フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第55回】王妃の話

 あたし達は、再びニース温泉の小屋にいた。
「ロジーナ様! よくご無事で……。」
 ヴァレリーはロジーナの無事な姿を見た途端、その場に立ち尽くした。その目には涙があふれんばかりだった。
「ヴァレリー、心配かけたわね。」
 ロジーナがヴァレリーに優しく話しかけた。



「あら、パウラじゃない。どうしたの? こんなところまで来て。」
「どうしたの、じゃないわよ! 私は、お姉ちゃんがニース温泉に幽閉されたって聞いたから……。」



「王妃様、その長くなる話は後にして、服を着替えませんか? 私の服ですが、今着ていらっしゃる服より少しはましかと存じます。」
 ロジーナの言う通り、一目で王妃と分かってしまう服だとまずいわよね。
「うむ。世話になるのう。」
「あ、私は外で見張りをしています。終わったら呼んでください。」
 まあ、アレクったら。別に、王妃は気にしていないようなのに。
「王妃のパンツって、シルクなのね。結構高級品だわ。当たり前だけれどね。」
「このような下着でよければ、後で城へ参るがよい。いくらでも差し上げるぞよ。」
「エルも、王妃様も、勝手に決めない。」
 こんな話がアレクにも筒抜けなんて、あたし達は知る由もなかったわよ。
 さて、王妃の着付けが終わったわ。あたしは「小屋の外で見張りをしている」アレクに声をかけた。



「その前に、何か食べない? もうお腹がペコペコよ。私が何か作るから。」
 ロジーナが提案した。料理なら任せて。
「はあい、その料理ならあたしが作りま〜す! みんなはお話でもしていてよね。」
「エルが? じゃあ、よろしく頼むわね。」
 あたしはいそいそと料理の準備を始めた。久しぶりの料理だから、腕が鳴るわ。

 その間に、アレク達が話していた内容を、例によって箇条書きでまとめるわね。

  • ロジーナが幽閉された理由は、表向きは「スパイ罪」だが、実はルテティア城にいる王妃が偽者であることに気づいたからである。
  • かつて、ロジーナは王妃だけでなく、次男であるユーグ王子までも救ったことがある。長男のアンドレ王子だけはロジーナの力をもってしても救うことはできなかったが。
  • ロジーナは国王に王妃が偽者であることを訴えたが、逆に国王に目をつけられ、バイエルン軍の陣地に行ったことを口実に逮捕され、ニース温泉に幽閉された。
  • 王妃の良人、即ち国王はもうこの世にはいない。
  • 本物の国王は、ある日モンスターに襲われ、王妃の目の前で殺された。
  • 王妃はすぐに衛兵を呼んだが、モンスターに眠りの魔法をかけられた。
  • 王妃が意識を失う直前に見たのは、王妃に変身するモンスターだった。
  • 王妃としては、アレシア城に行き、偽者を暴きたい。
  • しかし、アレクは以前のアルベルト公爵の件で、偽者を暴くのはそう簡単なことではないことを知っていた。
  • 仮に、王妃が本物である証があったとしても、偽者が本物を偽者と言い張り、最悪の場合は王妃は殺されてしまう。
  • アレクは、ルテティア城の一件で、ユーグ王子だけは本物であるという確信を持っていた。
  • そこで、アレクは、ユーグ王子を護衛なしで城の外へ連れ出すことができるかどうかを王妃に提案した。
  • しかし、王妃は、他国の人の力を借りてアレシアの問題を解決することは、自国の矜持にかけて許されないと拒む。
  • そこに、ロジーナが間に入り、そんなことを言っている場合ではないと、王妃に諫言する。
  • それでも、王妃は返答に渋るので、アレクはあまり時間がかかると、バイエルン軍の精鋭がルテティアに押し掛けることを王妃に述べる。
  • 王妃は、アレシア領内にバイエルン軍が侵攻してくると述べるが、アレクはそれは逆で、バイエルン軍の講和を偽国王が一方的に拒絶したことを伝える。
  • パウラも、アルベルト公爵が本陣をルテティア付近に移している最中であることを述べる。



