フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第33回】強敵の意外な側面

 評定所を出た途端、目の前に魔物とそれに立ち向かう兵士達がいた。こいつがワイバーンか。
「アレク隊長……。」
「みんなは下がっていなさい。ここは我々に任せてもらいたい。」
 我々というよりは、他の3人がメインなんだけれどね。それは言わないことにしよう。



 えっ、ワイバーンは女? ワイバーンというよりはハーピー(ハルピュイア)に似ているぞ。だが、容赦はしない。戦場に性別などない。



 変身したワイバーンだったが、今の我々はその上をいっていた。
 エルが大活躍。リーゼルの技も多彩。そして、クリスの打撃は我々の中で最強だ。



 倒したのは「アレク」たちではなく、女の子3人なんだけれどね。私の取り柄は何なんだろうと思う今日この頃……。
 フレイムシールドを入手した。これはなかなか使えそう。



 顔が全然断末魔ではないんだけれど。大方、作者の一身上の理由によるものだろう(?)。
「なに、ロキだと。」
 公爵、いきなり驚かさないでくださいよ。
「いや、すまん。いてもたってもいられなくてな。たった今、軽兵ばかり凡そ1000を連れて到着したところだ。」
 それにしても、ロキとは北欧神話に出てくる神の名だった気が。
「そうだ。北欧神話では光の神バルドルを殺害した神だな。最期はアース神族を滅ぼすために出撃し、ヘイムダルと相討ちになったと伝わるが……、ってどうした、アレク?」
 頭がクラクラしてきた。公爵の話があまりにマニアック過ぎて、ついて行けなかったとはとても言えない……。
「やはり、奴等の狙いはフィンブルの冬なんでしょうかね?」
 適当に返しておこう。
「うむ、そうかもしれぬな。」
「ここで立ち話もまずかろうと思います。まずは評定所に入って、伯爵に報告しましょう。」
 大臣がうまく締めくくってくれた。やはり亀の甲より年の劫だな。



 フォルゲン伯爵とアルベルト公爵は、立場的には対等らしい。他国の伯爵に対しては丁寧な物言いになるのか? 私も言葉遣いには時と場所を選んでいるが、この2人は良く言えば丁寧、悪く言えばよそよそしい。
 ここから先はちょっと話が長くなるので要約すると、
  • メリュジーヌ(ワイバーン)の断末魔にロキの名を言い遺した。この一件にはロキが関係している。
  • 実は、50年前に大臣は魔族からの要請により、魔界に行ったことがある。
  • 魔族の食事は我々人間と大して変わらない。
  • 魔族が大臣に要請した理由は、魔族が神に敗れて人口が減ったため、緊急で食糧の確保が必要だったからである。
  • 公爵も知らなかった大臣の過去を大臣自らが話した理由は、この一件は魔族とは無関係と思ったからである。
  • ロキは当時の魔族の支配者で、大臣はロキから感謝された。だが、50年も経てば状況も変わるであろう。
  • 大臣が解せぬのは、ロキが神と結託して、本当にフィンブルの冬を目的にしているのかどうかである。
  • 「我らはとてつもない強敵と戦うことになるな。」
     その場にいる者達の表情は真剣だった。2人を除いては……。



     なら黙っていろ。私がそう言いかけたそのとき……。
    「エリーゼ隊長、わからないなら黙っていてもらえませんか?」
    「パウラ隊長、想像できないなら黙っていてもらえませんか?」

     これには私も驚いた。クリスとソフィーの目は真剣そのもので、思わず目を反らしてしまうほどだった。
    「娘が母親に口答えするの?」
    「姪が叔母に口答えするの?」
     お前ら、こういうときだけ御都合主義かよ? だが、彼女達の次の言葉で2人の隊長は完全論破されることになる。
    「ここは戦場です。親も子もありません、エリーゼ隊長!」
    「ここは戦場です。叔母も姪もありません、パウラ隊長!」

