数学史を知らずして数学を語るべからず


 私の専門分野が数学というのは「私の専門分野」でも申し上げた通りなのですが、数学科を卒業して早数年の月日が経過している私は、最近数学界においてまだまだ知らないことだらけであることを痛感させられました。
 もちろん、無限小解析と呼ばれる微分積分や現代数学の基礎である線形代数といった知識は数学科卒の標準レベルくらいは持っているつもり(但し忘れている部分も多々あり)ですが、それ以上に無知であったことがあります。それこそが数学史なのです。
 現代の全国の大学の「数学科」と名のつく人の中に、次のことを全て答えられる人がどれだけいるのでしょうか。
  1. 数学にはノーベル賞はないが、それに相当する数学者最高の名誉とされている賞の名前は?
  2. 中学3年で出てくる「三平方(ピタゴラス)の定理」(x2+y2=z2)には、およそ何通り以上の証明方法があるか?
  3. 20世紀最大の定理と言われた「フェルマーの定理」をフェルマー自身が証明しなかった理由は?
  4. エジプト王プトレマイオスよりも「偉い」とされた学問は?
  5. アルキメデスの最期の言葉は?
  6. 「和算」で知られた、江戸時代の日本の数学者と言えば?
 実は、上のことは数学科の人は案外知らないことなのです。というのも、現代の大学の数学科において数学史を学ぶ機会というのが極端に少ないか、あるいは皆無だからです。事実、私も6.の答えを知ったのはつい最近2〜3年前のことでした。
 数学に限らず学問には必ず歴史があります。文学にしても平安時代や鎌倉時代、そして江戸時代とどれも同じではありません。また、物理学や天文学にしても、いかに時を計るか、いかに機械を発明するか、そしていかに現代の科学にまで発展させたかは数多くの歴史があるわけです。そういう意味では、学問の歴史を知らない=その学問を全く知らないと言えるわけです。数学史を知らずして数学を語ってはいけないのですね。
 私も数学科を卒業して早数年。数学の歴史をもう一度振り返ってみようと思う今日この頃です。

<↓↓↓上の問題の答え(白黒反転してください)↓↓↓>
  1. フィールズ賞。4年の周期はオリンピック周期と2年ずれています。ちなみに、受賞資格は40歳以下です。
  2. 100通り以上あります。証明方法が多いというのはそれだけ良い定理であることを意味しています。
  3. この証明を書くにはノートの余白が狭すぎる。何とも変わっている理由ですね。数学者には変わった人が多いと言われています。
  4. 幾何学。「幾何学に王道なし」、更には「学問に王道なし(There is no royal road to learning.)」と言われています。
  5. 「私の円に触るな!」アルキメデスが描いた地面の円を侵略してきたローマ軍の兵士に踏まれ、こう叫んで殺されたと言われています。
  6. 関孝和。日本にも、西洋の数学者に負けず劣らずの優れた数学者が江戸時代に存在していたと言われています。

2008/06/15


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