フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)
【第87回】迫りくる冬
この騒ぎを聞いて、アルフォンソの弟フェリペも会合場所に駆けつけていた。
「実は、会合の途中に神たちに襲撃されて……」
ソフィーがフェリペに報告した。
フェリペは、神によって会合中の王たちが襲撃したことをレイリア城へ報告する係や両国の王の遺体を運ぶ係を指名した。
「使者殿、取り敢えず神を退治してくれたことに感謝の意を述べる。今日は宿屋で休むが良い。」
あたし達は、取り敢えずレオンの宿屋へ向かった。
アレクは神の一撃で負傷していたが、リーゼルの手当のお蔭で回復できたようね。
翌朝、あたし達はレオン城へ向かった。
セシリアは別室に引き籠り、その入り口には女性の従者が立っていたわ。
そうよね。セシリアは、自分の夫と父親を同時に殺されたのよね。ショックのあまりまともな思考ができなくなっても不思議ではないわ。でも、これも天命よ。犠牲となった使者の遺族の哀しみだって同じなんだから。
「すまんが、アルベルト殿と話がしたい。今、可能か?」
ラツィオのビアンカのときと同様に、こっちからアルベルトにもかけられるのよね。
フェリペとアルベルトの話を箇条書きにすると……。
フェリペからアルベルトに、これを機にレオンとバイエルンが協力し合う提案がなされ、アルベルトは快諾する
アルフォンソとセシリアの間に子供がいないため、次期国王は恐らくフェリペになるであろう
アルベルトはアレク達にブリタニア王国に行ってもらうことをフェリペに伝える
ブリタニアの国王はオリビアの兄なので、オリビアに事情を話せばブリタニア王国に渡る手筈を整えてくれるであろう
ここで、「携帯電話」がフェリペからアレクに戻ったわ。
そう、これまで8人の王のうち、クラクフ、バイエルン、アレシア、ラツィオ、レオン、レイリアの6人の王の生き血が魔族に渡っているわ。あと2人の王の血が魔族に吸われたら、フィンブルヴェトルが来てしまう。そうなったらあたし達はおしまいよ。
魔族達の次の狙いはもうわかるわ。ブリタニアの国王の血よ。ブリタニア王国は現在内戦中で、外国人を受け付けない状況にあるらしいけれど、ブリタニア王の妹でもあるオリビアの願いだったら何とかなるかも。
この冒険を始めて今回で87回目だけれど、ここまで来て漸く旅の目的が明らかになってきたわ。遅いかもしれないけれど、手遅れではないはずよ。
あたし達は次期国王候補のフェリペに別れを告げ、レイリア城へ急いだ。
あら、王子だけなの? でも、オリビアがいない理由は分かるわ。オリビアもどこかの部屋に引き籠っているに違いないわよ。ビアンカもセシリアも自分の愛する人の生き血を抜かれて穢された挙句、殺されたんだもの。エリーとニーナはだいぶ立ち直ったみたいだけれど、それでもこの悲しみが消えることはないでしょうね。
王子も、立っているのがやっとのようだわ。父親を殺され、母親と妹が悲しみのあまりまともな思考を失ったとあっては、王子も泣きたくて仕方がないでしょうね。
「して、使者殿、何か用か? 用もなしに我が城へ来るほど卿らも暇ではないと思うが。」
と、ここでアレクの「携帯電話」が鳴った。王子にはアルベルトが直接話をするらしいわ。
王子って、エンリケって名前だったのね。知らなかったわ。でも、バイエルンの女王の名前がエリーというのを知ったのもアレクの論功行賞の後だから、まあいいか。
「アルベルト殿、父が生前私にフィンブルの冬のことを教えてくださいましたが、今一度詳しく教えてはもらえませんか。」
アルベルトはエンリケ王子にフィンブルの冬を説明した。
「そうすると、これで生き血を抜かれたのは、ルーシとブリタニアを除く6王家ですね。」
ルーシですって? それじゃあブリタニアの国王の血が魔族の手に渡ったらおしまいじゃないの。だって、ルーシ帝国は神や魔族に与しているんだから、血なんてとっくの昔に捧げているはずよ。あるいは、ルーシ帝国の国王もアルベルトや故アレシア王と同様、今は偽者が支配している可能性だってあるわ。どちらにしても、ブリタニアが魔族に襲われたら一巻の終わりよ。神や魔族に悉く勝ってきたあたし達も、血を吸ったSMの女王にはかすり傷一つ負わせられていないんだから。
アルベルトがあたし達をブリタニアに派遣したがっている理由は明らかよ。というよりは、あたし達がブリタニア王国に行けなかったらこのドイチュの世界は終末よ。
アルベルトはエンリケに、ブリタニア国王への親書とブリタニアに渡るための船の手配を依願した。しかし、オリビア王妃はジョアン王の惨死に耐えきれず、ルテティア城のニーナのところに行っているらしいわ。アルベルトはエンリケが親書を書くことを依願したが、エンリケはブリタニア国王と仲が悪いらしく、エンリケからの親書では却ってブリタニア王国に入れなくなるであろうことをアルベルトに伝えた。エンリケがブリタニア王国からの出兵要請を断ったのが原因らしいわ。
話し合いの結果、あたし達はオリビアのいるルテティア城へ向かい、その間にエンリケが船を手配することになったわ。
これで、レオン、レイリアともにバイエルン王国と友好関係は築けたわね。そして、レオンとレイリアの相互の誤解も解け、以前よりも仲がよくなったみたいね。両国の王達の死は悲しいけれど、その後の関係が以前よりも良好になったのだから、きっとアルフォンソもジョアンも草葉の蔭で喜んでいるわよ。
アルベルトにとって唯一つの心残りは、故ジョアン王と険悪な雰囲気のまま終わってしまったことだわ。勿論、ジョアンのアルベルトに対する悪印象が思い違いだったことはジョアンから直接聞いたけれど、ジョアンとアルベルトが直接話して仲直りをすることは叶わなかった。
この「携帯電話」、過信すると思わぬ誤解を解けないまま終わってしまうこともあるのよね。今日(こんにち)の「レイワ」では「テレビ電話」というものも普及しつつあるけれど、これも映像と音声だけなのよね。やはり、何と言っても実物が一番だわ。
あたし達はエンリケ王子に別れを告げ、ルテティア城へ急いだ。あの鉱山を通り抜けなくてはならないから、急がないと……。
えっ? アレク、こっちじゃないの? だって、レイリア城の北東の橋は渡っても意味がないって言っていたじゃないの。
「エル、これも作者の意向なんだ。この冒険をプレイする人が迷わないようにするという作者の親切心からくるものだろうが、エルにはそれがお気に召さないみたいだね。実は、今度こそ北東の橋を渡ることになる。」
本当に?
あ、通れた。んもう〜。アレシアの側にいたときは「この橋は封鎖されている」と兵士に言われて、レオンとレイリアの使者をしていたときは「この橋を渡っても意味がない」とアレクに言われて、今度はこの橋を渡らなければならないですって? 本当、勝手な都合ね。
「まあ、エル。そう怒りなさんな。ほら、もうすぐルテティア城だ。」
そうね。怒っている場合じゃないわよね。早くオリビアに事情を話さなくちゃ。
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2022/08/04
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