フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第67回】旧王国の亡命者

 あたし達は、オーダー川西岸に新たに建築された本陣に向かった。それにしても、一瞬でできるなんて、ド●クエビル●ーズも真っ青の速さじゃないの?



 本陣の右側にある星型の建物が「ごりょうかく」ね。あら、ジャガン要塞だったかしら? まあ、どっちでもいいわ。
 本陣のつくりはいつも通りね。不祝儀敷きも健在で、なんだか安心するわ。あたしももう感覚が麻痺しているのかも。
 アルベルトの間にはいつもの顔ぶれ……あら、あなたは誰?



 亡命ってことは、政治的な理由でクラクフ王国に命を狙われているってことね。偏見かもしれないけれど、眼鏡をかけている人って、結構理知的なイメージがあるのよね。もしかして、理知的だから国を追われたとか? まあ、いずれわかることだわ。



 ここで、アルベルトからさっきの眼鏡の人の紹介があった。
「こちらの御方は、元クラクフ王国の公爵、ベルナルト・ノヴァク殿だ。公爵の母上は王族の方でな。今では唯一、クラクフ王国王家の血を受け継いでおられる方だ。」
「ベルナルト・ノヴァクと申します。私のことは、ベルナルトとお呼びください。」
 公爵なのに、呼び捨てにしていいのぉ?
「公爵だったのも過去の話です。今は守るべき領土もなく、こうしてバイエルン王国に身を寄せている身ですから。」
 それは、ベルナルト公爵さえよければ、呼びやすいように呼ぶけれどね。
「クラクフ王国が失われようが、私は私ですから。」
 でも、こういう謙虚な人ほど、人望が厚いから、信用できるのよね。
「ベルナルト公爵はこう仰っているが、今でもクラクフ王国では影響力のある御方だ。公爵に先導して住民叛乱を起こし、ルーシ帝国が混乱した隙をついて、ジャガンを陥落させたい。」



 国政って、誰を優先的に考えるかでまるで違ってくるのよね。一部の富裕層を優先的に考えると、その他大勢の人たちは不幸になってしまうし、と言って民主主義を徹底させると、民衆受けすることを言う輩が出てきて、その結果、独裁政治になったり、難しいわ。世界全体が幸せにならないうちは個人の幸せはありえないという思想もあるけれど、幸せの基準は人によって異なるし、ほとんどの人が得隴望蜀(とくろうぼうしょく……人間の欲望は限りがないという意味)でしょうしね。得隴望蜀でないのは、田中正造とマザーテレサくらいよ。
 ここから先は面倒なので、例によって箇条書きにするわ。

  • 既に、クラクフ川の地下組織とベルナルト公爵はつなぎが取れている
  • よって公爵が戻れば、いつでも叛乱を起こせる状況である
  • 地下組織の兵士は3000人で、元々正規兵の集まりである
  • ベルナルト公爵達はジャガン要塞ではなく、ジャガンから南東にあるゴジェフ砦を陥落させる
  • クラクフから徴用された物資が保管されているゴジェフ砦を陥落させればジャガンから出兵せざるを得なくなる
  • ジャガンとクラクフ城の中間にあり、挟撃を受ける可能性のあるゴジェフは守らない
  • ゴジェフを奪い返すため、ジャガンやクラクフ城からルーシ帝国は兵を出すことになる
  • ベルナルト公爵達はゴジェフを陥落させて物資を奪い次第、ゴジェフ砦に爆薬をしかける
  • ルーシ軍がゴジェフを奪還したらしかけた爆薬を爆破する、また、ジャガンから兵が出撃した時点で狼煙を上げる
  • 密かにアルベルト公爵達も、オーダー川東岸に兵を出して東西から要塞を攻略する

  •  いずれにしても、ゴジェフ砦は潰す気ね。でも、そんなことをしていいの、ベルナルト? ゴジェフ砦はあなたにとって大切な場所じゃないの?



     ベルナルト公爵にとっては余程の覚悟に違いないわ。ゴジェフ砦を放棄すると言ったときのベルナルト公爵の顔は怖くて正視できなかったわ。
     話の続きをまとめると……

  • クラクフ城から兵を出さないのであれば、自ずとジャガン要塞から出兵せざるを得ない(アルベルト達にとってはこっちの方が楽)
  • 逆に、ジャガン要塞側が兵を出さなかった場合は、クラクフ城から出兵することになる
  • クラクフ城から出兵した場合は、住民叛乱によりクラクフ城を接収する
  • クラクフ城接収となれば、ジャガン要塞への補給も容易ならざる状況に陥り、ジャガンはいずれ干上がることになる
  • ジャガン要塞としては、ゴジェフ砦やクラクフ城を奪われることは避けたいところであり、そんな中で出兵しないのは下策と言える

  •  これって「肉を切らせて骨を断つ」作戦ね。ベルナルト公爵もゴジェフの放棄を承知でこの作戦に加わっているのだから、何としても成功させなきゃいけないわ。
     オーダー川東岸から攻撃する部隊の指揮はザウアー将軍が執ることになったわ。今回、アレク達、即ちあたし達もザウアーについていくことになったわ。
    「アレク準男爵よ。そなたに私のゴーレムを一体貸与する。魔道の心得があれば、召喚はできるであろう。」
    「ゴーレムを盾代わりとして、要塞に攻め込むのですな?」
    「そういうことだ。そして、爆薬もいくつか渡しておく。殺傷能力は高くはないが、扉の爆破くらいはできるぞ。」
     そういうことね。ジャガン要塞へゴーレムを送り込んでいる隙に潜入するためには、殺傷能力の高すぎる爆薬はかえって目立ってしまうわ。扉の爆破くらいの強さがちょうどいい強さなのよ。
    「では、我らはベルナルト公爵から合図があった段階で動く。今日のところは、明日以降の戦いに備えて英気を蓄えるよう。」



     ベルナルトの準備が完了したみたい。いよいよ「ごりょうかく」へ乗り込むのね。
    「エル殿、ジャガン要塞と言ってもらいたい。アレクよ、卿からも言ってくれぬか。」
    「いえ、私も五稜郭でいいと思いますが。」
    「…………」
     アルベルトが困惑の表情を見せた。別に、あたしのせいじゃないんだから。
    「ゴホン!」
     アルベルトが咳払いをした。まあ、話を切り替えましょう。



     夜になり、あたし達は闇夜に紛れてオーダー川に乗り出した。大丈夫。気づかれた気配はないわ。



     あたし達は、オーダー川東岸に無事に到着した。
     南東に見える城がクラクフ城、東がゴジェフ砦、そして正面にあるのが「ごりょうかく」ね。
    「アレク、いいのか。お嬢ちゃんが間違って覚えているぜ。」
    「いや、もう『五稜郭』でいい気がしまして……。」
    「まあ、殿下がいないからいいか。一応ジャガン要塞って名前がついているんだがな。まあ、それはさておき、いよいよおっ始めるぞ。まず、ゴーレムを召喚し、東門から突入させるんだ。オレ達は援護しつつ、ジャガンの南西、第一胸壁の制圧に入る。」
    「承知しました。……では、ゴーレムを召喚するか。」
     アレクが目を閉じた。いよいよね……。



     待つこと3分……。

     うぎゃ〜〜〜〜〜っ!

     要塞から阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえてきたわ。
    「今だ! アレク、健闘を祈るぜ。」
     そう言って、ザウアーは姿を消した。



     騒ぎは収まったものの、ルーシ帝国の兵士達は、突如現れた石の怪物に釘付けになり、あたし達の潜入に全く気づいていないわ。
     よしよし、いいわよ。


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    2022/06/17


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