  • 王子への手紙は王妃が書くことにするが、問題は本物の王妃からの手紙であることを王子が信じてくれるかどうかである。
  • 実は、アネットと王子は仲が良い。王妃も、アネットを次世代の王妃として迎え入れようと思っている。
  • ロジーナは、王妃は王子宛てに手紙を書くことを提案する。ロジーナはアネット宛てに手紙を書く。
  • 封筒の差出人はロジーナ名義だが、その中に王妃の手紙も入れる。
  • ロジーナの手紙の内容は、アネットが王子宛てに手紙を書き、何とか城の外へ連れ出すようにするというものである。
  • 手紙の配達はヴァレリーが行うことにして、王妃はロジーナと一緒にバイエルン軍の本陣までアレク達と同行することをアレクが提案する。
  • ニーナ王妃とユーグ王子はバイエルン軍の本陣で落ち合うことになる。
  • アルベルト公爵が王妃と王子から事情を聴き、その上で城内に攻め込むので、仮に王妃がバイエルン軍の本陣に見えたとしても大した問題にならないだろうという見立てである。
  • アレク個人としても、アレシアとはこれ以上交戦したくはない。
  • アルベルト公爵の狙いは、飽くまでもアレシアに巣くう元兇である。

  •  アレク達が話をしている間に、ついに料理が完成したわ。





     まともな食事……って、王妃も長い間の幽閉でだいぶ体が弱っているのね。あたしの料理で元気をつけて。
    「これは、うまい。エルとやら、このニーナ、その方に対し、心からお礼申し上げる。」
     このニーナ王妃って人、しゃべり方はちょっと変だけれど、悪い人ではなさそうね。あたしの料理を素直においしいと言ってくれたことでも人柄の良さが出ている。ヴァレリーがソフィーに強く反論した通り、ニーナ王妃は話の分かる人だわ。
    「うぅ……、悔しいけれど、おいしい……。」
     クリスも、あたしの料理の味を誉めてくれて、うれしいわ。



    「うん、おいしい!」
     本当? ありがとう、アレク。
     そして、そのスプーンを……って、何するの、ソフィー。返してよ、そのスプーン。
    「隊長に『あ〜ん』をしたそのスプーンで、あんたは自分のご飯を食べるのね。」
     そりゃそうよ。じゃないと、間接キスにならないじゃない。
    「エル、このプレイ日記を始めた頃ならまだしも、今(2022年)はまだ全世界的に三密を避けないといけないご時世なのよ。このスプーンを洗ってくるから。」
     んもぅ〜、ソフィーの意地悪ぅ〜。



     楽しい夕食も終わり、その後みんなで温泉に浸かったわ。アレクだけ洞窟内の温泉に行っちゃったけれど、別にあたし達と一緒で良かったのに。
     そして、夜寝る前に、アレクがあたしに話しかけてきたわ。
    「エル、Danke schon*(ダンケシェーン)。おいしい料理をありがとう。」
     Bitte schon*(ビッテシェーン)、アレク。どういたしまして。
    「明朝、バイエルン軍の本陣に出立だから、みんな、もう寝よう。」



     そして、朝になった。



     あたし達は小屋を出た。王妃の変装もバッチリよ。
     言葉遣いですぐにわかってしまうから、本陣に着くまでは一言もしゃべらないようにと、ロジーナから王妃に注意があったわ。もちろん、王妃は素直に聞き入れたわよ。配下からの注意を受け入れる度量も王妃の品格なのよね。

    *(管理人注) 本来はschonの“o”の上に“‥”がつくのですが、日本語での文字変換が出ないので、“o”表記にさせていただきました。


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    2022/05/08


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