フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第36回】西岸からの奇襲

 驚いたのはアレシア兵の方だった。こちらは、要塞を攻め込むつもりだったから、要塞の正門に門番がいるのは先刻お見通しである。しかし、アレシア兵側は、見知らぬ男と4人の少女を目の当たりにして、動揺を隠しきれないようだった。



「そんなこと言わなくてもわかるでしょ。あたしたちは侵入者よ、し・ん・にゅ・う・しゃ。そんなことも分かんないのぉ〜。」
 ソフィーが悪戯っぽく笑いながら言う。
「そこを動くな!」
「やだよ〜だ。」
 リーゼルもアレシア兵を挑発する。
「さあ、いくわよ!」
 ソフィーの掛け声とともに花火が上がった。昼間だから、光というよりは音に驚いたようだった。



「シュラール将軍、て……敵です!」
「あの程度の敵、排除できずにどうする! ええい、退けい! 私がやる!」
 ついに将軍のお出ましか。シュラール将軍とやら、お前の部下の4隊は、悉く“あの程度の敵”に屠られましたが、何か?



 アレク、リーゼル、クリスは、それぞれのスキルを用いてシュラールを集中的に攻撃、エルは1ターン目は葬送行進曲、2ターン目からは癒しの歌スペシャルを連発した。
 流石は将軍の地位にいるだけあって、部下の兵よりダメージは大きかったが、将軍を先に斃す作戦は功を奏した。



 こうなってしまうと、残る2人の兵士はただの木偶(でく)の坊に過ぎなくなる。将軍でも勝てない相手に自分たちが勝てるわけがないと思ったのか、ただ単に弱々しく抵抗するだけだった。



 そしてまた一体、敵が斃れていく。結果は無論……



 そして、氷の指輪を手に入れた。こういったアイテムは、今後使っていこう。クリアまで使わずじまいでした、では、このゲームの原作者が悲しむだろうからな。
「そんな……シュラール将軍がやられた……」



 あれ、フォルゲン伯爵のそっくりさん? だが、そんなツッコミも虚しく、味方部隊が到着した。
「そうはいかねえんだよな。アレク、お前たちは一旦退避しろ! あとは俺たちがやる!」
 委細承知! あとはよろしく頼みましたよ。ザウアー達の奇襲戦法は的確だった。
「野郎ども! アレク達の撤退を支援しろ!」
「承知しましたぜ、親分。」
 親分……あ、そうか。サウザー将軍は元山賊だから、将軍よりも親分と呼ばれる方に慣れているのか。
「そうはさせるか! 追え!」
「ふ、あばよ。」
 そう言って、ザウアーは敵に黒い玉を投げつける。ボォォウン!
「ゴホゴホ…これは催涙弾。ぐう、前が見えない。」
 目の見えない敵の包囲網を脱出するのは容易だった。
「総員、要塞外へ退避!」
 ザウアーの号令とともに、手下が退散する。

 数刻後、ディジョン要塞にて……。
「ごほっ……ゲクラン侯爵様……。」



 このゲクラン侯爵と呼ばれた男、顔立ちが整い過ぎている。こういう輩は同性に一番嫌われるタイプだな。まだ事実がないから言うべきではないが、こういう輩は異性を自分の生理的欲求を満たすためだけの道具にしか見ていない傾向にある。同性の友達が一人もいないタイプだ。
「ごほっ、ごほっ…。要塞の西側から敵が出現、守備兵に死傷者が出ました。シュラール将軍も討ち死にしました。」
 フォルゲン似の隊長がゲクラン侯爵に報告する。
「なに、シュラールが? そして、敵の人数は?」
「ごほっ…それが……数十名の手練れの兵でした……」
「何、その程度の兵にやられただと。たわけ者が。貴様ら、あれほど油断するなと言っただろうが。」
「申し訳ありません。ごほっ。」
「こうなったら、西側の防備も固めなくてはならぬ。ヴェルデ将軍。」
「はっ。」
「卿は、2000の兵を指揮し、要塞西側を張れ。少数の敵なら野戦に持ち込んでも構わぬ。判断は卿に任せる。」



 このヴェルデ将軍と呼ばれた男も、顔立ちが整っている。こういう優男(やさおとこ)は、冷酷無比と相場が決まっているものだ。事実無根だからあまり声を大きくして言えないが、異性を弄ぶだけ弄んで、飽きたら捨てることを繰り返すのがこのタイプだ。捨てられた女性は、捨てられたことすら気づかずに廃人化するのもこのパターン。あまり揣摩臆測(しまおくそく)で物を言ってはいけないのだが、故国ジパングにおいて、私の周りに同性の友達が一人もいない輩がいた。尤も、異性との交友関係は不明だが(それを揣摩臆測というのだよ)。
「それにしても、敵もなかなか大胆なことを。して、補給部隊はいつ頃到着するのか。」
「近日中には……。ごほっ。」
「もう少し具体的に、あと2日などとは分からないのか。」
「は。申し訳ありません。ごほっ。」
「まあ、良い。一日も早く補給部隊を到着させろ。何か嫌な予感がするのだ。」
「ごほっ。承知しました。」



 要塞内部でそのような会話がされていることは、勿論私達が知る由もなかった。
 目指すは、ディジョン要塞の補給部隊。ここを叩けば、アレシアは瓦解する。


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2021/12/15


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