彼は背が低かったから、幸いにも羊皮紙の文を見ずに済んだ。だから、僕はせめてスタブだけには読ませまいと、羊皮紙を破いて燃やしたんだ。」
 これで赤速があのとき怒鳴っていた理由が分かった。時機を見計らってこの話をしようということだったんだな。そして、今がまさに時機というわけだ。
「こうなっては<癒し手>と呼ばれる山の老人を探さなければならない。だが、もう遅すぎるかも…。足からすっかり力が抜けてしまって、もう立ち上がれない……。」
 だが、私はまだ立ち上がれるぞ。なぜだろう。だが、如何なる理由があるにせよ、今の私がするべきことは1つしかない。私は赤速に手を貸して立ち上がらせた。
「そうか、君は闇エルフの健康薬を飲んでいたんだね。ならば君だけでも<癒し手>に会ってくれ。僕はもうだめだ。」
「そうはいかない。私があんなことを頼まなければ、今頃こんなことにはならなかったんだ。本当にすまない。」
「いいんだ。どうせ氷の洞窟での奴隷暮らしは死んだも同然だったのだから。それに、悪いのは<批判屋>じゃない。<死の呪文>を仕掛けた魔女だ。」
 私は哀れな赤速を背中におぶる。幸いエルフの体重は軽く、何とか前進できる。1時間くらい前進したころだろうか、ふいに赤速の体重が重く感じられる。
「赤速…。」
 だが、背負っている親友から返事はなかった。<死の呪文>がついに赤速を打ち負かした。
「赤速ぁぁぁぁ!!」
 私は叫びながら、友の死を悼んだ。緑の草地に葬り、赤速から形見の品を持ち去る。赤速の死は悲しいが、泣いてばかりもいられない。ぐずぐずしていると、私も赤速と同じ運命をたどることになる。急いで月岩山地へ向かおうとするが、体が弱っていて速くは歩けない。技術点1と体力点1を失う。山地の麓に近づくにつれて地面の勾配が急になり、どちらへ行けば癒し手が見つかるかわからない。このまま東に向かうか、それとも前方に見える吊り橋を渡るか。今の体調で吊り橋なんか渡ったら谷底へ真っ逆様……なんてこともあり得る。ここはこのまま東に向かうことにする。
 川に沿って歩いていると、川幅が狭くなり、地面の勾配が急になる。山地を登るうちに刻一刻と力が抜けていくのを感じる。体力点1を失う。中が空洞になっている大きな切株を見るが、何とも思わず通り過ぎようとする…が、ちょっと待て。太い蔦が根っこの部分にくくりつけられ、切株を這い上がって縁(ふち)の向こうまで続いているのに気づく。中を覗いてみると、蔦が黒い深淵に姿を消しているのが見える。もしかすると、この中に癒し手がいるのかも知れない。…だが、いきなり蔦を降りるほど私も愚かではない。まず、この蔦が安全かどうかを確かめるために、蔦を引っぱってみる。私の判断が正しいのはすぐにわかった。蔦を外光の中に引き上げてみると、ぞっとするような肉蛆がうじゃうじゃ集(たか)っているのが見える。潜り込める生きた肉体を求めて目のない頭部がうごめいている。危ない危ない…。肉蛆の一匹が手の甲に這い移るが、大丈夫だ。すぐに引き剥がし、足で踏みつぶす。運点1を加える。無論こんなところに癒し手がいるはずもない。私は渓谷を歩き続けることにする。
 渓谷を歩いていると、左の方に川岸から木々へと通じる細い小道が見える。癒し手はこういうところに住んでいる可能性が高い。小道をたどって行くことにする。小道は木々の間を曲がりくねった挙句に木造の小屋の外で行き止まりになる。小屋に忍び寄って窓から中を覗き込む。紫の衣をまとい、頭にぴったりした灰色の縁なし帽をかぶった老人がごてごてした飾りのついた木彫りの揺り椅子に腰かけて眠っている。背後の壁の棚には薬草や木の実の入ったビンがずらりと並んでいる。これはもしかすると…。迷わず小屋に入ることにする。コンコン…。失礼します。小屋に入ると男の片目が開く。だが突然の来客にも案ずる様子はなく、揺り椅子に体を預けたままだ。この余裕さは、ひょっとすると…。
