フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第72回】神の僕(しもべ)の復讐

 あたし達は、とりあえず目の前の存在に「話しかける」ことにした。



 豊穣の神フレイに関係する敵というところまでは合っていたんだけれど、こいつはコンバットエンジェルではなかったわ。
 スキールニルだかスキンヘッドだか知らないけれど、主を倒したあたし達に挑もうとするその忠誠心は誉めてあげる。
 けれど、勝つのはあたし達よ。東野英治郎じゃないけれど、こっちにはお天道様が味方についているんだから。
「エル、東野英治郎って誰?」
 えっ、知らないの、アレク? 東野英治郎(とうのえいじろう)と言ったら、ジパングの時代劇「水戸黄門」の主人公徳川権中納言光圀を演じた初代の人よ。それ以前は、悪役スターだったらしいわ。二代目の西村晃(にしむらこう)も悪役で有名だから、悪役でないと水戸黄門の御老公(主人公)は務まらないと言われたほどよ。五代目の御老公は多くの時代劇や現代劇で主役を務めた大御所だけれど、悪役の経験がなかったから、水戸黄門の御老公だけはあまり評判が良くなかったみたいね。
「エル、よく知っているなあ。」
 ええ、あたしもジパングの書物を読み始めたからね。あんたの毒矢の傷を治療する本を探していたときに、たまたまジパングの書物も見つけたってわけ。

「ええい、何を話している! 貴様ら全員皆殺しにしてくれるわ!!」

 あら、ごめんなさい。すっかりあなたの存在を忘れていたわ。じゃあ、今のあたし達の会話はあなたの冥土の土産ということで取っておきなさい。



 右側の角の生えた白馬がブローズホーヴィね。こっちはこれまでのグラフィックなんだけれど、左側のスキールニルがこれまでとちょっとグラフィックが違うわね。まあいいわ。敵は敵だから。
 これまで通り、アレクは氷天三連突、あたしは国歌、リーゼルは聖なる息吹、クリスはトリプルアタックでいくわ。



 何よこいつ、あたしの癒しの歌スペシャルを使っているわ。どこでそれを覚えたのよ。
「このスキルを知っているのは貴様だけではないのだ。」
 スキールニルが不敵な笑みを浮かべる。神の僕(しもべ)だけあって、やはり強いわ。
「エル、あいつの癒しの歌スペシャルも、あたしのトリプルアタックの前には完全に回復し切れていないみたいよ。慌てないで、いつものあなたのペースを保って。」
 ありがとう、クリス。クリスは、スキルこそあまり使わないけれど、その分を攻撃で補っているわ。
「それもあなたの回復魔法があるからできることよ。」
 クリスのその言葉を聞いて、あたしはハッとした。一個人がどんなに優秀でも、できることには限りがあるわ。仲間どうしの長所ばかりでなく短所も活用する、それこそが真の仲間よ。クリスの言葉を聞いて、あたしの心の迷いが消えたわ。



 逆に、クリスのこのダメージも、あたしの国歌が効いているからなのよね。真の友達と同様、協力し合える存在は、お金では買えないわ。
 まずは、アレクが白馬を倒したわ。そして……



 復讐に燃える僕は、クリスによって葬られたわ。クリス、すごおい。
 長船(攻撃力+60)と、スピードアップを手に入れた。
 アレクがレベル26になり、あたし(エル)はレベル27になって超癒しの歌を覚え、リーゼルはレベル27になってトルネードを覚え、クリスはレベル27になった。



 だから言ったでしょ。返り討ちにしてあげるって。寂しくはないわよ。あなたの主のフレイが先に地獄で待っているからね。

「キャアアアアァァァァァァ!!!」

 火山の山容すら変えんばかりの断末魔の叫び声が響き渡った。これが一番怖かった……。
「しばらく休みましょう。」
 リーゼルがそう提案した。この火山はスキールニルとブローズホーヴィが取り仕切っていたから、他の敵がこの火山に来ることは考えにくいわ。あたし達は激戦の疲れで皆寝入ってしまった……。
 トゥルルルルルルル……



 あたし達はアレクの方に目を向ける。そう言えば、ジパングの学校では熱中症対策のため、夏休み前の終業式を校庭や体育館で行わず、各教室で行うところが多いみたいね。そのとき、みんなスピーカーの方を見るんだけれど、あれって、本当はスピーカーの方に耳を向けるのが「正しい」のよね……って、アルベルトじゃないけれど、話がそれてしまったわ。
 音源は、アレクの「携帯電話」だった。誰がかけてきたかはすぐに分かった。というよりは、この「携帯電話」にかけてくるのは一人しかいないわよ。
「もしもし。…あ、やはり殿下でしたか。」
「『やはり』とは何とぞ。」
「いえ、この『携帯電話』の存在を知っているのは殿下だけですから。」
 アルベルトからの話の内容は、スキールニルまで出てくることに驚いたこと、そして詳しいことが分かり次第また連絡するとのことだったらしいわ。アルベルトがパウラに、アレクがソフィーに代わって、パウラとソフィーも電話で会話をしたわ。
 この『携帯電話』って、遠くからでも連絡できるから便利と言えば便利だけれど、逆の言い方をすると、今は出たくないとき、例えばトイレに入っているときとかお風呂に入っているときとかごはんを食べているときとか寝ているときとかでもこの機械を鳴らされるってことでしょ。ある意味諸刃の剣よね。ジパングで「シャチク」っていう言葉が使われ始めたのも、この『携帯電話』の普及によるものらしいわね。将来バイエルン王国に『携帯電話』が普及したら、相手が目上でも目下でも、相手の都合を考えて無闇にかけることは避けなくてはならないわ。ただでさえジパングの2022年夏は電力が逼迫すると言われているんだから。
 さあ、先へ進みましょう。



 あと少しでこの火山の道も終わりだわ。
 南に道があるけれど、その前に魔法陣と2つの宝箱が気になるわ。赤い宝箱じゃないから、多分いいものが入っているはずよ。



 魔法陣でHP、MPともに回復したわ。宝箱の中身はライフアップとガードアップだった。ここまで進むと、結構宝箱の中身も充実しているわね。



 さあ、火山の先へ進みましょう。ラツィオは近いわ。


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2022/06/29


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