魔王の地下要塞


 はるか北方の故郷を飛び出した主人公は、当てもなく方々を彷徨い、もはや資金も底を尽きかけていた。
 そんな日々の中、ドラーケンの森に入って三日目なった主人公は、地面で寝るよりは余程安全と思い、木の上で寝ていた。そんな夜中の出来事だった。一人の若い女性を抱えた集団が森を通過しようとしていた。シルバードラゴンの首が浮き彫りにされた盾を装着した一団が《ドラーケンの歯》を目指して馬を走らせていた。主人公の真下で、余計な口を利いた兵士が殺されるのを主人公は目撃した。そして、夜が明けてから主人公は兵士の死体を改めた。金貨10枚分の宝石があるだけでもありがたかった。
 その日の夕方、ベックフォードの街についた主人公は、エスガロン伯爵令嬢であるアロウェン姫の誘拐の噂を聞いた。犯人は、かつてアロウェンに求婚を断られたドラーケンスフェルト男爵ではないかという噂が立った。しかも、ベックフォードの領主エスガロン伯爵はドラーケンスフェルト男爵の仕業と思い込み、7日以内にアロウェンを返さないことには戦をしかけるという布告まで行なった。
 今こそ主人公の出番が来た。アロウェン姫を7日以内に救出し、真犯人を突き止めるのだ。そうすれば、富と名声が一挙に手に入る。これまで見放されたと思っていたツキが漸く回ってきた。アロウェン姫を7日以内に救出すべく、主人公はベックフォードを拠点に冒険に出発する…。

 『魔王の地下要塞』は、ユニコーンシリーズの上巻です。主人公の冒険が今まさに始まったところです。
 主人公は、最初金貨10枚から出発します。ドラーケンの森で殺された兵士の持っていた宝石です。
 話を読み進めば分かりますが、最初は主人公はただの風来坊、異邦人として扱われます。司法官など当てにはなりません。
 今回の冒険は、同じところを何度でも行くことの出来る反面、時間制限もあることです。もしアロウェン姫を7日以内に救出できなかった場合はもはや手遅れ、宣告通りエスガロンはドラーケンスフェルトに喧嘩を売ります。121番を見ると分かりますが、その結果ベックフォードを破滅に追いやるわけです。そしてアロウェンは「戦争を引き起こした元兇」として手配されてしまいます。エスガロンのように、勝手な思い込み&勘違いをして勝手に手を出した方は破滅する―これは世の常なのかも知れませんね。魔力ポイントの回復はしたいし、といって1回眠るごとに一日経過してしまうし…。これをどう解決するかは、いかにして便利な――例えば魔力ポイントが自動的に回復するようなアイテムが手に入るかどうかにかかっています。
 迷宮の部分(ドラーケンの森、ザンダバーの洞窟)の項目の下には地図が描かれており、この部分を忠実に地図に描けば正確な地図が描けるのもこの作品の長所です。既に一度倒した敵や、手に入れたアイテムは二度目以降は無視出来るように、一旦敵を倒したらそのときの項目番号などを控えておくと良いでしょう。そういった項目は、二度目以降に通るときは「勝った」の項目に進むなどすればよいわけです。
 しかし、残念なところもあります。双方向型の悲しき習性かな、パラグラフの使い回しがうまくいっていないところです。読み進めると途中で「あれ?」と思うことがあると思います。「気を失った」が2回出てきたり、一日分しか経過していないのに日数の升目にバツを2回つけるよう指示されたりなど、ところどころ不具合が生じています。もう少し使い回しの利いた文面や構造にして欲しかったところです。
 とはいえ、始めのうちはこういった多少の不具合も多々あると思います。双方向型初期の作品としては、斬新なアイデアと言えるでしょう。
 余談ですが、私は369番のアロウェンを見て、腕に着けている装飾品と毛布を除いてはアロウェンはかと思いました!牢獄の扉を開けたときに「アロウェン姫が使っていた毛布を天井の穴につめ込む」という選択肢があることが、その考えを助長させたのです(本当にそうかも知れない…)。

 さて、上巻の『魔王の地下要塞』で手にいれた財宝を下巻の『ファイアーロードの砦』で使いたい……のですが、それは残念ながら叶いません。その理由は「エピローグ」を見ればわかると思います。詳しくは下巻の方にて…。


『ファイアーロードの砦』へ →

2006/11/20


直前のページに戻る

トップに戻る


(C)批判屋 管理人の許可なく本ホームページの内容を転載及び複写することを禁じます。