フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)
【第44回】アレクのリハビリテーション
アレクと殿下の対面も久しぶりな気がするわ。もしかすると、この対面も奇蹟かもしれない。ううん、人と人との出会い一つ一つが奇蹟なのかも。
「殿下、戦況の方はどうなっているのでしょうか。」
アレクが殿下に尋ねた。確かに、それは気になるわ。あたし達も、アレクの怪我を治すためにアレシアの首都ルテティアには行ったものの、文字通り戦線離脱していたのよね。パウラも、アルベルトやザウアー達の作戦会議には出席していなかったわけだし。
「うむ、我々はあれから要塞への圧力をかけ続けている。」
ザウアーが殿下の言葉を継いだ。
「やつらを挑発して、要塞の外に出てきた部隊を叩いたり、東側の関所と連動して、要塞に攻撃を仕掛けたり、ある程度の戦果は上がっているぜ。」
「アレシア軍か。恐らく指を加えて眺めているわけではあるまい。だが、卿にそう見えるということは、我々の戦果が上がっている何よりの証拠なのだ。」
アルベルトがアレクの質問に答えた。
「ルテティアからの進軍ルートは、山脈を北に迂回するか、南に迂回するか、2つしかない。」
「はい。」
「北のルートは、この前アレシアの補給基地を占領したであろう。あの場所を利用してな、ゴーレムを召喚して配置し、敵を釘付けにしているのだ。」
そして、ザウアーが続ける。
「南のルートは、ハスラー将軍を中心に、敵を食い止めているところだ。尤も、ライン川上流に仮設の橋を作ったところでな。バイエルン本国からの援軍も続々と到着している。」
「ということは、アレシア軍には支援が届かないということですね。」
「まあ、そういうことだな。」
「まあ、俺もかつて殿下と戦ったときには打ちのめされたからな。」
えっ、どういうことなの?
「俺たちが元山賊だってことは以前お嬢ちゃんたちにも言っただろう。俺たちはかつて殿下のところにも盗みに入ったことがあるんだ。そのとき殿下に見つかっちまったんだ。それまで俺たちは戦いに負けたことがなかったんだ。だから、殿下にも勝てると思って、殿下に戦いを挑んだ。だが、殿下の強いの強くないのって。物理攻撃だけだったら、多分俺たちは負けなかっただろう。現に、俺は殿下に何度も打撃を与えた。だが、殿下の魔法には手も足も出なかった。俺は殿下に打ちのめされ、投獄された。やがて、俺たちは法廷に引き出された。俺は死刑になってもいいから部下達は逃してくれと俺は殿下に懇願した。そうしたら、殿下は俺の腕を買って、ロールシャッハの兵士にならないかと提案してきたんだ。尤も、もう二度と私利私欲のために盗みを働かないことを法廷で誓約させられたけれどな。」
ギルドのグスタフ達が知略型とすると、ザウアー達は戦略型なのかも。
「補給基地のゴーレムは3体をローテーションで使っているから、当面はアレシア軍を制圧できるだろう。」
「殿下は大陸一の魔法使いだぜ。こんなの朝飯前だろうよ。」
「まあ、大陸一かどうかは定かではないが、アレシアに私より力量が上の魔法使いがいたら、今頃私のゴーレムなどは撃破されていてもおかしくはないだろうな。」
3体どころか1体のゴーレムすら倒せていないということは、アレシアにはアルベルトより上の魔法使いはいないっていうことになるわね。
そうよ、アレク、大丈夫なの?
「ええ、お蔭様で。まだ多少フラフラしますが、何とか歩けます。」
「思えば、私の代わりに卿が暗殺者の毒牙にかかったからな。本当に申し訳ないと思っている。」
「もったいないお言葉です。」
本当は、あたしに対しての毒牙だったのに、アルベルト殿下……。
「とにかく休むことだ。十分回復するのだぞ。」
「ただ、適度にリハビリはしておけよ。いざというとき、おめえの体が言うことを聞かなくなっちまうからな。」
「承知しました。」
アルベルトとザウアーの言葉にアレクが返答したとき、怪我をした兵士が入ってきたわ。
「そうか。アレシア軍も反撃してきたか。」
「殿下のゴーレム任せにしてしまい、つい油断してしまいました。」
「あれほど油断はするなと言っておいただろう。戦場ではほんの一瞬の油断が死につながるんだぞ。」
「は、申し訳ありません、将軍。」
ここで、アレクが兵士に駆け寄った。
「貴殿、負傷しているな。私の魔法で治療して差し上げよう。これもリハビリの一環だ。」
え、ちょっと……まだ早すぎるんじゃない、アレク。
「ヒール!」
「おおっ。アレク隊長。怪我が治りました。ありがとうございます。
「バカね、当たり前じゃないの! あんたの怪我はあたしの癒しの歌スペシャルでも効かなかったくらいだったんだからね。」
「確かに卿の力は戻って来ている。だが、まだ安静にしていなくてはならんな。お嬢さん方、引き続きアレクの看病をお願いしますよ。」
そして、数日が経過した。
アレクも、だいぶ一人で歩けるようになったわね。
それにしても、いい気持ち。
「そうね〜。講和条約が成立したら、少しは平和になるのかなあ。」
クリスもつぶやく。
「いや、仮に成立しても、バイエルン王国の東にあるルーシ帝国との戦いは避けられないだろう。」
アレクったら、雰囲気を壊さないでよ。でも、そうやって現実的になっているってことは、アレクもだいぶ回復してきたってことなのよね。
「戦はまだ続くってことね。」
リーゼルもぼやく。
と、見張りの兵士が何かに気づいたみたい。
あたし達は見張りの兵士の方へ駆け寄る。アレクには無理をさせず、あたしが付き添ってあげた。
コンバットエンジェル!? また来たわね。アレクが完全に回復していないのに、容赦ないんだから。
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2022/01/17
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