ファラオの呪い


 ここはアルコス市の中心部。主人公は隊商に追従し、ケムの国土に広がる砂漠をはるばる300kmも旅して、やっとの思いでこの街にたどり着いた。
 主人公のベルトについている小さな御影石の板――これこそがはるか昔この地を治めたカーフート大王の墓の場所を知る手がかりとなるものだ。カーフートと一緒に埋葬された莫大な財産を手に入れようとした者は後を絶たないが、生きて帰った者は未だいないと聞く。石板の一方の端がぎざぎざになっているところを見ると、これはもともと大きな石板の破片のようだ。この石板は、ガバッドという古美術商から主人公にこの石板の破片を譲ってくれた男へ、そして主人公へと渡ったらしい。その商人ガバッドがここアルコスに住んでいるという話を聞いて、この地へ来たのだ。
 早速主人公は『とぐろを巻いた毒蛇』という名の――呪われていると噂されている――居酒屋でガバッドの店を聞く。それによると、ガバッドの店は露天市のはずれにあるらしい。主人公は居酒屋を出て、ガバッドの店を探し始めた。と、そのとき、さっきまで『とぐろを巻いた毒蛇』にいた白マントの男が、街の門を大急ぎで駆けて行く姿が主人公の目に映ったような気がした……。

 GDFシリーズもついに最終巻を迎えました。題して『ファラオの呪い』です。オリバー・ジョンソン氏の著作で、訳者はマジカル・ゲーマー氏です。
 ファラオとは古代エジプトの王の意味、エジプトと言えばピラミッド。今回はピラミッドの探索です。暑い砂漠から涼しいピラミッド内という背景の移り変わりは、どことなく14巻の『恐怖の神殿』と共通するところがあるかもしれません。
 今回「アクタン」は、人名(古美術商ガバッドの弟子の名前)として出てきます。GDFシリーズによく出てくるアクタン。好きですねえ。
 冒頭に出てきた白マントの男は、お察しの通り伏線(冒険者の敵)です。カーフートの財宝を狙っている集団の一人で、つまりは主人公の「敵」です。
 最も標準かつ安全ピラミッドの行き方は商人ガバッドと一緒に行く方法ですが、それ以外にも2つあります。
 1つは、暗殺者に捕まって捕虜としてピラミッドに行く方法です。レオンという曲者に一服盛られて意識を失った場合、この方法となります。疑いようもなく、これは危険極まりない方法です。暗殺者が約束を守るとは思えません。最初の暗殺者の要求(石板のかけらを暗殺者に手渡すこと)通りにしては命取りです。また、当然のことながらスフィンクスに質問する機会も失います。
 もう1つは、老人と一緒に行く方法です。老人は主人公に瓶(かめ)を運んでくれるよう要求します。他に方法のない主人公はこれに従うしか選択がありません。この瓶ですが、一旦運び出したら最後まで運び続けなくてはならず、途中で放り出すと必ず瓶を割る結果となります。瓶の中にはボスという悪魔が入っており、ボスは瓶を割った主人公に腹を立て襲いかかります。ボスは、とても人間の力で敵う相手などではなく、その時点でデッドエンドとなります。この老人の正体については7番に書いてあります。
 上の2つと比べると、やはりストーリーの流れ通りガバッドと一緒に行く方法が一番です。うまく行けば、道中スフィンクスに色々なことを聞くことが出来ます。しかし、ガバッドと一緒に危険な敵に遭遇したとき自分だけ逃げようとすると「著者罰」が下ります。オアシスの怪物と遭遇したときに見捨てる(107番)と、前述した老人と一緒に行くことになり、危険度が高くなります。ジャガーと遭遇したときに見捨てた場合(196番)は死が待っています。自分だけ助かろうとする者への良い戒めです。107番、196番に行き着いた人は、日常生活での自分の行為を反省する必要があるでしょう。
 ピラミッド内の要所要所の関門は、FF29巻『真夜中の盗賊』を思い出します。道中「イポ」「ボス」という悪魔が実に曲者で、この二匹のうちどちらかを解決しないと先へ進めないことになっています。鏡の部屋の発想も、同じ項目を使いまわししており、なかなかのものです。
 最後の部屋で、石板を選ぶのは当然でしょう。石板さえ選べば、あとはどちらを選んでもよさそうですが、実は剣か笏かでも差がつきます。自分の愛用の剣を最後まで信じた人にはファラオの墓室への秘密の通路(最も安全な直通の通路)が待っています。
 巻末の付録もまた面白いコラムがあります。安田均氏の『ゲームブックの楽しみ方』と同じタイトルで田中克己氏が執筆しています。「ぼくなりに考えたゲームブックの選び方」が面白いです。ゲームブックが大量生産、大量消費、そして大量廃棄となった原因がここに書かれています。
 GDFシリーズのみならず、あらゆるゲームブックで成長させるというアイデアがすばらしいです。『GDFシリーズの共通ルール』<持ち物と宝>の項目は、田中氏のアイデアを参考にさせていただきました。
 二人で遊ぶ方法は、FF19巻のあとがきにも載っていますが、あのあとがきとは比べ物になりません。選択肢にない行動をプレイヤーがしたときに、処理が不自然にならないようにうまく話をつなげるのがゲームマスターの腕の見せ所です。

 以上、全6巻が終了しましたが、こうしてみると6巻の著者はモーリスとジョンソン(4巻のみイヴも)の二人が中心です。FFシリーズのルールを用いた和風作品は数あるようですが、GDFシリーズを用いた和風作品はないようです。ゲームブック復刊の際、新作として出してみるのも手だと思います。

2006/08/27


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