     2人の隊長は二の句が継げなかった。何しろ、「ここは戦場」という言葉は、彼女達が発したのだ。その言葉をそのまま正論で返されてはひとたまりもない。冒険を始めた頃には頼りないと思っていたクリスとソフィーが大きな存在に見えた。と同時に、私は心なしか満足感を得ていた。自分の言いたかったことを彼女達が完璧に、否、私の想像を超越した形で代弁してくれたのだ。この状態で私が何を言っても蛇足にしかならないだろう。
     凍りついた評定所の雰囲気を軌道修正したのはフォルゲン伯爵だった。
    「ともあれ、やはりこの戦は止めさせなければなりませんな。」
     また話が長くなるので要約すると、
  • メリュジーヌ(ワイバーン)はアレク達のみを狙っていたようである。
  • アレシアには癒し手がいるということは、アレシアはモンスターを雇っていると考えた方が妥当である。
  • アレシアがアルベルト公爵との講和をはね付けた理由も肯ける。マルクス教徒ともつながっている可能性もある。
  • 川の西側にあるディジョン要塞を陥落させる必要がある。ディジョン要塞の戦力(兵士)は推定で7000である。
  • 城を攻めるには、敵の兵力の3倍(即ち21000!)必要であると言われるが、アルベルト公爵軍は2000ほどで、桁が違う。
  • だが、軍隊というものは兵站(へいたん……補給部隊)が整っているからこそ力を発揮できるものである。
  • 明日、ライン川上流からザウアー将軍率いる特殊部隊1000人を率いて、渡航作戦を開始する。
  •  と、ここまで話が進んだ上で、今日はここまでとなった。先程の戦闘での疲れもある。



     えっ? 伯爵って、指示を出していたの? まあ、そういうことにしておこう。軍の上官命令は絶対というのは、いついかなるときでもではない。上官が理不尽な命令を出し、下官に謀叛を起こされることは珍しくはない。フォルゲン伯爵は影は薄いが指示や命令は的確である。
    「明日に備えて休むがいい。本日はこれにて解散。」
     クリスとソフィーは、エリーゼとパウラとは一瞥もくれず、まっすぐに宿舎に向かっていった。
     私は2人の様子を見に、2人を追いかけるように宿舎へ向かう。エルとリーゼルは事態を察し、やや遅れ気味に宿舎へ足を運んだ。
     私が宿舎に着いたとき、クリスとソフィーは振り返り、私の方に近づいてきた。2人の隊長に反論したときの顔のままで、思わず冷や汗が出る。だが、2人の目からは涙があふれ出ていた。2人の涙が宿舎の床を濡らす。評定所という慣れない雰囲気での緊張が解けたのか、真剣な表情が徐々に崩れ始めた。そして、無言で私の胸に飛び込んできた。戦場では親も子もないことを認識したのか、あるいはワイバーンが怖かったのかは分からない。私はただ黙って、すすり泣いている2人を抱き締めた。私は2人にかける言葉が見つからなかった。もしかすると、それが正解だったのかもしれない。下手に言葉をかけると、これまで積み上げてきたものが一瞬で崩れてしまいそうだったからだ。
    「悔しいけれど、今夜は隊長達をあのままにしておきましょう。」
    「そうね。でも、次の機会には私達がアレクに抱きしめてもらいましょう。」



     一夜が明けた。クリスとソフィーはあのまま私の胸の中で眠ってしまった。
    「おはようございます、隊長。えっと……昨夜は………あの…………ありがとうございました!」
    「いや、いいんだ。昨日は色々あったからね。」
     昨日のクリスとソフィーの言動は間違っていないと私は確信している。あの2人も少しは懲りただろう。
     朝起きたときの、クリスとソフィーの表情はいつもの通り……いや、少し大人びているように見えた。女の子は泣いて強くなるものなのだろうか? 最近そんな気がしてならない。



     みんな、刻一刻と大人になってきている。もしかすると、この中で一番成長していないのは私なのかもしれない。
     私は、昨日のことを思い返していた。それにしても……



     ディジョン要塞がソロモンとやらに似ているのは公爵と大臣の共通認識として別に気にならないのだが、その後の咳払いが非常に気になる。
     この咳払いはこの物語の作者の口癖の気がするのは、私の気のせいではないかもしれない(何という回りくどい言い回しなのだろう)



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    2021/11/14


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