フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第69回】神との戦い

 あたし達は、突如現れた敵を目の前に、足が竦(すく)んで動くことすらままならなかった。
 リーゼルも、クリスも、ソフィーも、恐怖で泣き出しそうになるのを必死に堪えていた。アレクだけはこの恐怖の存在に立ち向かおうとしていた。



 神ですって?



 そうよ、あんたが皇帝に入れ知恵してもこの要塞が陥落したんだから、あんたのせいじゃないの。
 ジパングにもいるのよね。「任せる」っていう言葉を自分の都合のいいようにしか使わないクズな輩が。「うまくいったら任せた自分のお蔭、うまくいかなかったら相手のせい」って、「任せる」じゃなくて「押し付ける」っていうのよ。
「何だと、この小僧が。」
「小僧? これでも私はオッサンなんだが。」
 プッ、アハハハハ!
「エル、何がおかしいんだよ。」
 だって、アレク、自分でオッサンなんて、せめてお兄さんと言いなさいよ。
 あたしの言葉に、リーゼルとクリスとソフィーの恐慌も幾分か和らいだみたいね。



 何よ、こいつ。自分から「意味がわかるか?」と嗾(けしか)けておいて、アレクが自分の意にそぐわない言葉を返したら、怒りだすなんて、本当にクズの所業ね。不動産屋から大統領になった輩がそうだったわ。本当、人間的に終わっているわよ。
 あなたが本当に神だったら、人間の言葉にいちいち反応しないでスルーしたらどうなのよ。
 でも、この「神」とやらには、あたし達の声はもう聞こえていないみたいね。神でも何でも、戦ってやろうじゃないのよ!



 アレクは氷天三連突、あたしは国歌、リーゼルは覚えたての聖なる息吹、そしてクリスはトリプルアタックよ。



 いきなり先制攻撃? 流石、神と名乗るだけあって素早いわね。
 コンバットエンジェルはヒールを使ってくるし、これまでの敵とは違うわ。
 こちらも打撃を与えてはいるんだけれど、なかなか倒れないわ。



 かなり強いわ。これまでにないピンチかも。
 あたしは癒しの歌スペシャルに徹底するわ。攻撃はあなた達3人に任せたわよ。



 リーゼルの聖なる息吹は、敵を暗闇に閉ざす力があるのね。今後もリーゼルに助けられることになりそうだわ。



 漸くコンバットエンジェルを2体倒したわ。でも、フレイはまだ倒れなさそう。
 もしかして、これ、ストーリー進行のための「負け戦」なんじゃないの? 全然倒れないわよ。
「貴様ら人間風情が、神であるこのフレイに勝てると思っているのか?」
 思うわよ。その「人間風情」とやらの反論に対して怒るだなんて、本物の神ではないわ。
 フレイが攻撃を仕掛けてきても、次のターンにはあたしの癒しの歌スペシャルでほぼ全快するから、仕組まれた戦いでなければ倒せるはずよ。



 やった! フレイを倒したわよ。
 経験値9300、2600マルク、そして妖精の靴を手に入れたわ。
 アレクがレベル24になってニュークリアを覚え、あたしとリーゼルとクリスはレベル25になったわ。



 認めなくてもいいわよ、あなたが負けたという事実は変わらないんだから。勝ちはしたものの、みんなクタクタで疲労困憊(こんぱい)よ。
「アレク、無事であったか。そなた達が戦っていたのは豊穣の神フレイと見たが。」
 背後からアルベルトの声がした。
「アレクよ、神との戦いで疲れているであろう。今夜はゆっくり休んで、詳しい話は明日聞こう。」
「承知しました。」
 みんな、大丈夫? あたしももう歩くだけで精一杯なんだけれど。
 何とか本陣に戻り、ベッドに潜った。
 今夜はクタクタで、あたしは勿論のこと、他の誰もアレクの側に行く気力など残されてはいなかった……。


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2022/06/22


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