n>2のときx+y=zを満たす自然数の組(x,y,z)は存在しない


 上の定理は、数学界に生きる者ならば知らない者はいないと呼ばれる「フェルマーの定理」です。この定理は17世紀のフランスの数学者ピエール・ドゥ・フェルマー(Pierre de Fermat)が発見した定理の中でも約300年間近く他の数学者は誰も証明が出来なかったと言われています。フェルマー自身はこの定理の証明を知っていたようですが、敢えて証明をしなかったと言われています。というのも、フェルマーがこの定理の証明をノートに書こうとした際余白が少なすぎたからだそうです!数学者には色々な人がいるものですねぇ…。
 この定理の難しさは「満たさないことを証明する」ことにあります。例えば、中学校3年生に出てくる「三平方(ピタゴラス)の定理」は「満たすことを証明する」系統の定理です(ちなみに、フェルマーの定理においてn=2とすると三平方の定理になります)。全般的には定理というのは「満たす」定理の方が圧倒的に多いのですが、「フェルマーの定理」は「満たさない」系統のごく少数派の定理なのです。他の「満たさない」定理の例としては「5次以上の代数方程式ax5+bx4+cx3+dx2+ex+f=0(但しa≠0)の解の公式は存在しない」(アーベルの代数方程式の定理)などがあります。
 さて、フェルマーが死んでからというものは様々な数学者がこの「満たさない定理」の証明に挑戦しましたが、nが具体的な数字(n=3、4、5、…)の場合の証明は出来たものの、一般的な(全ての)nについての証明は誰も出来ませんでした。一般的な証明がされないまま100年、200年と時は流れ、ついにドイツ数学連合会は上の定理に10万マルクの懸賞金を出すことにしました。20世紀初頭(1908)のことでした。そして、このフェルマーの定理の応募締め切りが今日2007年9月13日なのです。
 ちなみに、この定理は、1994年にエゲレス(笑)のアンドルー・ジョン・ワイルズ(Andrew John Wiles)によってついに証明されました。締め切りまであと13年という20世紀末のことでした。
 今日の数学界においても前人未到の定理や命題が数多くあります。例えば「4以上の偶数は、二つの素数の和で表せる」という命題が真か偽かはまだ誰も確認が出来ていません。もしかすると、この命題を確認するのは私なのかもしれない、などという妄想を抱いています…。

参考文献 『新訂 茶の間の数学(下)』笹部貞市郎著(2006年 聖文新社)

2007/09/13


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