「あのぉ、すみません。貴方様は癒し手ではありませんか。」
 老人は椅子からぱっと立ち上がる。
「いかにも。どこがお悪いのかな、よそのお方。」
「実は、私は<死の呪文>にかかっているんです。氷の洞窟を通り過ぎようとしたときに、<死の呪文>が書かれた羊皮紙を読んでしまい、今まさに命を削り取られている最中なんです。何とかなりませんか。」
 老人は微笑して言う。
「<死の呪文>とな? 帳消しにするのは簡単です。薬草を混ぜてこしらえた私の特製の薬がひとビンあればよろしい。」
「ああ良かったぁ…。ありがとうございます。」
「なんのなんの。金貨50枚では安いものですよ。」
 金貨50枚で助かるならば確かに安いものだなぁ…って、ちょっと待て。人の命を救うのに金を取るのか。確かに手元には金貨248枚があるが、もし私が一文なしだったら助からないということだぞ。昔から「貧乏人が医者にかかれずに死んでいくということはあってはならない」と言われているが、本当にこのじいさんは癒し手なのか? 老人は一歩も譲らぬ様子で、こちらが金を出すのを待っている。ここは一か八かだ。
「やい、ク★ジ★イ!!」(自主規制)
 私は剣を抜いて老人に詰め寄り、脅しをかけた
「なぜそんなに人の命のかかった金が欲しいんだ。確か癒し手というのは博愛主義者だと聞いている。なんで人の命を救うのに金貨50枚も要求するのか説明しろ。こっちは命がかかっているんだ。貴様を殺すことなんぞ造作もない。」
 老人を壁に押しつけ、剣の切っ先を顎の下に突きつける。老人は震え始めて言う。
「わかりましたよ。あいすみません。私は癒し手じゃないんです。ただの薬草屋なんですが、ここのところ運に見放されて。どうせじきに無用の長物になる金なんだから少しくらいもらっても構いやしないだろうと思ったんです。馬鹿な真似だったのがわかりましたよ。どうです、私の作った丸薬をあげましょう。痛み止めなんですが、少しは役に立つかも知れない。もちろんお代はただですよ。」
 どうやらこの老人、根からの悪者ではなく、自棄になっていただけのようだった。老人は壁に押しつけられながら衣の中に手を入れて小さなビンを取り出す。ふたを開けると緑色の丸薬が3つ入っている。老人はそれを私に手渡す。恐らくこの薬は本当の痛み止めだろう。だが、万が一毒薬だったら…。そこで、私は剣を老人の喉元に突きつけながら言う。
「もしこれが毒薬だったら、私は死ぬ前にあんたの喉を刺す。」
 そう言って私は丸薬を飲み下す。薬草屋の言葉に嘘はなかった。丸薬は痛みを和らげてくれ、わずかながら楽になる。体力点4を加える。私は剣を引っ込める。
「ありがとう。だが、今後はあまり人の弱みに付け込むような真似はしない方がいいぞ。」
 老人は怯えながら首を縦に振るだけである。多分、命があるだけでもありがたいと思ったのだろう。それ以上は老人に関わろうとせず、私は小屋を出て、再び渓谷を歩き出す。何としても本物の癒し手を探さねば。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 … 11/12
 体力点 … 12/19
 運点 … /9
 特筆点 … 魔神をプリズムから救い出した、<グル・サン・アビ・ダァル>
 金貨 … 248
 食料 … 2
 飲み薬 … ツキ薬(原運点+1の値まで回復)
 所持品 … 剣、戦鎚(ハンマー)、マント、魔法の銀の笛ルーン文字の刻まれた棒、<勇気の護符>、石投げと鉄の玉1つ、金の指輪、銅の指輪、ミノタウロスの角の粉末ニンニク、龍の卵、四角い金属板、盾
 (Save Number:346→205)

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2014/08/10


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