フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第27回】アルザスへの道

 ここがアルザスか。(管理人も知らなかった)故郷である。だが、いきなりは入れないらしい。そこで、城の右(東)側にある湖に入ろうとすると……



 素通りしてしまった。これでは仕方がない。天下布武の幟に行くとするか。



 ここは、イザール大橋のときの布陣に似ているなあ。扉の奥へと入り込む。兵士の右手に宿舎が見える。奥の方へ進むと……。



 アルベルト公爵、ハスラー将軍、大臣、そして、見慣れぬ顔があった。誰だろう? だが、誰であってもここにいる以上、兵士としての腕前も公爵からの信頼も十分にある者とみて間違いない。
 アルベルト公爵の話を聞くことにする。



 いかがと聞かれても、イザール大橋の布陣に似ていて、ごくありふれた布陣としか。強いて言えば、天下布武にふりがなを振ってもらえるとありがたいのだが。と、ここでエルが口を挟む。
「ここはドイチュでしょ? 畳があるのって変よね。それに、畳って、四隅が一か所に集まる敷き方を『不祝儀敷き』といって、あまり縁起の良い敷き方ではないと聞くわよ。」
 って、どうしてジパングの人でも知らないようなことをエルは知っているんだ?
「まあ、これから起こることはあまり祝儀と関係ないからいいんじゃない?」
 ソフィーがエルの言葉に続く。エルのソフィーの思わぬ返答に公爵も二の句がつげないようだった。公爵の後ろに控えているハスラー、大臣、そして見慣れぬ顔の人物まで笑いを必死に噛み殺しているのがわかる。
 エヘン!
 アルベルト公爵は大きな咳払いをした。何とかうまく(?)ごまかした模様である。
「扨(さて)、卿もアルザス出身なら、アルザス城へ抜ける間道の存在については知っておろう。」



 その三日月湖って、さっき私が素通りしたところ? やっぱりさっきの湖は関係あったんだ。とりあえず興味ある場所から調べてしまう管理人であった。
「卿にはすまないが、その間道から城内に侵入してもらえないか。」
 それはお安い御用です。
「そして城内に侵入した後、これを使って騒ぎ立ててもらいたい。」
 アルベルト公爵がそう言って取り出したのは、大きな花火玉だった。
「私は花火師でもあるからな。」
 そんなの初めて聞いたぞ。しかし、アルベルト公爵に言われて、あることを思い出した。カール王子が本物のアルベルト公爵からの書状かどうかを確かめる言葉が花火大会に関する言葉だったような気がする。尤も、昨今のジパングでは太陽を取り巻く形に似たウイルスが原因で悉く花火大会が中止になってしまったが。
「さて、ザウアー将軍。」



 この見知らぬ人はザウアー将軍というのか。油断ならない顔つきをしている。ハスラーが筋金入りの戦士タイプというならば、ザウアーは策士タイプという気がする。
「卿らは別ルートにて城下町に侵入し、アレク隊長達が騒ぎを起こしている隙に城門を開けてもらいたい。」
「合点承知の助。」
「がってんしょうちのすけ……、ザウアー将軍って、がってんしょうちのすけさんというのが本名なんですね。」
 ソフィーの言葉にアルベルト公爵側は全員ズッコケてしまった。
「いや、お嬢ちゃん、合点承知の助というのはジパングの古語で、現代風に言うと『殿下の御言葉、確(しか)と承りました。』という意味なんだよ。」
 外見とは裏腹に、丁寧な説明をする人だ。



「あの高い城壁を登るの?」
 クリスが驚きの表情を見せる。もし本当に城壁を登る技能を持っているとしたら、ギルドのグスタフに匹敵する程の地位を得られるのは間違いない。
「ちょっと、さすがに勘弁ね。」
 リーゼルも口を挟む。勘弁も何も、そんなこと普通の人にはできないだろう。



 ザウアーの笑いに、少し安心感を覚える。この人はジパングで言う「忍者」に近いだろう。
「我ら主力部隊は、ザウアーの合図があるまで待機。」
「念のため、我らハスラー隊は敵の奇襲に備えます。」
「うむ。そうしてもらいたい。」



「ええ、大臣って、魔法が使えたの? じゃあ魔法で殿下が本物か偽物かを見抜けなかったの?」
 コラッ、ソフィー。余計なことを言うんじゃない。
 だが、言われた当の大臣は怒りもせずに冷静にソフィーに言った。
「お嬢ちゃんの言う通り、わしは確かに魔法が使えたにも関わらず、殿下が本物か偽物かもわからなかったバカじゃ。それについて弁明の余地はない。じゃがな、わしもこの戦いに命を賭けておる。内戦で亡くなった領民達に比べたらわし1人の命など軽い。だからこそ、内戦で亡くなった領民やその遺族達が『それなら仕方がない』とある程度納得してくれる結果を出したいのじゃよ。わしも、もう少し早くお嬢ちゃんに逢えれば、犠牲者をゼロとまでにはいかずとも最小限に留めることができたろうに。それが残念じゃ。」
 ソフィーの目に涙があふれている。
「ごめんなさい。ただ人に言われた通りにしていればいい私と違って、大臣は王国全体のことを考えないといけないのに。王国全体のことを考えるのはそう簡単なことじゃないのに。勝手なことばかり言ってごめんなさい。」
 本陣には、ソフィーのすすり泣きだけが響いていた。
「いいんじゃよ。お嬢ちゃんの言っていることは何も間違ってはおらぬ。お嬢ちゃんのような子がいなくなったら、それこそ王国はマルクスに乗っ取られて独裁国家になってしまうことじゃろう。」
 流石は大臣。強制的にではなく、自発的にソフィーの言い過ぎを諫めた。これでソフィーも言葉を選ぶようになるだろう。将来ソフィーが上の立場になったとき、言っていいことと悪いことの区別がついていないと、上からではなく下からの評価が劣悪になる。そうすると、軍内に裏切りが生じることになる。



 そして、笑顔で締めくくったアルベルト公爵も一国の城主にふさわしい人物と言えるだろう。
 彼女達は、戦いを通して成長しているようだ。私も以前ほど彼女達に物を言わなくなった。無論、それはいい意味でだ。言っても仕方がないのではなく、言う必要がないからだ。

 次回、それぞれのルートを進む。



← 【第26回】へ | 【第28回】へ →


2021/02/28


直前のページに戻る

『フィンブルヴェトル物語』のトップに戻る

電源系ゲームプレイ録のトップに戻る

トップに戻る


(C)批判屋 管理人の許可なく本ホームページの内容を転載及び複写することを禁じます。