ウルフヘッドの逆襲


 ジュジュの森においてサングールの王女スミアと出会い、スミアの故国サングールの人々を元に戻すために膏血城へ乗り込むことになった主人公ウルフヘッドは、スミアたちと魔王グリーディガッドの眷属が大半を占めるエムル村の夜祭りに参加した。その夜祭りで、ガーゴイルに似た魔物がスミアを連れ去ってしまった。ウルフヘッド一行は急いでデビルバードを呼び、膏血城へと向かった。
 そのとき、サングールを壊滅状態に陥らせた恐るべき魔物アイボールがこちらへ向かってきた。主人公たちはどうにか膏血城に潜り込む事には成功したものの、早速危険な目に遭遇することになった。今夜は長い一夜になることだろう…。

 『ウルフヘッドの逆襲』は、林友彦氏の『ウルフヘッドシリーズ』の下巻です。
 『ウルフヘッドの誕生』初版の巻末にある書籍目録には『魔獣城のウルフヘッド』というタイトルで本作品が紹介されていますが、これは本作品を刊行する前の仮題で、後に『ウルフヘッドの逆襲』という名前に変更になったと思われます。ちなみに「魔獣城」という言葉は、上巻366番に出てくるチビゴブリンのメガスが言っており、これは膏血城のことを指しています。そして、予想通り(?)スミアがさらわれた状態でのスタートとなります。
 下巻が501番からのスタートと上巻にありましたが、当初なぜなのかわかりませんでした。しかし、下巻『ウルフヘッドの逆襲』を購入したとき、その謎が解けました。上巻は1番〜500番で下巻は501番〜1000番ということです。上巻と下巻は完全に独立していますので、下巻だけでも楽しめます。しかし、下巻からでは不利になりますので(特にアイボールの場面、これについては後述)、やはり上巻からプレイした方がよいでしょう。

 膏血城へ乗り込んだウルフヘッド一行は、早速生死を分かつ選択を迫られます。アイボールの金色の視線を浴びたら石にされるからです。
 膏血城に乗り込んで間もなく、ウルフヘッド一行は、しゃべる虻―その正体はブーカのギャラハッド―に出会います。ギャラハッドはウルフヘッド一行に対し色々な助言をしてくれます。その他にも、双子のゴブリン兄弟ディーとダム、人懐っこい怪獣のウータンなどの味方のキャラがいます。逆に、敵キャラも強敵揃いです。アイボールの他にも枯葉色の老婆や双頭の大男、タングラムの三姉妹、傲慢な緑服の若者、ウルフヘッドそっくりのラターキン、ダイヤペーソン、そして最終ボスのグリーディガッドと、頭を使う場面や工夫して戦う場面が満載です。しかし、一番の強敵はスミアでしょう。スミアはこちらを殺すつもりで襲い掛かってきますが、こちらはスミアを殺すわけにはいきません。このジレンマをどう解決するかがポイントです。
 この作品での前半・後半を分かつならば、疑いようもなくアイボールを倒す前と倒す後です。というのも、アイボールを倒す前と倒す後では膏血城の地上部分の状況がまるで違うからです。下巻からのスタートにジャレスが加わっている理由は、ジャレスはアイボール討伐に必要不可欠な存在だからです。アイボールの視線が消えたほんの一瞬のチャンスを逃すと、それ以上は進まなくなり、いわゆる“ツマリ”の状態に陥ります。上巻からプレイしていて縮身の魔法を会得している場合に限り“ツマリ”を回避することができます(イリュージョンの矢の魔法は、上巻をクリアしたならば必ず知っている魔法です)。アイボールは強敵だけに、アイボールを倒した場合のボーナスも欲しかったところです。例えば、『ニフルハイムのユリ』で花の城主アクロスを倒してエスメレーを救出したときのように、アイボールを倒した後これまで石化したウルフヘッド分の体力ポイントを増やす(初期値を超えた場合は、その値を新たに初期値と定める)ボーナスを取り入れるとよかったと思います。
 下巻には、上巻に出てくるものの、上巻では使う機会のなかった魔法を使うことになります。ちびゴブリンのメガスが上巻262番で唱えた呪文がポイントです。巻末の謎解きに詳しく載っていない部分や、その他の色々な改善点は、研究室に掲載します(またいつもの口癖…)。
 クリアするとわかることですが、下巻は実は一夜限りの出来事です。…ところで、時間が過ぎて朝になったらウルフヘッド達はどうなるのでしょうか。ヘルドア湿原の泥濘に沈んでのスミア救出劇となるかもしれません。
 上下巻に渡るウルフヘッドシリーズでしたが、なかなかプレイしがいのある作品だったと思います。尤も、最後のグリ−ディガッドの祭壇の謎は難しすぎて解けないというのもありますが。それにしても、米田仁士氏の幻想的な挿し絵は見事というより他はありません。私が個人的に気に入っている挿し絵は、上巻215番、下巻518番、808番、1000番です。米田仁士氏の幻想的な絵の中でも個人的に特に気に入っています。

 ブーカのギャラハッドが膏血城で探していた伝説の魔剣カレードウルフは『ネバーランドシリーズ』にも出てきました。このカレードウルフは、次の林作品である『ネバーランドのカボチャ男』にも登場します。カレードウルフは、もはや林作品における最強の武器の代名詞なのかも知れません。

← 『ウルフヘッドの誕生』へ |


2008/07/19


直前のページに戻る

トップに戻る


(C)批判屋 管理人の許可なく本ホームページの内容を転載及び複写することを禁じます。