フィンブルヴェトル物語(プレイ日記)



【第10回】ギルドとの取り引き

 ソフィーの隠れ家(?)にて。
「さて、アレク隊長。ご用件は何かしら? もしかして、私を助けに来てくれたの?」
「助けにというよりは、密偵のソフィーと接触しに来たと言った方が正しいかな。パウラもあなたを心配していたしね。」
「叔母様が……? やだなあ、私大丈夫なのに。伯爵様からは、もしかしたらアレクと呼ばれる人と接触させるかも、なんて事前に聞いていたんだけれど……」
 だから影の薄い伯爵は詳しいことを何も言わなかったのか。
「実は、活動資金も底を尽きかけていたし、隊長さんたちが来てくれたのは率直にありがたいかも。橋が封鎖されて、帰るに帰れなかったしね。」
「キュン……いやソフィー、これまで得た他の情報は?」
「大した情報はまだつかんでいないの……。ただ、3ヶ月前から殿下の性格が一変したとか、城に潜入するのに抜け道があるとか、そのくらいかな。」
「じゃあ、その抜け道から城に潜入しましょう!」
 エルが口を挟む。だが、言うは易く行うは難し。それに、ソフィー自身、その抜け道がどこにあるのか分からないらしい。
「そう……それが分からないとなると厳しいわね。」
 リーゼルが口を開いた。続いてクリスも意見を言う。
「城の入口を強行突破するっていうのは、まずいかな?」
 それだと、まず入口の衛兵から袋叩きに遭うだろう。そして、強行突破をしたことにより、場内は厳戒態勢が敷かれることとなるだろう。



 さっき行ってはみたが、取りつく島もなかったぞ。何か話し合える口実でも?
「城への潜入ルートの存在なんだけど、その情報の出どころはギルドなのよ。彼らも今の殿下はよく思っていないから、意外に協力してくれるんじゃないかしら?」
 なぜよく思っていないのだろう。
「何でも、城への上納金が今までの倍になったとか。」
 じょうのうきん? あまり響きが良くないなあ。ギルドへ課された税金の類か何かとしておこう。確かに、理由もなく税金が倍になってしまったら運営に支障をきたすことは必定だろう。
「ねぇ、相談するだけ相談してみない?」
 エルが聞いてくる。ソフィーもいることだし、ギルドの連中もさっきと対応が異なるだろう。



 さて、再びギルドにやって参りました。入口の男は相変わらずこちらを睨み付けているが、特に襲いかかってくる様子はない。
 受付にはさっきと同じ男がいる。
「また来たな。よう、何か用かい?」
 ソフィーが答える。
「ええ、ギルドにお話ししたいことがあるの。」
「お嬢ちゃん、あんたここがどういうところが知っているのかい?」
 さっきと対応が同じだ。しかし、ソフィーはここで切り返す。



 途端に、受付の男の顔色が変わる。



 ということで、我々はギルドの地下室に案内された。



 まあ、常套手段だろう。
「で、俺達に何を依頼したいんだ?」
 至極当然の質問だろう。だが、その前に念を押しておくことがある。我々のことは内密にしてもらいたい。ギルドにも守秘義務というものがあるはずだ。
「さっきも言ったが、状況と金によってはそんなもん約束できねえな。アレク隊長さんよ。」
 どうして私の名前を……?
「俺達も伊達にギルドを運営しているわけじゃあないぜ。近隣諸国の騎士団長くらいは調べ上げているさ。自己紹介が遅れたな。俺の名前はグスタフ。一応ギルドの頭だ。」
 ギルドの頭自らが受付を担当しているとは、ギルドのメンバーはみんな現場主義なのだろうか?
「で、あんたらの依頼は何だ? 依頼もなしにギルドに来たわけではあるまい。」
 ここで、ソフィーが応対する。
「仕方ないから言うけれど、私達はお城への潜入ルートを探しているのよ。」
「城への潜入ルート? そんなもん聞いてどうする?」
「殿下が豹変したことはあなた達も知っているわよね? そのせいで、あなた達も随分割を食っているのも事実じゃない? 上納金を倍にされて、運営が厳しくなっているみたいね……。」
「そこまで調べているのか。」
「だから、私達に協力しない? 城に潜入できれば何か分かるかもしれないじゃない。」
「やれやれ……確かに、城への潜入ルートは俺達も知っているぜ。一般市民は当然知らないけれどな。」
 さすがはギルド。蛇(じゃ)の道は蛇(へび)と言ったところか。
「だがな、アレク隊長さんよ。あんたも騎士団長クラスの人間なら、当然ロールシャッハにも知り合いがいるだろうが。そいつに頼んで城の中に入れてもらえばいいじゃねえか。なぜそうしない?」
 それができたら苦労はないわ。私は思わず言い返す。
「確かにロールシャッハの騎士隊長連中に私の名前を出せば、私は何の咎めもなく城に入れる。だが、今はさる御方の内命により隠密行動中でな、ロールシャッハの騎士隊長連中に私がここに来ていることを知られたくはないんだ。グスタフ、お前さんもギルドの頭ならそのくらい察しがついても良さそうだがな。」



