フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第88回】アレシアの新時代

 あたし達はルテティア城へ入った。初めてここに来たときは、下っ端の門番達に通せんぼをされたわよね。でも、今は門番達もあたし達の顔を見知っているから挨拶をしてくれるわ。まずは、ロジーナの家へ行こうっと。



 そう言えば、アネットはユーグの許嫁と聞いたけれど、ついにアネットも妃になったのね。



 まあ、これも時代の流れよね。アネットが誰と結ばれても、おいそれと会いに行けなくなるわよ。おいそれと会いに行ったら、子離れのできない親の烙印を押されてしまうわ。
 じゃあ、あたし達はお城へ用があるから、そろそろ行くわね。ついでにアネットにも会いに行くから。
 さて、ルテティア城にオリビアがいるはずだわ。事情を説明して、早くブリタニア国王への親書をもらわないと、ブリタニア国王の命が危ないわ。魔族側もあたし達がフィンブルの冬を「邪魔」しているのを知っているでしょうから、今すぐというわけではないと思うけれど、でもそれも時間の問題よ。



 やっぱり駄目かあ。取り敢えず、アネットのところへ。
 ユーグ王子……ううん、今はもうユーグ国王ね。そして、隣にはアネット王妃が座っていたわ。



 ちょっとちょっと。何、今の言葉は? 「引っ掛ける」なんて、王妃の言葉じゃないわよ、アネット。あなたももう「お妃様」なんだから、言葉の使い方には気をつけないと、アネット王妃語録に「いい男を引っ掛けた」なんて残っちゃうわよ。



 ユーグの言う通りよ。……って、2人の結婚と即位を祝うのもいいけれど、あたし達は別件でここに来たのよ。
 あたし達はユーグに事情を説明した。
「うむ……事情は分かった。だが、今伯母上は、とても話ができる状況ではない。もしよければ、母上に相談するがよい。」
 そう言えば、ニーナはオリビアの双子の妹だったわよね。だったら、何とかなるかも。



「まずは、ユーグ国王の即位、おめでとうございます。」



「どちらも喜ばしいと存じます。アレシア王国の新時代到来ですね。」
「そうかそうか。アレクよ、そなたもそう思うか。誠に結構なことじゃ。」
 アレク、うまく返したわね。って、アレク、早く本題を。

  • フィンブルの冬を完成させるべく魔族達はブリタニア国王の血を狙うことは必至である
  • ブリタニアは内戦中で、外国の者が入ることは至難の業である
  • そこで、ブリタニア国王の妹であるオリビア王妃に親書を書いてもらおうと、このルテティア城へ来た

  • 「そうじゃったのか。残念ながら、姉のオリビアは今何かできる状況ではない。」
     それは、あたし達も聞いたわ。ごはんも喉に通らず、やせ細って人前にも出られないような状態では、多分親書は書けないわよね。
    「じゃが、私でよければ親書は書くぞよ。」
     ああ、そうか。ニーナが書いてもいいんだ。ニーナもブリタニア国王の妹なんだから。



     と、ここで、アレクの「携帯電話」が鳴った。
     アルベルトは、ユーグとニーナに即位の祝辞と、フィンブルの冬が差し迫っていることを説明した。
    「アレク、御足労をかけるがブリタニアへ行ってきてくれ。」
    「承知いたしました。」
     アルベルトとアレクの通話が終わる頃、ニーナが親書を書き終えた。
    「アレクよ、これが親書じゃ。わらわもそなたの役に立てて光栄じゃぞ。」
    「ありがとうございます、王妃様。」
     アレクのその言葉に、ニーナの眉がピクリと動いた。
    「王妃様……じゃと……」



    「失礼しました、ニーナ様。」
    「“様”はいらぬ。ただのニーナじゃ。」
     そういうニーナのアレクを見る目は真剣で、涙すら浮かべている様子だった。
    「ニーナ……」
    「聞こえんぞ。もっと大きな声で言うのじゃ。」
    「ニーナ……」
    「もっと大きな声で。」
    「ニーナ……」
    「もう一度呼んでおくれ。」
     アレクに「ニーナ」と呼ばれていくうちに、ニーナの目から涙が零れ落ちていった。
    「ニーナ!」
    「アレク〜〜!」
     ニーナは玉座から立ち上がり、アレクを抱きしめた。
    「アレクよ。我が良人はもうおらぬ。もう誰もわらわのことを『ニーナ』と呼び捨てで呼ぶ者はおらんのじゃ。と言って、誰彼構わずというわけにもいかぬ。じゃから、せめて、今だけは、今だけは〜〜〜!」
     あたしの目からも自然に涙がこぼれていた。リーゼルもクリスもソフィーも、そしてアネットも泣いていた。ユーグとゲクランと大臣と兵士はただ黙って見守っていた。
     この謁見の記録が残されることはなかったわ。ニーナも寂しかったのよね。
     四半時(30分)後、落ち着きを取り戻したニーナの表情は晴れ晴れとしていた。



     そういうニーナ前王妃の、アレクを見る目は以前と違っていた。ダメよ。アレクはあたしのものなんだから。
     でも、夫に先立たれた王妃の生理的欲望を満たす方法はあってもいいかもね。王妃に先立たれた王だったら、次の王妃を募集することは難しくはないけれど、王に先立たれるとちょっとね……。これも男尊女卑といえば男尊女卑かもしれないけれどね。
     さあ、レイリア城へ行くわよ。エンリケが船を調達してくれている頃だわ。


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    2022/08/07


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