フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第66回】大司教の正体

 あたし達は、マルクス教徒の元兇と対峙していた。



 大司教エンゲルスは優しそうなお爺さんだけれど、こういう奴ほど裏がありそうで怖いわ。まあ、みんな多かれ少なかれ、裏はあるものだけれどね。
 ともかく、死んでもらうわよ。地獄であたし達の仲間に詫びなさい。尤も、あたし達の仲間は天国へ行っているから、地獄で会いようもないけれどね。



 戦闘の背景まで赤く染まっているなんて、やはりここが共産主義の本部だからよね。
 アレクは氷天三連突を、あたしは国歌を、リーゼルはサイレンスを、そしてクリスはトリプルアタックを使うことにした。
 アサシンがシャドウボディを唱えて味方の近衛兵の防禦力を上げたわ。そして、大司教が近衛兵にヒールの魔法を。配下の兵士を助けるなんて、敵ながら遖(あっぱれ)だわ。仲間を助けようとするその心意気は立派だけれど、あたし達にとっては不倶戴天の仇でしかないから、容赦はしないわよ。



 近衛兵よりも大司教を先に倒したわ。こうなってくると、もう近衛兵一人では何もできないわ。仮に、近衛兵があたし達に勝ったとしても、主を失った近衛兵は浪人になり下がるしかないもの。



 そして、幸運の指輪を手に入れたわ。この指輪、防禦力+9、精神力+30、敏捷力+20の効果があるけれど、それ以上にバッドステータス無効などの効果がある、まさに幸運を呼ぶ指輪だわ。これは、アレクに装備させましょう。
「さあ、エンゲルス、おとなしくしろ!」
「クソッ……」
「アレク、……おっと、今は準男爵だったな。お見事。」
 その声はザウアーだった。あたし達は、大司教を生け捕りにして、マルクス教徒の塔を出た。大司教が捕縛されたとあって、近衛兵達はみんな逃げ出したみたいね。
 塔を出てから本陣までは早かった。
「殿下、只今戻りやした。アレク達が大司教エンゲルスを生け捕りにして来ましたぜ。」
「うむ、ご苦労であった。」
 と、ここで影の薄い伯爵がエンゲルスに歩み寄る。
「さて、尋問と行こうか。」



 ちょっと、何がおかしいのよ。笑っているのも今のうちだからね。あんたには洗い浚(ざら)い吐いてもらうわよ。あんたが死ぬまでね。



 影武者? じゃあ、あなたは単なる囮(おとり)なの? だとしたら、本物のエンゲルスは一体どこにいるの?
「馬鹿め、それを私が言うと思っているのか。お前(フォルゲン)もお前(アルベルト)もお前(ザウアー)も、みんな馬鹿揃いだな。お前たちの間抜けヅラ、冥土の土産に持って行くわ。グアハハハハハハハグフッ!」
 それが大司教の最期の言葉となった。
「奥歯に毒を仕込んであったか……」
 フォルゲン伯爵に落胆の表情が浮かび上がる。と、そのとき……

ドゴーン!

 何、今の音? 何だか、すごい音がしたわよ。
「申し上げます。たった今、マルクス教徒の塔が爆発しました。」
「報告、大儀であった。バイエルンの兵士達に負傷者がいないか確認せよ。いたら、シスターのところに連れて、治療してもらうように。」
 フォルゲン伯爵が兵士を労った。アルベルトも伯爵の言葉をつけたす。
「それから、マルクス教徒の中で生き残りがいたら、直ちにこのアルベルトの前に引き立てるように。」
「承知いたしました。」
 ひょっとして、この影武者の奥歯には、毒だけでなくて塔の爆破装置も仕込んであったのかもしれないわ。影武者が死ぬのと同時に塔が爆発って、タイミングが良すぎるわよ。あるいは、本当のエンゲルスが影武者の死を知って、どこかから塔を爆発させたとか。でも、今は、なぜ塔が爆発したのかよりは本物のエンゲルスがどこにいるのかを考えた方が良さそうね。



 それは無駄だと思うわ。
「お嬢ちゃん、なぜそう思うんだい?」
 だって、マルクスの近衛兵レベルの人達だって、本物のエンゲルスって信じ切っていたじゃないの。死んだエンゲルスが実は影武者だってことは、マルクス教徒の幹部の中でもほんの一握りの人しか知らないはずよ。生き残りの兵士達って、それ以下の位の人達でしょ。そんな下っ端にまで影武者の存在を知らせたら、その人はもう影武者ではなくなるわ。
「そうか……。」
「ザウアー、私もそう思う。マルクスの生き残り達が本物のエンゲルスの居場所を知っている可能性はゼロではないが、ゼロに近いと見て良いだろう。生き残りには引き続き捕虜になってもらうがな。」
 と、ここでまた伝令が来たわ。
「申し上げます。オーダー川東岸より、ルーシ帝国軍が襲撃してきました。」
「して、状況は?」
「国境を荒らされ、住民に被害が出ております。」
 国境ね。ジパングには国境がないから今一つ実感がわかないけれど、国境を荒らすというのは宣戦布告を意味するのよね。
「報告、大儀であった。被害に遭った住民を安全な場所に避難させよ。」
「承知いたしました。」
 アレシアと講和し、マルクス教徒の本拠地を陥落させたと思ったら、今度はルーシ帝国が攻め込んできて、一難去ってまた一難は、このことだわ。
「まさか、ルーシ帝国の奴ら、俺達がマルクス教徒の本拠地を襲撃するのを見透かして、手薄になった隙に攻め込んで来たとか?」
 ザウアーが困惑の表情を浮かべる。
「可能性はあるな。」
 アルベルトがザウアーに同意した。
 今度は、ルーシ帝国軍との戦いなの? 不眠不休の連戦になっちゃうわよ。



 アレク、ごりょうかくって、何?
「五稜郭っていうのは、ジパングのエゾ(現在の北海道函館市)というところに建てられた星型の城郭のことなんだ。五稜郭の周りには、星型の外堀がある。周囲の長さが長いから、守りやすく攻めにくいことで知られている。ジャガン要塞の構造が五稜郭に似ているんだ。」
 ふ〜ん。守りが固い「ごりょうかく」っていうのを攻め落とせれば、ルーシ帝国軍は士気を失うでしょうね。
「エル殿、あれは一応ジャガン要塞という名前がついているのだよ。尤も、ドイチュの五稜郭みたいなものだがな。」
 アルベルトも結構こだわりがあるみたいね。



 アレクもラインマイヤー子爵みたいなことを言うのね。と、ここでアルベルト公爵があたしの言葉に反応した。
「そう言えば、フォルゲン伯爵、ディジョン要塞、いやソロモン要塞には別の指揮官を派遣して、ラインマイヤー子爵を呼び寄せることはできますか?」
「できます。呼び寄せますか?」
「そうしてもらえるとありがたいのですが。」
「承知しました。では、早馬を飛ばしましょう。」
「ありがとうございます。」
 ここの本陣は撤収し、新たに本陣をオーダー川西岸に移すことになったわ。



 もう本陣がなくなっているわ。あたし達、何だかアルベルトに追い出されたみたい。でも、向かって右下に「てんかふぶ」の幟がちらっと見えるから、今度はあそこに行けばいいのね。
 向かって左に見えるマルクス教徒の塔は崩れ落ちているから、近づくのは危険だわ。アルベルトの魔法でこの塔を解体して更地にすることはできなかったの? この戦いが終わったら、アレクに頼んでみることにするわ。


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2022/06/15


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