フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第26回】フィンブルの冬

 ロールシャッハ城へ行く前に、準備を整えておこう。フォルゲン伯爵の「新しいラインナップ」とやらを見に行く。
 案の定、リーゼルが文句を言いだした。



 すると、リーゼルママは言った。
「まだまだ甘いわね、リーゼル。私は雑貨屋のママとして、お客様に宣伝する義務があるのよ。伯爵に言えば、あなた達はもちろん、城の兵士達にも伝わるでしょ? そうしたら、うちは商売繁盛というわけよ。わかった?」
 流石は雑貨屋、少ない労力で宣伝効果を上げている。
 では、そのラインナップされた商品とやらを見てみよう。現在の所持金は1666マルク。1700マルクのバトルアックス(クリスの攻撃力+4)には僅かに足らない。そこで、手持ちのメイスを売却。これでバトルアックスを購入できる。後にお金が必要になることを考えて、それまでクリスが使っていたバスタードソードを売却した。これでよし。いつの間にかクリスの攻撃力が3桁に突入している。
 クリスのママにも会っておこう。
「おかえり、クリス。」



 クリスが私の隊列に加わった頃と比べると、クリスは大きくなったと思う。身体的な発達という意味だけではなく、気品や精神面などの雰囲気的な面でも、優雅な女性に変わりつつある。尤も、本質的なところは変わっていないが、そういうところが良い。
 これで準備は整った。早速ロールシャッハへ向かうことにしよう。アルベルト公爵が早まった真似(例:切腹)でもしたら取り返しがつかなくなる。影の薄い伯爵に会えないのは分かっているから、直接ロールシャッハへ。
 ロールシャッハ城の王の間には、アルベルト公爵と大臣、そしてもう一人いた。どこかで会ったような気がするが、果て、一体誰だろうか……。



 あのう、どちらさまでしょうか。
「おいおいおいおい、それはないだろうが。俺だよ。ハスラーだよ。イザール大橋にいたハスラーだよ。」
 あ〜はいはいはいはい、思い出しました。ハスラー将軍ね。そう言えば、自らの首を刎ねてお詫びすると言い出したのはこの人だった。すっかり忘れていましたよ。フォルゲン伯爵ほどではないが、登場回数が少ないためかこの人も忘れ去られた存在になっていた。
「俺はいいから、早く殿下に挨拶を。」
 そして、アルベルト公爵に向き直る。しかし、こちらが口を開く前に公爵から話しかけて来た。
「挨拶などは良い。女王陛下に現状を伝えてくれたな。」
「ええ、殿下から書状をお預かりしております。まずはご一読いただけますでしょうか。」
「では、拝読しよう。」
 殿下は女王陛下からの書状を読み進めていった。



 殿下の顔に驚愕の表情が浮かび上がってくる。殿下だけではない。大臣も、そして自らの首を差し出すことを前提としていたハスラー将軍までもが驚いたようだ。
「殿下。我がロールシャッハ軍だけでアルザスを解放してくださいとの女王陛下からの御言葉ですが……」
「うむ。陛下がこれを所望であるならば、我々はこれに従う他はない。しかし、我々への処分は追って沙汰を待つようにとのこと。解せぬ。これは一体どういうことであろう。」
「まあ、私は書状を渡すよう、女王陛下から命令されただけですからね。」
 無論、女王陛下がなぜこのような書状を認(したた)めたかの理由は知っていた。否、知っているも何も女王に手紙の内容を示唆したのは私なのだから。もう少し正確に言うと、私よりも彼女達4人の意向の方が大きい。女王陛下はもともと誰の処刑も望んではいなかったのだから、自然な流れとも言えるだろう。戦争犯罪人の末路について無知蒙昧な女王陛下ならではの内容だった。
 ここで、大臣が現状を確認する。
「殿下、バイエルン王国は今、東からルーシ帝国、西からアレシア王国の圧力を受けておりますな。」
「確かに、バイエルン王国が自由に動かせる軍と言えば、今のところ我らロールシャッハ軍のみですからな。」
 ハスラー将軍も現状を述べる。と、ここで公爵が心に決める。
「ハスラー将軍、至急軍を編成してもらいたい。陣容が整い次第、アルザスへ向けて進軍する。」
「承知しました。」
「さて、アレクよ。我が偽者が散り際に言っていたことがあったな。」
 確か……



「一般的に、神と魔族は起源を同じくするが故対立すると考えられてきたが、もしも本当なら由々しき事態。」と大臣。
「そこで、我らは可能な限りの文献を読み漁り、事の真相を調査していたのだ。」とハスラー将軍。
 そして、公爵が話を継ぐ。
「仮に神と魔族が同盟を組んだとして、どのような利点があるのかを考えた。」
「どういう利点なの?」とエルがすかさず尋ねる。
「それは未だ分からぬ。だが、神と魔族が同盟を組むとどういうことになるか。考えれば考えるほど一つの結論にたどり着いたのだ。」
 それはどのような結論だろうか。



