フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)
【第80回】レイリア王の言い分
あたし達はレイリア城に入った。城門をくぐると……。
また呼び止められるの? でも、今回は仕方がないわ。あたし達は初めてこのお城に来るんだし。
あら? 何だか反応が違うわ。でも、悪い反応ではなく、むしろあたし達は良く思われているようね。
「卿らが魔族を倒したことは陛下も存じ上げていること。さあ、玉座へ。」
ありがとう。では、通らせてもらうわよ。
あたし達は2階の玉座の間に着いた。
あら、ニーナ王妃のそっくりさん?
「ニーナを知っておるのか? わらわはレイリア王国王妃のオリビア。ニーナの双子の姉じゃ。覚えておくがよいぞ。」
しゃべり方までニーナそっくりね。でも、髪が灰色ではないから、偽者ではないわね。
さあ、王様に挨拶するのよ、アレク。
レイリア王国は情報の風通しが良いのね。
「尤も、我が城の目の前で、あれだけ派手に暴れては気づかぬ方が無理というもの。」
あはははは……。
「早速ですが、レオン王国より書状をお持ちしました。」
「うむ、そうか……卿ら、レオン王国の者達か?」
いいえ、違うわよ。
「レオン人でない者がレオンからの書状を携えておるとは……まあいい、書状を読もう。国王からとセシリアからか。」
ジョアン王は、アルフォンソからの書状を読み始めた。
「この戦を仕掛けた真意じゃと?」
俄かにジョアンの眉間に皺が寄った。
どっちも間違っているわ。ううん、もう少し正確に言うと、どっちも「仕掛けられた側」のよ。恐らく、魔族たちがレイリア王国とレオン王国の仲を引き裂こうとして、画策しているんじゃないの? どんな手を使っているのかは知らないけれど。
ここで、アレクの「携帯電話」が鳴った。
「あ、もしもし、アレクです。」
「ん? アレク……じゃと?」
ニーナの双子の姉のオリビアがアレクの名前に反応したわ。何かあったのかしら?
「アレク、陛下に代わってくれ。」
「承知いたしました。」
アレクはジョアン王に使い方を説明した。この「カラクリ」を説明するのはビアンカ、ジルベルト、アルフォンソに続いて4人目だから、アレクの説明もだいぶうまくなってきているわ。
「では、このカラクリを耳に当てれば良いのじゃな。」
「はい。」
アルフォンソに続いて、ジョアンまでも「はじめまして」が声のみの対談になったわ。恒例(?)の箇条書きよ。
アルベルトはジョアンにもフィンブルの冬が迫っていることを伝えた
アルベルトはジョアンにレイリア王国とレオン王国の停戦を提案した
ジョアンは、向こうから仕掛けてきた戦争だからそれはできないと返答する
何よりも戦死したレイリアの国民が納得しないというのがレイリア王の言い分である
アルベルトは、レオン王国側も同じ主張をしていることをジョアンに伝える
しかし、ジョアン王はレイリア王国に侵略する口実が欲しいだけだと述べる
アルベルトも、魔族が両国に偶発的に戦を仕掛けたように見せかけるのは容易であることを述べる
そうであっても、レオン王国に多くの民を殺されたことには変わりないとジョアン王は述べる
「ええい、このカラクリは使者に返すぞ!」
残念ながら、アルベルトもジョアン王を説得するには至らなかったようね。
「予想以上の頑固者だな……しかし、何とか戦を止める手立てを考えなければな……」
他の人と一緒にいる目の前で「携帯電話」での長話は失礼になるということで、アレクとアルベルトとの通話は一旦終わったわ。
「そういうことで、使者殿、悪いがレオン王に今の儂の返答を……」
セシリアって、この頑固親父の娘だったっけ? レオンに嫁いでもこの国の地位は損なわれていないわ。
「これはセシリア。息災であったか?」
「セシリアか。どうしたんだ?」
「この危険な状況でレイリアに戻ってくるなど……まさか、アルフォンソ殿に三行半でも……」
「いいえ、夫にはきちんと断って来ました。」
レイリア王国の王子って、ユーグそっくりね。母親が双子だから、息子もそっくりなのね。
でも、ここである疑問がアレクの頭をもたげたみたいだわ。箇条書きにすると……
アレクは王子に、モンスターが橋を占拠していたのであれば、レイリアはレオンにどのように軍事行動を起こしていたのかを訪ねた
不思議なことに、レイリア人には危害を加えなかったと王子は返答した
アレクは、異国の者(あたし達)には、異国の者と分かった瞬間に攻撃をしかけてきたと述べる
と、ここでセシリアが口を開いた。
「そう言えば、我らもレオンに使者を出したが、全員死体となって帰ってきた……。」
王子の言っていることって、アルフォンソの言っていたことと同じじゃないの。アルフォンソも、レイリアに派遣した使者が全員死者になって帰ってきたって。
「お父さま…ここは、この戦争について、きちんと調査するべきだと思うわ。」
実の愛娘の言葉に、頑固者のジョアンも少しずつ心を動かされてきたようだわ。
セシリア達の発言をまとめると、
戦が起こってから、レイリア王国の使者がレオンに来たことはない
無論、レオン王国の人は誰ともレイリアの使者とは会っていないから、使者も殺してはいない
逆に、レオン王国の使者もレイリアに来たことはないし、会ってもいない。当然殺害もしていない
「なるほど、至急調査する必要があるな。卿らから、アルフォンソ殿に伝えてはくれぬか。詳細が分かるまでお互い軍事行動は控えるよう提案したい。」
やったー! やっぱりいつの世でも父親は娘には弱いのよ。
でも、アルフォンソ王にはアレクが伝えるよりセシリアに伝えてもらった方がいいんじゃないの? そこで、ジョアン王はアレクにセシリアの護衛を依頼した。
ジョアンがアルフォンソ宛てに書状を認めている最中に、王妃が口を開いた。
「そなた、アレクと言ったな。妹をニース温泉から助けていただき、このオリビアからも礼を申す次第であるぞ。」
「恐れ入ります。」
オリビアとニーナの姉妹、2人とも話し方が少し変だけれど良い人よね。
「では、これが書状である。アルフォンソ殿に渡してくだされ。」
「承知いたしました。」
レオン王国に戻る最中、あたしは「携帯電話」で気づいたことがあった。
確かに、遠くにいても会話ができる便利な道具であることは間違いないんだけれど、逆に「声しか」聞けない、もっと言うと「音しか」聞けないのよね。もし、アルベルトが直接ジョアンと話をしていたのならば、アルベルトはジョアンを説得できたかもしれない。でも、声だけでのやりとりだとどうしても限界があるのよね。ジョアン王はアレクやあたし達には好印象を持っていたけれど、アルベルトに対しては悪い印象を持ったまま話が終わってしまったわ。アルベルトがこの「カラクリ」を過信した弊害なのかも。カラクリは所詮カラクリでしかないわよね。アルベルトはこのことに気づいているのかしら?
待たないわよ。
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2022/07/17
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