「やっぱりお金なの? 確かにあなた達も逼迫していることはわかっているけれど。」
 クリスがやや不満げに言う。そしてエルが後に続く。
「そうよ、私達は“Give and Take”(ギブアンドテイク)の間柄じゃないの?」
 ギブアンドテイク……この近隣諸国はどちらかというと、ドイチュという国の言語(ドイツ語)に近い。果たしてこの言葉が通用するものだろうか……。とここで、グスタフが口を開く。
「まあ聞けよ。欲しいのは金じゃないんだ。」
「お金以外のものってこと? 何か下心ありそうね。まさか、私達の……」
 リーゼルが問い詰める。ところが、グスタフの要求しているものはお金といった即物的なものではなく、また生理的欲望に基づくものでもなかった。
「恥ずかしい話だが、ギルドに裏切者が出た。そいつを捕まえて、ギルドに引き渡してもらいたい。」
 そう言って、グスタフは裏切者の人相書きを私達に見せた。



「裏切者の名はヴィリー。奴はフォルスト一家に、ギルドの情報を売り渡した。」
 聞くところによると、フォルスト一家というのは近隣諸国では有名なマフィアである(だから、こっちは初耳だってば)。
「仲間が命懸けで集めた情報を一介のチンピラ連中に漏らしやがって、ギルドにとっては到底許せねえ行為なのよ。」
 ギルドは盗賊の集団だから“善”の組織とは言い難い。だが、ギルドにはギルド内の仁義というものがあるだろう。裏切りというのは人としての信用を失ってしまう。ギルドの頭がギルドのメンバーに背く所業をしたのであれば話は別だが、グスタフはロールシャッハの町民に嫌われているわけではなさそうだ。
「このところの戦争のせいでな。ギルドのメンバーの中でも武術的に長けている奴らはほとんどが徴兵に駆り出された。手薄になったギルドがフォルスト一家に襲撃され、まともな戦闘員が少ない状況なんだ。その隙に乗じてヴィリーの奴がフォルスト一家と結託したということさ。勿論俺はヴィリーを始末するつもりだった。だが、返り討ちに遭い、そのとき俺は左目を潰されてこのザマさ……恥ずかしい話だが、ヴィリーを取り逃がしてしまった。」
 片目を失うというのは筆舌に尽くしがたいほどの苦痛であろう。ある意味死ぬよりも辛いことに違いない。グスタフは話を続けた。
「無論、あんたらだけでフォルスト一家を殲滅(せんめつ)してくれとは言わねえよ。俺達も一緒に行動する。フォルスト1人さえ始末してしまえば、あとの連中は烏合の衆……。」
 あとの連中はただの人の集まりに過ぎず、組織は瓦解するということか。
「しかし、フォルストの奴、どこで手に入れたか知らんが、奇妙な技――それこそ魔法を使うんだ。正直、魔法の心得のあるギルドのメンバーなんて、ほとんどいないんだ。」
 だから、私達に協力してもらいたいと、そういうことだな。まあいいだろう。私は口を開く。
「話は分かった。協力しよう。但し、守秘義務は遵守(じゅんしゅ)してもらいたい。」
 グスタフは静かにうなずく。
「いいだろう。」
 よし、これで交渉成立だ。
「これは俺達ギルドだけの問題じゃないんだ。フォルスト一家の奴らは内戦を利用し、阿漕(あこぎ)な商売もやっている。年端もいかない子供を攫(さら)って、奴隷として売り払っていたりもするんだ。」
「ひどいわね!」
 エルが憤慨する。
「あんたらも騎士団なら、そういうダニを退治するのも立派な任務の一つだろ。頼んだぞ。」
「じゃあ、フォルスト一家のアジトに出発しましょうか。」
 って、ソフィーまでついてくるつもり?
「当然でしょ。私は密偵なんだから……。あ、でも戦闘はあなた達に任せるわよ。それに、活動資金が底を尽きかけているの。これも人助けと思ってちょうだい。」
 随分自分本位な密偵だこと……。まあ、こうなるのは想定内だけれどな。
「仕方ないわね。じゃあ一緒に行きますか。」
 エルがその場の決定打を放つ。遊びに行くわけではないのだが、いいだろう。
「じゃあ、よろしくな。あと、フォルスト一家に、マルクス教徒も出入りしているらしい。気をつけてな。」
 マルクス教徒……どうせこんなこったろうと思ったわ。恐らく、フォルストはマルクス教徒と結託して魔法を身につけたのだろう。マルクス教徒が絡んでいるのであれば、なおさら放ってはおけない。
「早く出発しましょう。」
 エルが促した。ギルドの地下室から受付に戻る。



 グスタフによると、イザール洞窟付近にある屋敷がフォルスト一家のアジトらしい。それって確か……。



 ここだ。初めてロールシャッハ城に入ったときは素通りした(入れなかった)が、今度は入れるぞ。
 こうして、私アレクは、エル、リーゼル、クリス、そして戦力にならないソフィーの4人を引き連れてフォルスト一家のアジトに潜入することになった。



 (↓現在のステータスです。画像をクリックすると拡大版を見ることができます。所持金は388マルクです。↓)

 (↑尚、ソフィーは戦闘に参加しないのでステータス画面には登場しません。言わばソフィーはNPC(ノンプレイヤーキャラクター)です。↑)



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2019/08/05


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