 フィンブルの冬? そんなものを起こして、奴らにどんな利点があるのだろうか。
「ねえアレク、その『フィンブルの冬』ってなぁに?
 エルが尋ねる。
「私も詳しくは分からないが、夏が一度も訪れることのない、気候変動のことを言うらしい。似たような言葉に『核の冬』という言葉がある。物凄く雑な説明をすると、核戦争が起きたときに降り注ぐ灰が太陽の光を大幅に遮りその結果太陽の光が十分に差さず、急激に気温が低下して氷河期を迎えるという。故国ジパングで言われている言葉だよ。」
 とここで、リーゼルが殿下に尋ねる。
「どうしてフィンブルの冬という結論に至ったのでしょうか?」
「まだ『フィンブルの冬』と断定したわけではないが、このフィンブルの冬を起こすには、神、魔族、そして人間の生き血が必要であると文献には書かれていた。」
 大臣が補足する。
「人間の場合は大陸の八王者の血、即ち、各国の国王の生き血が必要じゃ。」
 ここで、クリスが訝しがる。
「でも、八人の国王の生き血なんて、集まるのかしら? 今は、物理的に不可能よね? だって、クラクフ王国は……」
 そう、クラクフ王国は滅びている。だが、それを言うならばバイエルン王国の国王、即ちアルベルト公爵の兄も今は死んでいる。要は、王の血筋を引く者の血ということだろうか。いずれにせよ、今では大陸のほとんどが戦乱に巻き込まれている。もしこれが連中に仕組まれたことだとすると、連中は戦乱の隙を見てフィンブルの冬を成し遂げてしまうことになる。飽くまでもこれらは推測の域を出ないが、フィンブルの冬が来ようが来まいが内戦などしている場合ではないのは火を見るよりも明らかである。
 ここでハスラー将軍が口を開く。
「アレシア王国は、一時期我らが提案した、アレシア王国にとって悪い話ではない講和条件を無視し、今でもバイエルン王国を攻めております。」
 そう、攻撃的な国との戦いは止むことがない。バイエルンやロールシャッハに戦争の意志はなくても、喧嘩を売られている以上戦争は続く。既に暴力的になっている輩に対して話し合いだけで解決しようなんぞ単なる絵空事に過ぎない。かくなる上は、ある程度アルザスの連中を叩き、彼らを不利な条件に追い込まなくては講和は結べないと思った方がよい。
「殿下にお願いです。軍を編成したら、私達も同行させてください。アルザスは私の故郷なのです。」
「なるほど……そなた達がいれば心強い。同行願おう。兵士が集まるまで数日はかかるだろう。そなた達はそれまで宿屋でゆっくり休むがよい。」
「ありがとうございます。」
 宿屋の部屋についてはもう何も言わなかった。半ば彼女達に連行される形で5人同じ部屋に泊まった。彼女達が寝巻に着替えている中、私は一人で考え事をしていた。
 プレイして26回目にて、漸くこのゲームのタイトルである「フィンブルヴェトル」の言葉が出てきたか。「フィンブルヴェトル」という言葉はドイチュという国の言語が語源なのは知っていたが、その意味は今回初めて知った。ここまでくると「物語」というよりは「ガリア」や「アルスラーン」といった「戦記」に近いものがある。ジパングでいうと「平家物語」にあたるものだろうか。ちょっと違う気もするが。
 だが、それ以上のことを考えることはできなかった。彼女達が寝る準備を終え、私をベッドに連行したからである。私はいつも通り四肢を彼女達に一つずつ拘束された形で寝ることになった。いつか、私の手足は一本ずつ彼女達に分配されることになるのだろうか。そんな恐ろしいことを想像しながら眠りについた。





 私達は、ロールシャッハ城を南下する。さっき(数日前)まで融通の利かない兵士が「封鎖中」と言っていた橋が通れるようになった。しかし……



 天下布武……こんな幟(のぼり)あったっけ? 封鎖中にはなかったはずだぞ。
「ねえ、アレク。あの『てんかぬのぶ』って何?」
 すかさずエルが尋ねる。
「あれは『てんかふぶ』と言って、ジパングの有名な兵士の織田信長という人の政策の一つと言われているんだ。」
「どういう意味なの?」
「字義通りに解釈すると『天下に武を布(し)く』と読めることから、武力で世の中を治めるという意味とも取れる。しかし、実は『武』という字を分解すると、戈(ほこ)を止めるとも取れるから、一概に武力で天下を治めるとは言い切れない説もあるらしい。尤も、信長の言動から見てとると、『武力で天下を治める』と解釈されても仕方がない気がするけれどね。」
「ふーん、何かよくわからない。」
「私も歴史はあまり得意ではないから、私の主観と漢字の意味で表面的にさらうことしかできていないけれどね。(管理人注:天下布武に関するご批判などありましたら 掲示板 へお願いします)
 しかも、画面左下には温泉マークがあるし。多分この温泉にも行くことになるんだろうなあ。尤も、バイエルン城の北部の塔や東部の橋など、未踏破の場所はいっぱいあるから、気長に構えるしかないだろう。いよいよ我が故郷アルザスへ。

 (↓現在のステータスです。画像をクリックすると詳細を見ることができます。↓)

 (↑尚、ソフィーはステータス画面には登場しません。↑)



← 【第25回】へ | 【第27回】へ →


2021/01/03


直前のページに戻る

『フィンブルヴェトル物語』のトップに戻る

電源系ゲームプレイ録のトップに戻る

トップに戻る


(C)批判屋 管理人の許可なく本ホームページの内容を転載及び複写することを禁じます。