モンスター誕生


 アランシア東部のトロール牙峠全域は、妖術師ザラダン・マーの支配下にある。
 ザラダンは、あの火吹山の領主ザゴール、そして<黒い塔>の主バルサス・ダイヤと共に学んだ間柄である。三人は友人でありながらライバルでもあった。彼らは自分達の師であるヴォルゲラ・ダークストームを殺し、それぞれの地で支配者になったと言われている。
 ザラダン・マーは、エルフの隠れ里スティトル・ウォードを見つけてエルフ達の“煙”を手に入れようとしていた。“煙”さえ手に入れば、アランシア全域を支配することなど何でもない。しかし、スティトル・ウォードは地上からの探索では見つからなかった。そこで、ザラダンは空から探索することを考え付いた。そのためには飛行船を手に入れる必要がある。そこで、ザラダンはガレーキープ号の掠奪を画策し、実行に移した。
 ザラダンがガレーキープを手に入れた以上、もはやザラダンがアランシアを征服するのは時間の問題である。

 一方、この冒険の主人公は、本能のままに動くモンスターだった。ザラダンがアランシアを征服しようとしていることなど知る由もないし、知ろうとも思わなかった。ただ、自分の欲望さえ満たされればそれで良かった。主人公の現在、過去、そして未来は、ただ主人公の本能の赴くままである…。

 FFシリーズ24巻『モンスター誕生』は、英スティーブ・ジャクソンの最後のゲームブックです。この作品を最後に、彼の作品は出ていません。「同じものは二度以上書かない」という彼の信念からすると、もうネタが尽きた頃だったのかもしれませんね。
 英ジャクソン最後の作品ということもあり、これまでのFFシリーズの基本ルールがいくつか変わっています。冒頭のルール説明にも「(注)このゲームのルールは、従来のファイティング・ファンタジーのルールと異なる点がいくつかあります。必ずルールを読んでください。」と明記されています。異なると言っても、能力値の設定や戦闘のシステムがまるで違うという意味ではなく、モンスターらしい修正が加わっているという意味です。
 「異なる点」は二つあります。戦闘で失う体力点即死ルールです。
 モンスターである主人公は、全身が固い鱗に覆われています。この鱗は、他の冒険で装備する鎧以上の効果があります。それを考慮して、戦闘の1ラウンドで負けても失う体力点はわずか1点です。更に、特別な敵を除いては毎戦闘ターン6分の1の確率で相手を即死させることができます。ですから、主人公の原技術点が7であっても、戦闘ではかなり有利に運びます。尤も、原技術点が7のモンスターがいるかどうかも疑問なところですが、それについてはこれまでに6巻や12巻などで出て来た「技術点の補正」をしても良いと思います。戦闘面でこれだけ有利なので、死ににくいのではないかと思われますが、そこはそれ、その分知性や知能といった点で制約があります。これについては、ストーリー篇で詳しく述べることにします。
 そして、今回の「背景」は、なんと20ページもあります。これだけでも、読み物として十分読み応えがあると思います。尤も、すぐに冒険に入りたいという人にはあまり向かないでしょうが、これを読めば“HAPPY END”になったときに「ああ、ここでこういうことが起きたんだな」と、よりこの冒険のストーリー性がつかめると思います。この「背景」は、FFシリーズの世界を著した『タイタン』(1990年 社会思想社)とも関連しています。
 24巻『モンスター誕生』の総項目数は従来のFFシリーズの15%増しの460項目となっています。
 そのため、『モンスター誕生』のストーリーに関しては、前半(地下道〜地上まで)と後半(地上〜エンディングまで)に分けたいと思います。

ストーリー篇(前篇)
ストーリー篇(後篇)
2005/06/27


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